第2話 プロローグ2


「「呪いですか?」」


少女と神父はラーセン司祭に問い掛ける。


「うむっ、呪いじゃ。 それも人族には扱えない程に強力で厄介な呪いじゃな・・・」


ラーセン司祭は神父、少女、妹の顔を見ながら話しを続ける。


「上級の鑑定でしか確認が出来ない様な呪術、呪いは人族には無理じゃ、扱えん。 一体何に呪われておるのか・・・」


「ラーセン司祭様、解呪は出来るのでしょうか? 人族には無理でもエルフ族であるラーセン司祭様でしたら解呪は可能でしょうか? お金でしたらいくら掛かっても構いません。 どうかマルコを救って下さい。」


少女と妹は両膝を付き祈りの形でラーセン司祭を見つめた。

ラーセン司祭は無言で頭振り


「申し訳ない。人族の中にはエルフ族も入っておる・・・ 解呪は無理じゃ・・・ 教会の大司教にも無理じゃろう・・・」


ラーセン司祭の言葉に崩れ落ちる少女。 震えながら涙を流す妹。 そっと目を閉じ神に祈る神父。


「もう、このまま・・・ マルコはこのまま衰弱して死を待つだけでしょか?・・・」


力無く掠れる様な声で少女は誰にとも無く呟いた。


神父もラーセン司祭もそのまま無言で姉妹の啜り泣く声が永遠に続くと思えるくらいの時が過ぎた時に


「この話しはなっ、わしが旅の途中で耳にしただけの話しなのじゃが・・・」


ラーセン司祭がボソッと少女に向かって話しかける。


「数十年前の他の大陸での話しを聞いたのじゃが・・・」


少女はラーセン司祭の顔を凝視する。


「わしはエルフ族じゃ。 人族と違い長い寿命が有る。 その話しも数十年前に他の大陸での出来事を聞いただけなので嘘か真かは計りかねるが・・・」


少女の目に力が戻ってきた。


「ある大陸で魔人の呪いを受けた少女がおったと。 その少女の恋人がその大陸の女神様の祝福の聖水に仲間達とダンジョンで月下草を採取し、煎じて光輝く女神様の聖水を作って呪われた少女に飲ませたそうな。 その少女は解呪され聖女になり仲間と恋人でその呪いを振り撒いた魔人を滅ぼしたそうじゃ。」


「女神様の祝福の聖水と月下草・・・」


少女はラーセン司祭の言葉を復唱した。


「元々その少女は聖女の資質を持っていて、それが魔人の目に留まり呪いを受けた様な事じゃった。 先ほどの鑑定でもマルコ君の資質がボヤケていたのでもしかしてと思っての。」


少女は先ほどよりも目に力が戻って来てラーセン司祭に問い掛けた。


「ラーセン司祭様、女神様の祝福の聖水と月下草を煎じて光輝く女神様の聖水をマルコに飲ませれば・・・ 解呪されてマルコは元に戻るのですね!」


ラーセンは首を横に振って少女に語りかけた。


「これはあくまでもわしが旅の途中で耳にしただけの話しじゃ。 わしがその聖女に会った事も無ければ女神様の聖水を作った事も無い。 もちろん数十年前の話しじゃからの、その当時の者は誰も存命はしておらんじゃろう・・・ このまま手をこまねいてマルコ君の衰弱死を待つくらいならと思って話しただけじゃ。」


「でも・・・ 可能性は有るのですよね?」


「厄災の魔人の呪いならそうじゃが・・・」


「問題はじゃな~ 月下草はダンジョンにしか生えておらん。 そして月下草の採取は非常に難しいと聞いておる。」


「ダンジョンで採取出来るのでしたらギルドで情報を集めて採取して来ます。」


力の戻った目をした少女は一縷の希望を見出だした。


「待て待て。 最も問題は 女神様の祝福の聖水 じゃ」


ラーセン司祭は苦虫を噛み潰した様な顔をしながら少女に伝えた。


「女神様の祝福の聖水は女神様の使徒になり神託を受けなければ祝福の聖水は手に入らん。 我が教会も女神様の神託は受けられるが女神様の祝福の聖水はいただいた事は無い。 それにじゃ、女神様の使徒は300年前の魔人戦争の折りに誕生して以来確認出来ておらん。 仮にマルコの呪いが厄災の魔人の物で有れば或は、位の話しじゃ・・・」


「ラーセン司祭様、女神様の祝福の聖水はどの様にしていただけば良いのでしょうか?」


ラーセン司祭はしばらく黙り込み考えていた。


「うむっ・・・ 神託と同じくひたすら女神様に祈り続けるしか無いじゃろうな・・・」


「マルコ君の呪いが厄災の魔人の物でマルコ君が何かしらの資質を持ち厄災の魔人を排除する使命を帯びておるなら可能かも知れんが・・・」


「ラーセン司祭様、マルコの呪いは人族では不可能なのですよね? エルフ族でも大司教様でも解呪は無理な呪いなのですよね?  唯一考えられるのがマルコの資質が厄災の魔人の目に留まり呪いを掛けられて居ると・・・」 


ラーセン司祭は黙って少女の目を見つめている。


「分かりました。ラーセン司祭様。 神父様、神託が降りるまで女神ミヤ様に祈らせて下さい。」


神父は話しのスピード、展開に着いていけずにひたすら首をコクコク上下に動かすだけであった。


微かに見えた希望に少女と妹はラーセン司祭に感謝をしてマルコを背負い教会を後にした。


少女はマルコを家に寝かせ妹に後を頼み冒険者ギルドに向かい月下草の情報収集を始めた。


「月下草ですか? 余りコレと言った情報はございませんが・・ それでもよろしいですか?」


冒険者ギルドの受付に尋ね情報料を払い月下草の情報を買い取った。

月下草は特定のダンジョンでは収穫出来ず又、月が真上に来る時間、数分間にしか生えて来ないとの事。浅い回層の時も有れば深い回層の時も有る。

ダンジョンに泊まり込みでアタックしているパーティーがたまたま珍しいので採取した程度の情報しか無かった。


完全ランダム、時間制限も問題だが1番の問題は月下草採取後は速やかに瓶に詰めアイテムボックス、空間魔法下で保存しないと直ぐに枯れてしまうそうだ。


「うん。 アイテムボックスは小さいけどアイテムバックが有る。 情報の大きさなら普通の瓶に詰められる。 時間は月が真上に来る時間だとして・・・ 場所と回層か~・・・」


少女は無意識に口を開いて誰と会話するでも無く呟いていた。


一応キルドには月下草採取、買い取りの依頼は出しておいたが恐らく無理であろう。


少女は決意を胸に教会へ向かうのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る