第6話(1)トラウマ

今の俺のこころにある感情は3つ。1つ目は恐怖。この女への恐怖。そして、2つ目は憎悪。この女への憎悪。そして3つ目は疑問。なぜこの女はここに来たのか。それが知りたかった。


「ん?難しい顔しなくていいって。気楽にお話しようよ。」


そんなことを言いながら彼女は近づいてくる。


「やめろ、来るな。」

「ん?なんか言った?聞こえないなぁ。もっと近くに行かなきゃ。」

「や、やめろ。やめろクソ女!」

「ん?なんて言った?」

「来るなって言ってんだよ!クソ女!」

「誰がクソ女だ、このクズの息子!」

「っ!」


そして彼女は余裕の笑みを浮かべて一言。


「いいの?私、あなたのお父さんの写真とか音声とかいっぱい持ってるんだよ?」

「クソ野郎め・・・」

「もしかしたら、あんたの音声なんかも持ってたりして、」

「黙れ!」

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」


俺は語彙力のなさなんて感じる暇もなく、ただただ思いついた言葉を機械のように吐き出す。

しかし、その女はこう言った。


「なんかさ、つまんないよね。」

「え?」

「私に向かって忠誠を誓ってよ。」

「は?」

「色々ばらまかれたくなかったら私のために全てを捧げなさいよ。」

「えっ・・・お前マジで言ってんの?」

「まだそんなこと言える口があるって言うの!!」


彼女の顔は怒りに満ちていて、しかしどことなく恐怖も感じられて。


そんな時だった。


「大丈夫か、成士!!」

「成士君!?大丈夫??」


俺の友達と彼女が来てくれたのは。

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