第4話(2)俺とお前、どっちが俺のことを好きか
朝礼が始まるとすぐにその子は教室へ入ってきた。その、黒髪ロングで清楚そうな美少女。周りの男たちはみんな鼻の下を伸ばす。ましてや、女までも顔を赤くして彼女を見つめる。一瞬、彼女と目が合った。
ん?俺、今、微笑みかけられたような・・・
俺の名字は赤羽なので出席番号1番。左前の席。だが、ここまで彼女のいいにおいは漂ってくる。そして彼女は口を開けてこう言った。
「はじめまして。近くの高校から転校してきました。私の名前は、八舞照美と言います。これからどうぞ仲良くしてくださいね。」
・・・は?
一瞬頭が固まった。俺が昨日あった少女は眼鏡をかけていて、っていうかそもそも前髪で目なんて見えなかったし。それがなんだこれ!?人が変わりすぎだろ!!整形でもしたんじゃねぇか?
と、考えてるうちに彼女はこう言った。
「わたし・・・赤羽君。いや、成士君の彼女!将来結婚を約束された仲なんです!」
クラス全員が固まる。それは、俺への嫉妬はもちろん、彼女へのヘイトも含まれる。周りがざわつき始める。そんな中、先生が強制的に朝礼を終わらせ、授業が始まった。俺の座席に男子を突進させまいと朝礼の時間を授業ギリギリまで伸ばしてくれてありがとう先生!感動したよ。
そして、俺はずっと休み時間は走ってトイレにこもり、昼休みになった。いつもの通り屋上へ行き、告白を断ろうとすると、そこにはその女の子は居ず。八舞照美、彼女だけが笑顔で立っていた。
俺は付き添いの謙と八舞の3人で昼飯を食べた。そして、別れ際に
「告白の返事・・・だけどさ。」
「はい」
彼女はさっきまでと変わらない態度で微笑みかけてくる。
「彼女には・・・できない。」
その時の彼女の顔は絶望、憎悪、まさにこの世の終わりのような顔だった。
「でも、」
俺はそんなことを気にせず続ける。
「俺は他人を、お前をまだ信用出来ないんだ。だから、これから少しずつお前を見せてくれよ。お前となら、もしかしたら上手くやって行けるかもしれない。」
「えっ?」
「いきなり彼女なんて他の奴らが何言い出すか分かんないし、何より俺には彼女なんてまだ無理だ。」
「・・・」
謙は沈黙していた。俺の過去を知ってるから。
「そう・・・ですか。」
「あぁ。」
「いい、ですよ?」
「えっ?」
「私は、成士君のキープでいいですよ!」
キ、キープ!?なんてこと言いやがるんだこいつ!?
その後俺たちは授業に完全に遅刻し、3人で先生に怒られた。でも、その時の彼女は楽しそうだったし、謙も八舞さんに満更でもなさそうだから別にいいか。
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「彼女にはできない。」
今思うと、そう言った時の照美の顔は絶望に溢れていたが、泣いてはなかった。むしろその時も口元は笑っていた・・・
「あーあ。俺の馬鹿め。もっと早くに気づいとけば・・・」
俺は、胸に走る痛みを感じながら今更そんなことを考えていた。
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