第3話(1)告白

「・・・もしもし?」

「せ、成士様!?どうされたんですか!?」


そう言って出てきたのは「赤羽成士ファンクラブ」らしいものの会長であるとある女。僕自身も彼女の名前は知らず、というか誰も会長の名前を知らないらしい。空白の会長と言うことでみんなからは仮名としてソラと呼ばれている。


「ソラ、少し頼みがある。」

「どうされました?全員総動員させてすぐに解決致しますよ!」

「いや、そこまででも無いんだが・・・」


そう言って俺は事の顛末を話した。すると、


「なるほど・・・嫌がらせですか。普通に嫌がらせではなく、ファンのちょっとした好意かもしれませんよ?」


そんなことは初めからわかっている。でも、


「正直に言うと、怖いんだよ。この後何かあるんじゃないか、これは何かのフラグなんじゃないかって。」


そういうと、自分の手が震えていることに気づく。さすがにソラも何となく察したようで


「そういうことならお任せあれ!私たち赤羽成士ファンクラブがいとも容易く解決してご覧に入れましょう!!」

「あぁ、頼んだ。」


こいつらは普段は特に何もしてこない、僕の自由を尊重してくれるいい奴らだ。基本的に僕に暴力沙汰のことがあると、謙がやっつけてその後をファンクラブが片付けてるらしい。高校生とは思えないブラックさだ。なんてことを寝る前に考えてる僕は末期なんだろうなぁ。ってことを考えてる僕も末期なんだろうなぁ。あれ?無限ループって怖くね。


何はともあれ翌日には嫌がらせは無くなっていたが、監視の目が着くようになり、それも嫌だったので校内でのみ監視という風になった。


「さてと・・・」


俺は家について今日も走りに行く。今日は嫌がらせが怖いから逆方向に走るつもりだ。いつもの国道に行くのとは違い、大きな公園の中をぐるっと1周し、学校のそばを通りすぎて家に帰るという感じだ。部活後の謙と合流して帰るのだ。


公園を抜け、学校へ向かう途中。腹が減った。何を食べようか。いや、栄養バランスが崩れるからやめておくか?脳裏に冷えひえのアイスという選択肢が通り過ぎる中、見たことの無い制服の少女が僕の目の前に立った。

そこは、ちょうど学校の裏門の前で、夕日に染まりかけていた空と彼女が俺を見つめる。

はて、誰だ?

俺は彼女の名前を探るのに必死で、時間になっても謙の姿が見えないことなんて忘れていた。


そして彼女はこう言った。


「赤羽成士君。私と付き合ってください。」


と。

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