第5話 解 説2 ~異界人の末路~
老兵はにたりと笑い、庄野の方を見つめる。
何かを喜んでいる笑いとは言えない。
ただただ、笑いながら庄野を見るその顔は不気味だった。
不気味な表情のまま、その老人は口を開く。
「・・・知ってたのかね?」
「今知りました。確証は無かったのですが・・・何となく、予想はつきました。」
「ほぉ・・・予想ねぇ。いつから疑問に思ったんだね?」
「サリアンを離れて、ここに足を踏み入れてからです。異界人がここに住んでてその文化が残っているのは分かるんですが、あまりにも残りすぎなんです。そこに疑問を持ちました。」
「それでどうして『出ていく』って発想になるんかねぇ?」
「サリアン王の城下町には俺の故郷にあるような文化物はありませんでした。でも、ここには俺の故郷のものがあり過ぎなんです。
つまり、異界人はサリアンの城下町ではなく、ここに多くの異界人が来た事が考えられます。
そして、サリアン王とお会いして異界人の処遇を決める時、何かルールに乗っ取って決めているように感じました。つまり、ルールで振り分け出来るほど異界人は定期的にここに辿り着いている。」
老人はウンウンと頷いている。
「なるほどねぇ、それで?」
「定期的に異界人が来訪しているのに、今はここに異界人はいない。そう考えると亡くなったからか、出ていったからの二択しか無いんです。
仮に、皆が亡くなったのなら・・・ここには俺の故郷にあった死者を祀る墓石があるはずなんです。でも、そういった物は無かった。
・・・だから、確認したかったんです。」
老兵は庄野の話を聞聞き終わると、下を向きながら部屋にある椅子に座った。
「で、ワシがばらしたわけだねぇ。
・・・断片的な情報だけで、ここまで辿り着くかね。
異界人に対する使い魔による差別。それはこの国、この世界最大の問題だねぇ。
異界人だって、この世界に来たくて来た訳じゃないよね。でも、勝手によくわからないでついてきた使い魔で評価されるわけだからね。
ワシらがいるここ、西の都はそういう差別を受けた異界人が流れつき、居場所を失う場所だね。
彼らは自由を求め、力を求め、居場所を求め、母国を求め、元の世界への帰り方を求め・・・。
悲しい話だねぇ。
異界人といえば、昔はこの世界を救ってくれた英雄だったね。
・・・かつて、この世界を救った英雄達を今は排除しているってのも、なかなかに皮肉だね。」
(異界人に対しての振り分け方法が使い魔の数や魔力量だけで判断する制度。
それによって、かつての英雄が一変して冷遇され排除される。
まるで・・・。
まぁ、俺には関係の無い話だ。)
老兵は大きなため息を吐くとゆっくりと立って部屋のドアに手をかけた。
「はぁ・・・。
それもこれも、今のサリアン王が悪いんだけどね。
えっと、庄野さんだったよね?
改めて、これからよろしくね。 あぁ、ワシの名は『アルフ』だね。アルフとか、アルフおじさんとか呼んでるけど好きにしていいからね。」
「ありがとうございました。アルフさん。」
入った時と同じようににたりと笑い、アルフと名乗る老人は部屋を出ていった。
(不思議な爺さんだ。これからの事はあの人に色々と教えて貰おう。
さて・・・、まずは、コイツらをどうするか。)
部屋に入ってから、コピードール達は部屋のベッドの上でゴロゴロと転がっている。
「おい、お前らは床で寝るんだ。」
「キュゥッ!」
一匹のコピードールが猛反発をする。
怒りを表しているのか、ベッドの枕を噛って離さない。
「・・・わかった。ベッドはお前らにくれてやる。俺は床で寝るよ。」
「キュッ!」
今度は別のコピードール二匹共が庄野の半長靴に齧り付いてくる。
「おいぃ!!
それは食べ物じゃ・・・。
ベッドに来いってことか?」
(言葉がわからないから、意思疎通が上手くできないと思っていたが、多少の人間らしさはあるようだ。
コピードールに根負けし、庄野は3匹の使い魔と一緒にベッドで横になる。
(・・・3匹とも、急にご機嫌になって寝ちまった。
これが良かったのか。
・・・正直、不安だな。俺も先人達と同じようにここを出ていきたくなるんだろうか。
力不足は理解してるつもりだ。だが、その不足を補う方法はわかっていない。補う方法がわかっていない、解決方法を分かっていないなら、力不足の理由を理解していないぞ!と部隊で言われそうだな・・・。
・・・気にしてもしょうがない。おひめさんにもゆっくりやってこうって言われたことだし、焦らずに戦力化を図るか。
尚、士気については旺盛でありますってね。)
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