序章
滅びのはじまり
王は一人ほくそ笑んだ。
このやり方なら、あの憎き隣国を打倒できる。国民には少し多めに犠牲を払ってもらうが、その後の見返りを考えれば安いものだろう。問題は馬鹿な国民が反発して余計なことをしないかだ。その辺は優秀な警察官に任せておけばいい。
私はこの大陸を統べる大王になるのだ――。
「大変です、国王様!」
一人の男が王の間に飛び込んできた。王は気分を削がれたことに内心苛立ちを覚えながらも、表に出さずに、どうしたと尋ねた。
「王宮の侵入者です! 明日の食事会の会場を襲撃しています。兵士と召使いがみんな殺されてしまいました……!」
「なに?」
王は怒りに声を震わせた。こんなときに、邪魔が入ったのか!
「見張りはどうした!? 兵士たちは何をやっている!?」
「正面の見張りはすでに事切れておりました。兵は命をかけて対応しておりますが、侵入者が……その」
「早く言え!!」
「……あの忌まわしい子です」
王は息を飲んだ。
「……なぜ……あいつが……! 殺せ! 殺しても構わぬ! あの出来損ない相手に迷う必要など無い!」
「承知しました! 陛下も早くお逃げください」
「わかっておる!」
兵士は王の間を駆け足で出ていった。その姿を見送ると、王はダン、と壁を殴り付けた。
「アイツめ……アイツめ……! もっと早くに殺しておけば……!」
歯ぎしりをする王の口から、唸り声が漏れる。血走った目をぎらつかせて、王は心の奥で暗い誓いを立てた。
次にアイツの顔を見たときは、この私の手で、その首をかき切ってやる――と。
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