第6話 ウイルス

「あー。えっとまぁ、ココがほぼインターネットの中だってことはわかった」


 コーヒーを口に流し込みながら、同時に頭に流し込まれた情報を整理しながら話を進めていく。


「じゃあ次だ。さっきのバケモンについて聞こうか。ありゃなんだ?」


「まぁ当然の疑問だね」


 おじさんはおじさんで、こっちの理解が追いつくのをコーヒーを飲みながら待っているように見えた。


「その質問に対する答えは、ここがインターネットの中であるということを踏まえて考えると、答えが出ると思うよ」


「ん? どういうことだ?」


「インターネットの中で破壊活動を行うモンスターと言えば、君の時代でも当てはまるものに心当たりあるんじゃないかな?」


「俺の時代でも?」


 頭の中に『インターネット』『破壊』『モンスター』の文字が羅列していく。


「‥‥‥‥‥‥ウイルス?」


「そう。あれは、インターネットの世界が現実に出現したことにより、同時に産み出されてしまったモンスターなのさ」


「そうか、あれは現実世界に出現したコンピュータウイルス‥‥‥」


 脳裏に浮かぶ先程の黒肉団子の姿。

 コンピュータウイルスってあんなビジュアルだったのか‥‥‥。


 ウイルスバスターとかで画面に表示される『危険なウイルスをブロックしました』みたいな文字でしかみたことなかったけど、まさか、あんな気色悪いのが俺のパソコンの中を出入りしていたとは‥‥‥。


 想像するだけでキモいな‥‥‥。キモ男にストーカーされる女の子の気持ちがわかった気がする。これは恐怖だわ‥‥‥。


 なんだか口の中のコーヒーの苦味が強まった気がした。


「そうなると、次に気になるのはそのウイルスをぶった斬った武器のことだよな」


「あぁ。これのことだね」


 そう言いながらおじさんは、スマホを操作するように、空中のビジョンを開き、なにやら操作を行って、先程のグリップを手元に出現させた。


「おぉっ、え、今どっから出てきたんだそれ」


「この時代では、ほとんどの物質がこうやって指先一つで取り出せるんだよ。


 必要な物質を構成するアルゴリズムをショップで購入して、それを事前に入力しておけば、いつでもどこでもこうして3Dプリント出力が出来るんだ。

 まぁ、ゲームでアイテムを出す時みたいなものだよ。何となくわかるよね?」


「んまぁわかるけど………」


 ゲームでアイテムを出現させるイメージはアニメとかでもよくある、あの感じだろうなぁと想像はつく。


 想像はつくけれど、それを実際に目の前で行われると、話はまた変わってくるんだが……。


 まぁ、この時代の技術にいちいちケチをつけてたら、話が進まねえし、自分がどう思うと今の世界はこういうもんなんだもんな。


 ということで、俺はそれを踏まえた上で気になったことを質問する。


「でもよ、誰にでも買うことが出来て、誰にでも使えるって危なくねえか?

 あんな凄い武器、悪用するやつもいるだろ。未来の日本に銃刀法違反はねえのか?」


「あぁ、その点については心配ないよ」


 おじさんはその手に持つグリップを操作して光の刃を出現させた。


「このプラズマソードは、一般市民、個人での所有が認められていてね。その理由が……」



 そして次の瞬間、振り抜かれた光の刃が、俺の首元を一閃した。


「え……?」


「こういうことだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る