第50話 目処
――むにむに。ぽよぽよ。
指先で感じる胸の感触。
指いっぱいに幸せが流れてくるかのような触り心地だが、その圧力にも舌を巻く。
「ねぇ、先輩。先輩の胸ってこんなにありましたっけ?」
おっかしいなぁ、と思いながら触る。何度か先輩の胸で溺れた事があるが、こんなにもあったっけ?
「んん、大っきいでしょ~。増えたんだよ、沢山」
「へーそうですか。にしても羨ましいな、私もこれ位欲しいな」
「ふふ、増やす?」
「いや、やめときますよ。こんなに胸があっても身長とかスタイルとかの自信がないんで」
胸から手を離してテーブルに置こうとするが、手が握られる。
ふにっ、と今度は柔らかいのが手に当たる。
ハリィが私の手を握り、頬に擦り寄せてる。
「、、、、どう?」
いや、なんと返そうか。
「そうだな、もう一回言おうか。私は、同性愛者じゃな――――――い!!!!」
◆
――街にいる。
決っして、ギルドでの居心地が悪いとか、そんなのでは断じてない。泣いてないし。
これも偏にに需要を探す為の調査にすぎない。
そうだよ。そもそもが冒険者のみを対象にするのが間違ってたんだ。
もっと別の職業、その職業で欲しい物を現代知識で提供すればいいのさ。
「で、僕はなんで連れてかれてるのかなぁ?」
引き攣った笑顔でキドは問う。
「え?いや、私達ここの出身じゃないから少しお前の力を借りようと――」
「目的は何なのさ、力を借りるよりも先にそっちを教えてよ」
「ヤ・ダ」
一瞬答えようかと迷ったが、却下する。
もしも、キドが私が需要を探してる等とドクにでも漏らしてみようか。
絶対になんかするだろう。あのオーク野郎だぞ。
「どうせお前今日は暇なんだろ?ならついて来いや」
「えぇ、そんな無茶なぁ~。僕昨日君を助けたのに~?」
「それはそれ、これはこれだ。ほら、教えろよ。この村で大人気な店とかあるか?」
人気な店とかあれば村全体の趣味の傾向が分かるからな。
「人気な店?それはどう受け取ればいいのかな?」
「楽しみにして生きる理由だよ。お前は小さい頃この村で何を楽しみにしてた?」
自分でも無茶なフリだとは分かるが、そうとでしか言いようがないだろ。
だが、「あぁ、じゃああの店でいいかな?」
コイツは検討をつけた。流石地元出身だ。
◆
「しかし、こういうのってなんていったけなぁ?集合的無意識だっけかなぁ?いや、でも少し違うか?でも、凄いな。異世界でもこういうのは一緒か」
「スー◯ーカップが食べたいなぁ~」
「いや〜朝からデザートとは、あっしながら贅沢っすね。でも、お金どうしましょうか?」
「、、、、おいし」
キドに案内された所、なんて事はないただのアイスショップだ。
ギルドでも提供されたアイス。魔法が使える世界が故に大企業の看板商品等ではなく、個人事業が提供出来るお菓子となる。
でもそんなのはどうでもよく、よくも文化が違うのにアイスが好まれる事に驚きだ。それを言えば何故世界が中世ヨーロッパ風になるのもおかしなものだが、こういうのを見ると改めて不思議と実感する。
「いや〜、おいしいね。アレ?ソラくんとべフェルトくんは食べないの?」
「、、、、おいしいよ、お姉ちゃん」
アイスを眺めてると声が掛かる。
嫌いではないのだ。アイスは汚い笑い声が出る程私達は好きなのだが、実を言うとこの前ギルドで食べたのがそんなにおいしくなかったのだ。
おいしいもだけども、日本のアイスを食べればちょっとね。あぁ、バ◯ラモナカジ◯ンボ食べたい。
「ホラ、食べて、みて」
ハリィが自分のをサクッと掬い、私に食べてと差し出す。
「ハリィが言うならね。それじゃ」
「どうぞ、お姉ちゃん」
大した期待をせずに食べたが、アラおいしい。
「ん~~意外とおいしいね、空ちゃん。ギルドと全然違うよ」
「本当、そうですねカナリエさん。おいしいです」
バクバクと先輩は子供っぽく食べ、セレナさんはチョビチョビと大人っぽく食べておいしいと言う。
そんな二人を見てる私にハリィがもう一口。
「はい、お姉ちゃん」
「ありがとうハリィ」
優しく甘さが広がり、乳が溶ける。
私の語彙の問題で複雑な事は言えないが、単純においしいと思える味だった。
「おいしいですね、先輩」
「でしょ、この街の皆んなは1日の終わりとかでこれを食べるのを楽しみにしてるの」
「お前には聞いてねぇ」
けど、その情報はおいしい。
だとしたら、このアイスを超えれば稼げるか?いや、可能であれば食品類は避けたい。そもそも、アイス作りのノウハウってそんなにあるかなぁ?
「うん。おかわり!私チョコ貰って来るよ~」
「あっ、待って先輩!もうお金が、、、、」
「うーん、チョコ味なかったよ~」
フッ、流石先輩。全く後先考えてない――ん?チョコ味がない?
「よし、一つ目処はたった。だが、これはそんなにしたくないな」
「え?何の事?」
「お前は、、、、そうだな。なぁ、他にないか?今度は品薄な物で」
自分のアイスを一掬いして聞く。
「品薄な物?やっぱり薬品類かなぁ?ギルドの荷車頼りだけだし。一応他にもここで作ってるのはあるにはあるけど、腹痛とか二日酔い位の地味な効果かな?」
そうかそうか、あの二日酔いの薬は相当効いたぞ。
「まぁ、回復魔法が使える人がいれば薬自体もそんなに悩む事はないんだけどね」
「そういえば、教会にいた人達は一応出来るようだけど、そう言うからには他にはいないの?」
「っん、それあっしも気になります。この村修道者上がりの冒険者とかいなさ過ぎませんか?」
私達二人の疑問に、キドはしまったという表情を浮かべて口を噤む。
「そうだね、薬以外も医療用品とかも欲しかったりするかなぁ?手術用具は。ホラ、冒険者とかここは多いじゃん。田舎の皆んなが稼ぎ口の為に集まってさ。それで怪我する人とか手術するけど、どうもそういう道具は高いし、頻繁に取り替えないとね」
わざとらしく公言を避けてキドは言う。
「医療用品か、利権が絡んだりして確かに生産量を限ったりするな」
「うえぇ、何その発想。え?わざと少なくするの?人が救えるのに?」
「ソラさん。あっしはソラさんがズルかったりするのは知ってましたが、まさかそこまでエグい事を考えるとは思いませんでしたよ」
なぁ、この医療品利権って未だ都市伝説的な話しだぞ。十中八九事実だけど、それマジにしないでくれよ、、、、
「というか――“頻繁に取り替える”のか!」
利権はいい、儲け理由になるから。それよりも大事なのはソコだ。
「当たり前じゃん。使い続けると変な病気に罹るじゃん」
「汚い物は良くない。常識ですよソラさん」
以前にもセレナさんに傷を洗われたが、器具まで取り替えようとするとは。
バイ菌の概念がないせいで随分と勿体ない事をするが、地球の中世とは段違いだ。
「それで、他には何かあるか?」
医療用品は後で調べるとして、他に何かないか聞く。
「うーん。あとはよくは分からないな。僕だってこの村のなんでもを知ってる訳じゃないし」
「お前ん家とかは何をやってたか?」
「僕?僕の家は果物屋だね。品薄な物は、、、、特にないね。自然に任せた商売だから、時期とかで獲れなくなったのは品薄とかじゃないと思うし」
他に何があるだろうとキドは顎を撫でて悩む。ぶっちゃけ私も地元で品薄な物と聞かれても返せる自信はないしね。
「まぁ、いいさ」
食べ終わったアイスの容器を返しに向かいながら微笑む。
医療用器具が品薄なのはもしかしたら利権以外の問題かもしれないが、なら単純にして使い所が多い医療用器具を探して作ろう。
別に複雑な手術をする訳でもない。純粋に地球人二千年が生み出した最高効率の物を作ろう。
「あぁ――楽しいな。ワクワクするぞ」
微かに口内に残る甘さを噛み締めて私は零した。
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