第26話 拒否
私がハリィと呼んだ少女は非常に幼く、年は10歳前後かと思う程だった。
左右の色の違う瞳はとてもキレイな紫と白色をしてるが、片方の目にはタトゥーとでも呼べばいいのか、謎の黒い模様が顎から額にかけてある。
髪型はちょっとだけ長めのショートカットで、服装として上はワイシャツと上着としてパーカーの様な記事の薄い服を着てる。下は動きやすそうなショートパンツ。
「なんでハリィの名前知ってるの?」
不審者を見るかの様な目で私の挨拶にハリィは返す。まぁ、そりゃそうだよね。
「えっと、オベロ村の人に教えて貰ったんだよ。ついでに一緒にモンスター倒せってね」
「そう。オベロ村って言う事は別の村だよね」
「うん。一応、ナブルカ村の出身かな?」
「ナブルカ村、、、、そう」
そっけない声と態度で言われると、またそっけなく一言。
「別にいいよ。手伝わなくて。ハリィ一人で出来るから」
そう言ってハリィは足跡を追おうとする。
「ちょっと待って!私達と組まないのはいいとして、いやよくはないけど」
「何?」
「もう日も傾いたしさ、今日は諦めて明日再戦しようよ」
「ハリィのやり方に口出ししないで。ここで逃したらまたいつ出会うか分からない」
私の言葉には耳を貸さず、ハリィは追撃するが。
「、、、、手。離して」
追撃しようとしたハリィを私は自然と引き止めた。
「えっと、ホラ。逃げたのは実はモンスターの罠かもしれないよ。だって好んで人間を襲うなら逃げるのって変じゃない?」
私は素直に手を離すべきなのにも関わらず、何故か咄嗟に嘘をつく。
苦笑いが顔に浮かぶ中、ハリィは眉を寄せて私の嘘を聞く。なんだか惨めだなぁ。
「危ない!」
ハリィがそう言うと私を突き飛ばして、ハリィ自身も後ろに退く。
瞬間。黒い閃光が私がいた位置を横切る。
ハリィはその黒い閃光へ一撃同じ閃光を放つ。
「パアァァン!!」
あの破裂音がまたも私の耳をつんざくが、もう驚きはしない。
「チッ」
ハリィは舌打ち一つをして、私の手を振り解いて閃光へ接近する。
黒い閃光。それはお尋ね者の熊であった。
熊は本当に大きく、四足で立っているだけ私よりも身長が高そうで、筋肉と毛玉が生きているんじゃないかと錯覚する程だった。
ハリィはその巨大な熊にもう一撃決めようと“銃”を構える。
非常に安っぽく、ボロいがそれは間違いなく銃だった。
パアァァン!!と銃は排出口?らしき所から粉を飛ばしながら、何度も狙ったのか血塗れの熊の脳天目掛けて発砲するが、熊は止まらない。
「ダメだ!熊の頭蓋骨はその武器は通らない!心臓を狙うんだ」
「まさかコレでダメ!?」
漫画であった知識をハリィに教えると、ハリィは銃口に鉄球を入れて今度は心臓目掛けて発砲。
熊の体に弾丸は確かに命中したが、熊はそれに怯む事なくハリィを狙う。
二足の足で立って腕を一振り。ブオンと空気が鳴る速度の攻撃だが、ハリィはそれを先読みして避ける。
ハリィは紙一重の戦闘を続けるが、そんなのは長く続けられるものではない。
協力は断られたが、今はそういう事を言ってる場合ではない。
私は剣を取り出すと熊に向かって走る。
「どりゃああぁぁぁ!!」
ウォークライを上げて脇腹に一閃。だが、ボヨンと剣に感触が伝わる。マジか。
殺される。
本能がそう判断すると、私は剣を引き抜いてバックする。
鼻先に獣臭さを感じるた瞬間。熊の手が私の髪の毛を掠めた。
「あっぶねぇ!」
あと少しで死んでた。
生への喜びで嬉しくなるが、そんな喜びも束の間。熊は私を狙う。
「ぐおおぉぉ!!」
口を大きく開けて雄叫びを上げると、私へ咬みつく。
咬みつく口に対して、私は剣を全力で口の中へぶっ刺す。
ガブリと熊は剣を咬んで、血を私に吹き出す。
口での攻撃は止めたが、、、、今度は両手を回して背中を攻撃しようとする。
だが、その攻撃は腹部への銃撃でキャンセルされた。
ハリィが自分から突っ込んでピンチになってる私に助け舟を出すと、タイミングよく後ろから支援が来た。
「ソラさん!あっしの杖使って下さい!」
「サンキュー!」
そこそこ重い筈の杖を、セレナさんは全力で投擲して私にプレゼントする。
パシリと杖を受け取ると、私は剣を捨てて杖で熊の頭を叩く。
計二発当てると、熊は私にあの手を振る攻撃をするが。
「えい!」
と、先輩が投げた石にたまたま目にヒットし怯む。
この短い隙きに、私は剣を拾って撤退する。
今はうまくやれてるが、根本的にダメージを与えていない為、私はここで撤退を選択した。
そんな私を見た二人は同じく撤退を選択し、ハリィは熊に手を突き出して何かしようとしたが、何をする事もなく意外に撤退した。
肝心の熊だが、口か目がそんなに痛いのか、私達を見詰めるだけで追っては来なかった。
◆
「いや~逃げ切れてよかったね。熊って死ぬ程足が早いから人間の足じゃ逃げれないんだよね」
「え!?本当なの空ちゃん!」
「本当ですよカナリエさん」
「あっそ、、、、」
オベロ村のお婆ちゃんから貰ったクッキーやお菓子を、弾まない会話を添えて火を囲いながら私達は食べる。
ポツポツと口に含むお婆ちゃん方がくれたお菓子は非常においしいが、空気は最悪だ。
「あの、ハリィさんでしたっけ?あっし等は敵意なんてありはしませんから、そういう態度とか解いて貰えませんかね?」
と、セレナさんもこの空気がよくないとして、ハリィに態度を改めるよう言う。
「別に。協力なんてしないなら関係ないでしょ」
「いや、協力するしないはそうとして、少しは明るく振る舞ってはどうですか?」
「そう」
ポリポリとお菓子を齧りながら、ハリィはセレナさんの話しなんて知ったこっちゃないという態度をとり、セレナさんは頭を抱える。
「少しは明るく振る舞ってもいいのに、、、、」
「まぁ、仕方ないですよ。ああいう子は人にどうこう言われても変わりませんから」
「随分と言葉に自信がありますねソラさん」
「いやぁ、まぁね」
クラスにいる根暗な人にそう言っても変わる訳ないもんね。なんかスゲェ出来事でもないと。
「そうですね。どうせ明日からは関わらないし別にいいですか」
「ん~どうでしょうか?」
「え?もしかしてソラさんアイツと関わるつもりですか?」
「そうだね」
苦笑しながら、私は空間に手を入れて私は剣を取り出す。
「この剣ね、やっぱり安物だったのかなぁ?一応はそこそこに使えるつもりのを買ったけど、刃が通らなかったよ」
先程使用した剣に血が幾ばくは付着しているが、この血は熊の口を斬った時のであり、腹は毛や硬い筋肉が邪魔して刃が突き立てられなかった。
「うわ~。つまりそうなると、あっし等勝ち目ないじゃないですか」
「そういう事になるね。よかった鞘付け忘れて」
「それは、本当に付け忘れてよかったですね。もしも知らずに斬り掛かったら死んでたかもしれませんね」
「多分知ってても勝てませんね」
かぁ~と呆れと疲れを含んだ感じの声を上げると、ずぅーんと気落ちする。
「って事は、戦力不足でアイツと組まなくちゃいけないわけですか」
「だね。相手は組むの嫌らしいけど、コッソリ後ろからついて行けばいいからね」
秘密の相談をする様な小声でそう耳打ちする。聞かれて逃げられたら元も子もないもんね。
セレナさんと私で現状を整理すると、私は次に明日の戦略を立てる。
「そうですね。明日は罠重視で行きましょう。まともで戦って勝てないならまともに戦わないだけです」
「罠張っても勝てますかね?そもそも、罠の張り方知ってますか?」
「さぁ?どうやって張るんでしょうかね罠って」
なんだその目は。ちゃんとアテはあるさ。
「大丈夫大丈夫。多分明日辺り私が閃くからさ」
「えぇ、、、、」
「疑いたくなるのは分かりますが、きっと大丈夫ですから」
うん。分かるよ。私も同じ事言われたらその目するから止めてね。
「そうですね。罠は仕掛けますが、それと別にもう一つ何かした方が良いのでは?」
「とは言っても、私森とか詳しくないからなぁ。セレナさんは知ってたりしますか?」
「残念な事に全くですね」
先輩に私は少し視線をやるが、どうせ知ってないだろうとして視線を逸す。
「ま、そういう事ですから素人は一つで十分でしょ。それに最悪ダメだと思えば逃げましょう。現実逃避でここに来たんですから、現実知ってさっさと真面目に働きましょう」
「ですね」
ハハッと軽く笑うと、私は先輩が食べてるお菓子を取り上げ、「食べ過ぎて明日の分なくさないで下さいよ」と言って私は寝る準備をする。
その際、私は寝ずの番を引き受けた。
何でかって?多分先輩は途中で寝落ちするから責任を持って私が引き受けるべきだと思ったからさ。
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