第20話 メンバー一人追加

私達は、盗賊団討伐後に大いにはしゃぐ、予定“だった”。


報酬金で料理を沢山食べようと。


いつもはお酒を飲ませるのを禁じている先輩にも、今日は許しちゃおうかなって。


だが、うん。まぁ、それは3つの理由で出来なくなった。




一つは、私が発明した空間魔法を二重に使う反撃魔法。


この魔法の欠点に気が付いてしまった。いや、気が付かなきゃヤバイ欠点だけどね。


欠点とは、要するに中に収納したものまで一緒に巻き込む事だ。


クエストの帰り道。私は水筒に水が入っていないのにも関わらず、喉が渇いたので取ろうとした。


だが、どこを漁っても土に土に石ころと、水筒なんて出ない。それどころか、この空間に入れてた物までなくなてった。


当然だろう。空間に入った物を外に出すんだ。元から空間に入ってた物が外に出ない理由があるか。




と、折角遠距離攻撃無効化の技を見つけた矢先にコレだ。コレを利用するなら空間にある失くしたり傷付けてはいけないものを一旦どこかに保管しなくてはならない。


さて、言わずもがな2つ目の理由は私達が家なしの宿泊まりの状況の為に、自分の荷物は可能な限りこの空間に仕舞ってたせいだ。


水筒は勿論衣服に日用品。更には財布と、失くしたくないし傷付けたくない物のオンパレードだ。


それを失くした?答えは唯一。晩ご飯抜いてさっさと探す以上。嬉しい事にザッコさんも手伝ってくれた。


そういう理由があってまぁ、参加は無理だった。




さて――三番目。コレなのだが、別にしなきゃいいのに、何故か先輩とザッコさんがしようと意気揚々にとある事をしようと私の泊まる部屋へセレナさんを連れて行った。







時刻は何時だろうか。多分深夜。


そんな夜中は本来ぐっすりと眠り、明日の労働に備えて英気を養う時間だが、その時間の中で私達は不健康に人には言えないことをしている。


狭い室内の中、明かりは手元のロウソクだけの暗闇で、一言。誰かが口を開けた。




「えーと、被告セレナちゃん。あんたは~“火刑”に処す!って、あぁでも本当に火刑なのかなぁ?」




そう言い、眠そうに頭を掻いて正座をさせたセレナさんをザッコさんが見やる。


うん。まぁ、言いたい事を言おう。


「すみませんザッコさん。火刑はちょっと、やりすぎじゃないですか?」


「あぁ、実は俺も思った。流石にこれだけで火刑はねーわな」


と、死刑執行人はケロッと笑う。


「それもそうですけど、純粋にかわいそうで、、、、」


「でもなぁ、俺コイツの宗派の罰則イマイチ分からねーんだわ」


「いや、だからって火刑はやり過ぎでしょ」


「あぁ、流石にやりすぎだからギロチンでいいか」


「待って!それ火刑とどう違うんですか!?」


「かわいそうだけどよぉ、僧侶が戒律守らんのはいかんよなぁ?」


「あの~あっしは一応元修道者で」


大した罪でもないだろう罪でギロチンにかけられるセレナさんが、ボソッと小さく講義の声を上げるが、ザッコさんは全く聞く耳を持たず話を続ける。




「ええーい黙れ。どっちにせよ、あんたの宗派じゃこれは確かいかんかったろ」


そう言ってザッコさんが取り出したのは、私の腹部を切ったナイフだった。


「俺はぁ宗教に関して良く知っている訳じゃねぇが、あんたの格好は『ウェルム教』のやつだよな?」


、、、、ギクリ。


ザッコさんの予想が見事的中と言わんばかりにセレナさんは反応し、その反応を見てザッコさんは絶対悪い事を考えてる顔で笑う。


というか――何故か先輩も悪い顔してやがる。なんでだよ。




「ウェルム教って、確か刃物を所持してはいかんだろ?だから棍棒を練習するらしいし、回復に重点を置くらしいな。けど、なんでそんな宗派の信徒さんが刃物を持っているのかなぁ?」


「ぐぬぬぬ、、、、」


「いやぁ~なんで持っているのかなぁ?持ってたらこれは罰が必要かな?罰はやっぱり火刑だよな~」


「ねぇ、火刑になんで繰り上がったの?セレナさんかわいそうですよ」


「まぁ、いいっていいって。それよりも見てな」


私の注意にいいからと言い、ザッコさんはジッとセレナさんを見詰める。


肝心のセレナさんは言い訳を探しているのか、下を向いてうんうんと悩み一言。


「せめて、その、火刑とかの死に関わる以外で」


断腸の思いで覚悟したのだろう。そもそも刃物の所持程度で大きな罰である筈ないだろうに、それで死に近しい事を覚悟される程に非常で理不尽な覚悟を。




しかし、その覚悟を聞いた二人は明確的に笑い、口を開く。


あぁ、絶対に嫌な事を言うよ。一体どれだけ悪逆非道で血も涙もないのか。


「じゃあ、ソラちゃん達と一緒にいな」


「だったらさぁ、私達と一緒にパーティー組もう!」


と、鬼の方がまだ慈悲があるだろう選択を、、、、アレ?なんだぁコレ。


「ねぇ、ざっこさん。先輩の要求は分かりますが、なんでザッコさんも同じ要求ですか?」


余程悪くない限り仲間が欲しい私達にとってこの要求は正しいが、これをザッコさんがする理由がない。だって、その要求する位なら、、、、ホラ、えっと、あ~~いやらしい要求とかね?


「というか、なんでわざわざこの問題を指摘をするんですか?しかもその要求で」


「そりゃあよぉ、竜と戦おうとする何処ぞのじゃじゃ馬天使様に死なれると困る人間がたっくさんいるからよぉ、おじさんが一人お仲間さんをつけようとしたんだよ。あの量の物資を運べる人材は失くすには惜しいぜ」


「わーを。これからは気を付けます」




ザッコさんは皮肉たっぷりにここに来た理由と、要求の理由を語る。事実私が今日の様な事を連発すれば確実に死ぬだろう。


「で、入るのか?入らないのか?俺は別にどっちでも構わねぇぜ。異教徒の火刑は楽しみだぜぇ」


「ザッコさん。異教徒でも火刑はさぁ」


「ソラちゃん。宗教ってのは怖いよ~。宗派が違うだけで人間と見ないんだよ~」


「それってどこの地球ですかね?」


「まぁ、だからザッコさんがいくら優しくても、セレナちゃんを殺しちゃうかもよ?だ・か・ら、私達のパーティーに入ろうよ~」


綺麗に見える欲望。ただ、チラチラと自分の武器を見るザッコさんが綺麗な欲望にNOと言わせない。




「しっ、します。入りますから、命だけは、、、、」


あぁ、泣いちゃたよ。


「ホラ!入るって言ったから二人共どっか行け!私はセレナさんを慰めるから!」


「はいよ~。悪者は退散すぜ」


「えっ!?ちょっと!ここ私の寝る所だよ空ちゃん!」


「先輩は女の子泣かせた罪で床で寝て下さい」


有無を言わせず、悪党二人を部屋から追い出し、私はセレナさんに声を掛ける。




「えっと、セレナさん。二人がすみません。別に入らなくていいですから、その泣かないでくれませんか?」


仲間になってくれるのは嬉しいが、ぶっちゃけ人を悲しませてまでする事ではない。


私は涙をポロポロと流すセレナさんにそう言って、離れる事を推奨するが――


「一つ、お聞きしたい事が」


「ん?言ってみて」


「先程ザッコさんがあの量の物資を運べる人材と言ってましたが、ソラさんが使うあの空間魔法。アレは一体どの位の量が入るのでしょうか?」


「随分変な質問だね。うーん。一応私と先輩で合計14トンは運べるけど、そのうち9トンは私が運んでるかな?」


なんでこんな質問をしたか疑問だが、その疑問は直ぐに解消される。




「つまり――コレってあっし“超ラッキー”って事じゃないですか!」


「ん?」


顔をバッと上げ、涙なんてどこにやら。眩しい位の笑顔で私の肩をセレナさんが掴む。


「抜けても良いって事は、別に入っても良いって事ですよね!?」


「うん。まぁ、私だって仲間が欲しくない訳じゃないからね」


「でしたら!私を是非パーティーに入らせて下さい!お願いします!」


「良いけど、なんで入りたいの?旅とかしているんじゃないの?」


「そうですけど、諦めました!今!」


今かよ!と突っ込みたくなったが、突っ込むのを諦めセレナさんのパーティー参加を目で良いよと伝える。




「良いんですか?」


「まぁ、ね」


信じられないといった顔でセレナさんは困惑するが、それに勝る笑顔で喜ぶ。


「よっし!いつか自前で馬車を手に入れればゴニョゴニョ、、、、」


「え?なんて言った?」


「いえ、何でもありません!それよりもソラさん次は何をしますか!?」


「今日は流石にもう寝るよ。眠いし。あっ、でも一つ頼み事があるけど、頼めるかな?」


手を合わせて、私は少し気になった事が聞けるかな?とワクワクしてお願いをする。


「はい!なんでも言って下さい!」


「じゃあ、聖書見せてくれるかな?」


「、、、、、、、、」


おい、なんで目線を逸す。




「えっと、他のでよろしいでしょうか?」


「え?出来ないの?」


「いえ、実は、、、、」


モゴモゴと、言い難そうに口を動かし、誤魔化そうとするが、諦めて私に小声で耳打ちをする。


「ほうほう。つまり、聖書を取られたからそれを取り返す旅に――ねぇ、バカなの?」


驚く程に失礼だが、飛び出てしまった言葉に、セレナさんは顔を赤らめて面目ないと一言。


「というか、そんな大事な旅放っておいて私達のパーティーに入るのかなぁ?」


「痛い所を突きますが、あっしの自己責任で納得してはくれませんかね?」


「私的には特だから良いんだけどさぁ」




「ちなみに、ソラさんはなんで聖書に興味を持ったんですか?」


「ん~まぁ、刃物持ったらどんな罰食らうのか気になったのと、これから一緒にいる訳だから出来れば宗教のタブーになる事は避けようかなって。ついでに気になったんだ」


次にこの事はどういうべきかと悩んだが、私は隠すように話すと決めて続けて口を開く。


「実はね、私と先輩はここの出身じゃないんだよ」


「え?本当ですか?」


「うん。本当。でね、私が元住んでた所はここからすっごく遠いんだ。そこで信じられてた教えってのはさ、基本的には修行積んだらこの世の迷いや恐怖が消えるよ~って感じだったんだ。でもさ、セレナさんの信じている教えてのは、“逃げない”んだ。それがその、ちょっとカッコよくてさ気になったんだ」




逃げない強さ。


私の世界の宗教が、逃げる方法であるにも関わらず、より厳しいだろうこの世界が選んだ逃げない強さ。


誰もが諦めて逃げる強さに行き着く所に成し遂げた強さに、私はちょっとだけ知りたくなってしまった。


「もっ、勿論少しだけだよ!ほんの少しだけ!ちょっぴりと気になっただけだからさ!」


しかし、実際の天界とかを知っている私にとって宗教は結局嘘。


その嘘を知りたいと言う自分が恥ずかしく手を振り、少しだけと主張する。


そんな滑稽な私に、セレナさんは微笑んで手で4の数を数える時に似た形を作り、それを見せて「強き者に幸あれ」と一言。




「もしかして、さっきのは宗教のアレ的な作法?」


「えぇ、あっしの宗教の正しい選択をした者に対する賞賛の作法です」


「戒律破る信者にされてもなんか有り難みが少ないですが、ありがとうございます」


はにかみながら礼を言うと、私は明日も早いから寝ようと良い、セレナさんを返そうとドアを開けると――


「先輩。床で寝たんですか?」


ぐかーと爆睡する先輩が床の上に居た。

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