第13話 奇人変人たち
奇人変人ぶりを競っているかのような人たちがいた。
あくまでも奇人変人ぶりを演じていることが第一条件。
演じていない場合は、違う施設へ行くことになるもんだ。
演じ方は人それぞれ、作品で見せてくる者がいれば、生き方で見せてくる者もいる。
この頃流行っていた、「自分探しをする自分」「不思議ちゃん」にはまり込み、抜け出せなくなっていた者もいた。
ビダイにいるということは、変わっていないといけないという妙な思い込みが誰にしも少なからずあったと思う。
その中でも、ワタシの中で最も奇人変人だった人間がいる。
村さんである。
全ての欲を捨てたかのような人だった。
ヨビコウ時代から仲がよく、常に一緒にいたような気がするし、
本当は一緒にいなかったのかもしれない。
特にこれといった情熱もなく、ふらふらっと大学に現れたかと思うと、すぐにどこかへいなくなる。
夢や希望を語る若者の中で、一人ぼ~としている。
この人は何がしたいんだろうとワタシはずっと思っていた。
川を流れる枯れた落ち葉のようにも見えた。
時折、大学に至るまでの話を聞くことがあった。
鹿児島県出身、理数系の専門学校から町工場へ就職。
半年務めたが、面白くなく絵が描きたいと思いヨビコウへ。
ヨビコウではデッサンが面白く集中したが、大学に入ってからは、これといった目標もなく浮遊。
村さんは大学を出てから再び町工場へ就職した。
ビダイには人間の判断能力を揺るがす何かがあるんじゃないかとワタシは考えた。
ここでビダイセイ面して熱く語っている連中もビダイに侵されているんだ。
ビダイを出れば、自分が病気に罹っていたことに気づく。
奇人変人は演技である。
何かをすることもしないことも演技なのだ。
大学を卒業してアートをやっている人間は長い闘病生活を送っているのかもしれない。
★★
財布の中から、運転免許証が出てきた。
赤と黒のボーダを着た自分は熱に浮かされているようにも見えた。
人生、熱に浮かされたっていいじゃないか。
熱をもったまま、生きてたっていいじゃないか。
ビダイ病院は今日も患者を量産している。
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