036:ペルソナ5スクランブル ザ・ファントムストライカーズ

【タイトル】

ペルソナ5スクランブル ザ・ファントムストライカーズ

【ハード】

プレイステーション4/ニンテンドースイッチ

【販売/開発】

アトラス/コーエーテクモ(オメガフォース)

【発売日】

2020年2月20日



◆『最高のスピンオフにして後日談』


ペルソナ5が無茶苦茶楽しかったから、発表直後からこれが凄く楽しみだった。

ぶっちゃけロイヤルより楽しみでした。

PS4を持ってなかったので、Switchで遊べるからというのもありますが。

とにかく、ペルソナ5にハマった人なら絶対お勧めできるタイトルです。


「ペルソナ5スクランブル ザ・ファントムストライカーズ」は、ペルソナ5の後日譚を描くスピンオフタイトル。

PVの中でも一瞬だけP52という表記になる演出がなされるくらい、P5の正式続編として開発されたタイトルです。


本作のジャンルはアクションRPG。

というか、無双シリーズのオメガフォースが関わっており、ペルソナ×無双のコラボタイトルでもあります。

が、蓋を開けてみるとシステム面はほぼほぼペルソナ5の要素で占められています。

戦闘シーンだけアクションになったP5と言われても過言じゃないくらいP5してます。

無双だってことを後半忘れてました。


そして物語は、完全にP5の後日談。

P5のエンディングから半年後、夏休みに久しぶりに集まった怪盗団が遭遇したのは、新たな改心事件。

前作とは異なる心の異世界「ジェイル」が引き起こす事件が全国各地で発生していました。

今度は日本全国世直しの旅!

キャンピングカーに乗って、ひと夏の大冒険が描かれます。


やはり怪盗団が全員揃った状態からスタートというのは、前作プレイ済みの者には嬉しいもの。

序盤からメンバー全員がすぐ使えるようになるので、ああ怪盗団が帰ってきたって感動します。

特に前作では加入が遅かった春などは出番が大幅に増えていますね。


新キャラクターのソフィはAIという特性から、本作の重要なキーを握っています。

ここでいうAIとは、現代で研究されているAIよりもさらに一歩進んだ、機械知性としてのAI。

彼女が心を学んでいくことが描かれる、ペルソナらしい物語が描かれていきます。

もう1人の新キャラクターは、警察官の善吉。

P5では初の大人な仲間である彼を加えていくのは、基本的に大人と敵対してきた怪盗団が少し成長した証なのかもしれません。


物語中は東京、仙台、札幌、沖縄、大阪を主に周っていくことになりますが、それ以外にも千葉、京都、福岡、横浜にも立ち寄っています。

日本の主要都市と観光地、全部回っていきます。

リアルで夏休み日本一周とかやったら凄いだろうなぁ…

ロケーションの再現も見事なんですが、この辺はひょっとしたら海外展開も意識していたのかもしれません。

日本の観光名所の紹介や、有名なお土産の紹介も兼ねて。

本来なら、2020年は東京オリンピックで大盛り上がりだったはずですから……


そんな全国各地で起こる新たな事件。

「ジェイル」の王になった者達に対し、単純に悪人の心を盗むのではなく、犯人のトラウマを暴き出し改心させるためにビシッと言ってやるのが本作の流れ。

前作の事件を乗り越えた怪盗団だからこそ出来る、身も心も成長したメンバーの姿が見れるのは感慨深いです。

仙台編なんかは、私も物書きやっていますから祐介の言葉が響きますよ。


ラストの展開は、前作を知っていればむしろやっぱ来たかと思うもの。

またしても起こる異変だが、前作と似て非なる展開です。

黒幕の意図もしかり、今度はちゃんと最後まで全員で戦うのもしかり。


P5が好きだという人であれば、きっと最後まで楽しむことが出来るでしょう。

怪盗団の新たな魅力を引き出した、後日談として最高の出来だと思います。


◆『システムと世界観のリンク』


本作はアクションになったことで前作から色々変わるかと思われましたが、思いのほかP5の雰囲気やプレイ感を損なうことはなかったです。

もちろん、BANDなりクエストなり前作とは違うシステムが採用されてるわけですが、P5の流れをちゃんと引き継いだシステムになっており、違和感はほとんど感じなかったです。


また、前作の「パレス」とは違い、「ジェイル」は前のステージにも戻って探索することが出来るようになりました。

メタ的に言えばアクションゲームとしてのリプレイ性や、レベル上げのためのダンジョンが存在しないからその代わりということになるのですが、そこに世界観的な理由付けもちゃんとするのがペルソナ流。


前作で登場した、悪人の心を盗めば崩壊し二度と入れなくなる「パレス」に対し、取り戻したネガイが無くなっても何故か存在し続ける「ジェイル」。

今作ではずっと残るジェイルが黒幕の存在を示唆し、さらにずっと残るからこそ引き起こす事件なんかも登場します。


「ジェイル」内でもコアを見つけて本拠地に乗り込んで、一度現実に戻りトラウマルームで犯人の心の鍵の情報を集めて、予告状を叩きつけて…といった基本ルールは共通してますが、そのための理由付けをシステムだからというだけでなくちゃんと理由付けがされています。

それが物語の中で、謎を解く手掛かりになっていくんですね。


最近のRPGだと、ゲームシステムもまた世界観構築の一部だと考える方が主流っぽいですからね。

こうした、ゲームシステムと世界観を密接に繋げる手法は、アトラスは特に得意としているものです。

アクションRPGになった本作においても、そのイズムは継承されています。

だからこそ、前作からあんまり違和感なく入り込めたんでしょうね。


一方で、無双アクションの要素が加わったことで、怪盗団が強くなったと実感できる感じもします。

SHOW TIMEでド派手な技を放ってシャドウを蹴散らす爽快感は、コマンドRPGではなかなか出来ないものです。

主人公はしっかりと多数のペルソナが用意され、技のバリエーションが豊富なのは前作と変わらず。


仲間達にもそれぞれコンセプトが定められ、アーマー溜め撃ちやカウンターなど、固有アクションが用意されていています。

それがしっかりとキャラクターに合致している。

単に物語の一員としてでなく、「アクションゲームのキャラクター」として怪盗団の仲間がちゃんと再設定されているのが分かります。


ペルソナ召喚は時間が止まるようになっているので、前作のようにコマンドRPGっぽくスキルをゆっくり選んでいけるシステムになっています。

アクションが苦手な人でも、落ち着いて戦うことが出来るようになっています。

乱発するとすぐSPが無くなる辺りも、P5っぽいですけど。


単にペルソナ×無双にするのではなく、ペルソナらしいアクションRPGとして、システムをイチから組みなおしている。

その上で、ペルソナ5の続編としての物語ときちんとリンクさせた。


スピンオフタイトルとして、これほど魅力的なものがあるか!

ヒーホー!



◆『怪盗団の更なる活躍は?』


ペルソナ5の関連作品だけでも、本作の前に「P5D」「PQ2」「P5R」と次々と出ていました。

アニメもテレビシリーズだけでなく、スペシャル版も2回放送。

更にスマブラをはじめ、様々なタイトルに客演。

怒涛のP5人気を推し続けてきたアトラス、怪盗団の活躍はゲーム業界内でもずっと騒がせ続けてきました。

そのP5ラッシュの締めくくりともなったのが本作です。

怪盗団が再び世間を騒がし、そしてまた世の中に消えていく物語は、現実にも確かにリンクしていたのかもしれません。


最初のP5から4年ちょっと。

P5の関連作品やコラボもそろそろ落ち着いたのか、ここ数ヶ月は目立った関連情報は少ないですね。


しかし、ペルソナシリーズにはかつて8年もの間会社を支えた、番長という偉大な先輩キャラがいますからね。

彼に追いつくためにも、まだまだ活躍する機会はあるのでしょう。


いつかまた、怪盗団が世間を騒がすのかもしれません。


その時日本がどうなっているかは分かりませんがね。

怪盗団が現れるということは、人々の心が荒れているということでもあるのですから。


◆シリーズリンク

前作ペルソナ5のレビューは、前ページを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る