034:荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!
【タイトル】
荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!
【ハード】
iOS/Android
【配信/開発】
バンダイナムコエンターテイメント/QualiArts,Inc.
【配信日】
2019年2月13日
◆『アニメ丸ごとどころじゃなかった』
ゲーム業界内には、派遣として色んな会社にスタッフとして向かう人もいます。
エンジニアリングとか言ったりしますが、まぁ派遣ですよね。
技術や知識を持ってる人が、色んな現場でその力を振るいつつ、新たな技術を会得していく。
一所に留まる人って、案外少なくなっていると思います。
まぁ私もそんなうちの一人だったので、仕事現場を探したりしてたことがあります。
そんな時に、この案件を紹介されたんですね。
アニメ「荒野のコトブキ飛行隊」のゲームの現場。
まぁ私がソシャゲ嫌い、アニメ未見というのもあるのでご縁は無かったんですが、とりあえず確認はしてみようと思ってプレイしてみたんです。
それで気付いたんですね、ソシャゲ変わったなって。
「荒野のコトブキ飛行隊」といえば、水島努監督のオリジナルアニメ。
「ガールズ&パンツァー」で大ヒットを飛ばした水島監督の次作、戦車の次はレシプロ戦闘機だっていうことで話題になりました。
荒野の世界で活動する、美少女だけで構成された用心棒部隊「コトブキ飛行隊」の活躍を描いています。
で、このアニメは最初からゲーム化されることが発表されていたわけですが。
この力の入り方が、よそのアニメとはだいぶ違う。
アニメのゲーム化作品というと、大抵はアニメ本編を追体験したり、あるいはアニメ版の番外編的シナリオになっていることが大半です。
この辺は原作との兼ね合いなどもあるので、ゲーム制作側があまり自由に作ったり出来ないものなのです。
が、本作は元々がオリジナルアニメということもあるためか、アニメ側も積極的に協力してるようで。
本作はアニメ版のダイジェストだけでなく、同じ世界観を舞台にした他のチームの活躍が描かれます。
というか、それがメインになっているくらいです。
アニメにほんの少しだけ登場した後輩チーム「ハルカゼ飛行隊」を中心に、「怪盗団アカツキ」「ゲキテツ一家」「カナリア自警団」という、アニメ本編とはまったく異なる顔ぶれのチームが4つも。
それぞれのチームに、アニメ版のメインを務める「コトブキ飛行隊」とほぼ同等のボリュームのシナリオが用意されているのです。
「コトブキ飛行隊」のダイジェストを含めて、アニメ1クールが5本分。
これを最初から想定して作ってるっていうのが特徴です。
しかも、「コトブキ飛行隊」以外のシナリオは現在も続いています。
今は3章が始まってるんだっけ?
だから、実質3クール目。
あと、2クール目くらいに「ムラクモ空賊団」が追加されましたか。
また、それらとは別に期間ごとのイベントシナリオもあったりするわけです。
この際は全キャラの中から数名主役が抜擢され、チームの垣根を超えた事件が描かれたりします。
そして、本作で特に特徴的なのが外伝アニメ。
「ハルカゼ飛行隊」を中心に、ゲームのイベントシナリオを補足するシーンが完全新作アニメとして見れるという点。
つまり、ゲームのために新作アニメ作っちゃってるという点です。
アニメの世界観を広げるスピンオフ作品というのは数多くありますが、スマホゲーでここまで積極的に広げていったものを、私はそれまで知らなかったんです。
アニメのメインキャラよりも、ゲームオリジナルキャラ達を積極的に推していく姿勢って珍しいと思うんですよ。
そのために短編アニメ作ったり、各チームの主題歌作ったり。
単なるアニメ放映のおまけで終わらせない、という姿勢が垣間見えます。
◆『キャラ絞りスタイルの到達点』
スマホのソシャゲでガチャっていうと、ただでさえ物凄くたくさんキャラがいて、しかも新しいイベントのたびに新しいキャラが追加されて、そのたびに過去のキャラは使い物にならなくなって…というイメージはないでしょうか。
私もそう思ってましたし、実際ソシャゲが台頭した頃はそういうスタイルが主流でした。
が、この使い捨ての部分が徐々に批判的に思われるようになったのでしょうね。
現在主流になっているのは、最初から登場人物が大体決まっているもの。
最初から登場する数十人のキャラ全員を予告しておき、同じキャラでも属性とか衣装が違う、という形でガチャで出すカードの種類を増やしていく方式です。
こうすることでガチャイベントは増やしつつ、キャラクターがいきなりたくさん増えたりしないので、ユーザーはじっくりとキャラクターについて愛情を深めていってくれている。
ついでに、後からたくさんキャラを考える必要が無くなるので制作側も助かります。
もちろん本作もこの方式を取っており、基本的にガチャで出てくるのはメインとなる5チーム30名のキャラクター達。
同じキャラでも属性やポジションが異なるものが数パターン用意されています。
あとはまぁ、アニメのサブキャラが数名といったところでしょうか。
ただ、本作のガチャで特徴的なものは、これまでに登場したキャラクターすべてが排出されるガチャが常設されている点。
確率は絞られてますが、お金か時間をかければコンプリートはそこまで苦にならないという構成になっています。
それと、現在は過去開催されたイベントはすべて遊べるようになっており、イベント報酬のキャラクターもすべて入手が可能になっています。
キャラクターのガチャで儲けようという感じがあんまりしないんですね。
で、このゲームの場合どこに課金してもらおうとしてるのかというと、戦闘機の方。
戦闘機はゲーム中に出るアイテムを使って製造しますが、そこそこ絞られてるんですね。
あと、課金専用の戦闘機や塗装があったり。
戦闘機を製造・強化するなら課金した方が手っ取り早い。
ついでに、好みのカラーや機体を揃えるようなこだわりをしたい人も、こっちの方が早い。
ミリタリーものらしく、マニアはそっちに金を掛けてくれるだろうという思惑が垣間見えます。
私みたいにミリオタでも何でもない人にはライトにキャラガチャを楽しんでもらい、マニアックな人はよりマニアなところにお金を掛ける。
そういう、ライトとガチ勢の両方にうまく住み分け課金を作ってるんですね。
あと、本作はスキップを使って周回が楽になる要素がありますが、その分燃料(要するにスタミナ)の消費がかなり激しい。
が、燃料の最大値や回復量は結構控えめです。
スタミナに課金するのは他のゲームにもよくありますけど、大抵はスタミナ回復アイテムが余ったりしますからね。
本作もログインボーナスでもらったりできますが、スキップ使いまくるとあっという間に無くなります。
つまり、ここも課金要素。
がっつりとゲームを楽しむならば、キャラクター以外のところにも課金してねっていう構成になっているのです。
上手いもんで、お知らせで目が行くのは基本キャラガチャですからね。
無課金勢からすれば、いただきもののダイヤでキャラガチャ回せれば十分なんですよ。
それで過去のキャラクターが使えないということもないので、ゲームを嫌いにならずにいられる。
基本プレイ無料のソーシャルゲームは、運営として常にどうやって儲けるかが課題になります。
キャラ数を絞ったソシャゲは、いかにしてキャラクター以外のところで課金してもらうか。
本作はその辺をうまくバランス取ったゲームなんじゃないかなって思います。
とりあえず、バンナムのアニメIPゲームで運営が1年以上続いてるということは、それなりに成果が出てると見ていいでしょう。
こうした構成のゲームは他にもあるでしょうが、私はソシャゲ嫌いが長引いたこともあって、その辺りのソシャゲの変化というのを見逃した人間です。
そういう意味で、本作はソシャゲの変化に気付かせてくれたタイトルということで今回取り上げました。
今でも何故かやっちゃうんですね、スキップしまくってるけど。
◆『映画来てるわ』
で、このレビュー書いてる時、「荒野のコトブキ飛行隊」の劇場版が公開されました。
アニメの方が好きな人ならとっくに知ってたことでしょうが。
劇場版といっても、新規カットありの総集編らしいです。
うーむ、完全新作までは届かなかったか。
ゲームのアニメにお金使いすぎましたかね?
映画もゲームも大金が掛かる時代ですから、なかなかオリジナルの大作というのが出せなくなっています。
せっかくアニメ大国・ゲーム大国の日本なんだから、この辺もう少し伸び伸びと制作できる環境が出来るようになるといいんですけどね…
【10月13日追記】
最近ガチャ更新が無いから怪しんでましたが、12月でサービス終了が発表されました。
そうなんだよね、終わる時は案外あっさりと終わっちゃうんだよねぇ…
私も、関わったタイトルがサービス終了になった経験があるので、スタッフの寂しさというものも分かるつもりです。
特にソシャゲやオンラインゲームって、サービス終了すると何も残らなくなって、ユーザーに思い出してもらえなくなるということが起こりがち。
データだけの存在というのは、存外存在感が無いものです。
けど、ゲーム版ミュージックアルバムという、別のもので形を残すというのは上手いやり方だなと思います。
アニメ資本があるからこそのやり方やね。
ひとまず、スタッフの皆様お疲れさまでした。
最後までよろしく。
サービス終了までにストーリー見終えなきゃ!
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