033:ユグドラ・ユニオン

【タイトル】

ユグドラ・ユニオン

【ハード】

ゲームボーイアドバンス

【販売/開発】

スティング

【発売日】

2006年3月23日



◆『寄らば斬ります!』


最近はスマホゲーやってると似たり寄ったりなゲームが多くて、革新的だったり独特なゲームシステムを採用してるゲームってのはめっきり見なくなったなぁと感じます。

まぁ、私がそんなにスマホゲーに触ってないせいもあるんでしょうが、これは攻めてるなぁと思うタイトルになかなか出会えてないなって思います。


独特なゲームシステムを持ったゲームというと、スティングという会社のゲームはなかなかユニークなシステムを考えるなぁって思います。

主にディベロッパー(開発)として現在も活躍してる会社ですが、スティングが販売元になっている、あるいは企画しているオリジナルタイトルは、いずれもユニークなシステムを採用しています。

ユグドラ・ユニオンはスティングゲームの中では一番知名度があるかもしれません。

PSPやスマホゲーでリメイクされましたし、スイッチにも移植されました。


本作は亡国の王女ユグドラが、軍勢を率いて祖国を滅ぼした帝国に立ち向かうシミュレーションRPG。

「寄らば斬ります!」というユグドラのセリフが独り歩きしてますが、むしろゲームシステム的には寄っていって斬ります。


本作の最も特徴的なのが、カードを使った進軍システム。

プレイヤーはステージ開始前に、出撃するキャラと使用するカードを選択するのですが、このカードを進軍時の移動力にも使っているのが大きな特徴。


毎ターンの最初にカードを選択し、カードに書かれた移動力の分だけユニットを動かすことが出来ます。

選択したカードは戦闘時の攻撃力や使用するスキルにも影響しますから、ターンごとにどのカードを使うのかがとても重要。

カードが無くなったら兵糧切れということでゲームオーバーになるので、無駄打ちは出来ません。


更にはキャラクターごとの連携「ユニオン」も重要。

男性キャラなら斜め2マス、女性キャラなら上下左右のマスにいるキャラと連携し、連続で戦闘に参加できるようになります。

ターンを無駄にしないためにも、いかにうまくユニオンを組みつつキャラに合致したスキルを使用するか、そのためのカード選びという戦略性があります。


さらに実際の戦闘ではちょっとアクション性が加わり、攻めるか守るかを指示する要素もあります。

キャラクターは体力の代わりに士気というパラメータがあり、たとえ戦闘で負けても士気が残ってたらまた連続で戦わなければならないこともあります。

武器の相性があるので負ける時も十分ありえます。なので、被害を抑えつつ攻めるポイントで攻める。

押せ押せ引け引けのバトルの中で、カードのスキルもタイミングを見計らって使う必要があります。


ジハーード!!


かなり複雑なシステムなのですが、チュートリアルは非常に丁寧なので、順次慣れていけます。

気が付けば頭の中でユニオン組んでます。

とはいえ、隠し要素なんかも結構多いので、普通にプレイすると見逃しがちなことも多いです。


私は基本、一度エンディングを見るまでは攻略情報を見ないようにしています。

なので、初プレイでは隠しキャラを一人仲間にし損ねてしまったんですよねー。


「夜襲っていうのはどうかな?」



◆『可愛くて血なまぐさい物語』


本作はきゆづきさとこ先生がキャラクターデザインを務めており、ちょっと丸みがあって可愛らしいキャラクター達が登場します。

沐浴シーンなんかもあって、大変によろしい。

ゲーム中の戦闘シーンは可愛らしいドット絵がわちゃわちゃと戦っているので、絵柄だけ見ると結構ポップです。


しかし、グラフィック面では描写してないだけで、ゲーム中のシナリオはしっかりと戦記モノしています。

戦争していますから敵にも味方にも死人は出るし、その際は「戦死」とデカデカと表示されたりします。

帝国側の義勇軍(民間人)をも容赦なく倒していかねばならないこともありますから、なかなか血生臭い物語になっています。

他にも権力争いでどちらか一方の貴族しか味方に出来ないとか、大量破壊兵器で常に味方に甚大な被害が出るステージとか。

敵側はイケメンだろうが幼女だろうが爺さんだろうが、基本的に全部殺していくことになります。

そりゃ、相手は侵略者だから叩き潰さないといけませんからねぇ。


この絵柄と物語のミスマッチ感はあえて狙って作られていたそうで、これが本作の魅力にもなっています。

可愛い顔して聖剣の名のもとに敵兵を容赦なくぶった切っていくというユグドラさんのイメージ像が出来るわけですわ。

いわゆる、ギャップ萌えって奴ですわ。

いやいや、こんなギャップ萌えありかよって思うのですが。

ありなんでしょうねぇ、世の中的には。


一方、ゲーム中に使うカードイラストは戸部淑さんが務めており、ポップなキャラクターとは対照的に美麗な絵柄で描かれています。

戦闘ではドット絵のキャラが武器を掲げると同時にカードイラストのカットが入り、キャラクターの厨二な台詞と共にカードに書かれた呪文が表示されるというスキル演出が入ります。


こうしたミスマッチ感から来る衝撃というのは、プレイヤーからすると結構頭に残るもので。

プレイヤーの心をぶっ刺しに来るという意味では成功したと言えるでしょう。


ちなみにミスマッチ感という点で言えば本作のBGMもそうで、イベントシーンもマップシーンも戦闘シーンも、基本的にビートが早くてテンションが高い曲ばかり。

戦略シミュレーションというジャンルの割には、かなりノリノリになりながらプレイできます。



◆『Dept. Heaven Episodes』


スティングのオリジナルタイトルは、「Dept. Heaven Episodes」というシリーズになっています。

それぞれ独立した作品になっており、ゲームシステムが全然違うものになっているのですが、いずれもヘブンズゲートという場所から行ける「天界」で繋がっているという設定になっており、他作品のアイテムが登場したりしています。


本作はPSPでリメイクされた際、ボイスが付いただけでなくこのシリーズを意識した追加要素があり、別作品のキャラを意識したと思われる隠しボスが登場するなど、よりシリーズの繋がりが見えるようになっています。


また、D.H.Eだけでなく本作自体の直接の続編もユニオンシリーズとして発売されています。

本作の前日譚に当たる帝国の動乱を描いた「ブレイズ・ユニオン」、

世界観は一新しつつゲームシステムを引き継いでいる「グロリア・ユニオン」などがありますね。


こうした世界観の広げ方って、ちょっと憧れる。

世界観を統一しつつも、それに縛られずにまったく新しいことに挑戦できるって、ゲームプランナーにとってははなかなか面白そうな環境だと思うのです。

実際は無茶苦茶大変らしいですが。

実際にスティングに行った友人談。


なんにせよ、本作のように一癖あるシステムを採用したゲームは、一度味わってみないと魅力が伝わらないものです。

Switchにも移植されましたし、歯応えのあるシミュレーションRPGをお探しならばおススメのタイトルです。


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