025:テイルズ オブ ヴェスペリア
【タイトル】
テイルズ オブ ヴェスペリア
【ハード】
Xbox 360
【販売/開発】
バンダイナムコゲームス/ナムコ・テイルズスタジオ
【発売日】
2008年8月7日
◆『ちょっぴり大人向けなテイルズ』
現在の日本だと任天堂とソニーが2大ハードメーカーとして知られていますが、もう一つ。
マイクロソフトのXboxシリーズも、日本で流通しているハードです。
まぁ、なかなか日本では苦戦してるわけですが。
とはいえ、日本に存在してる以上はソフトメーカーとしても選択肢に入れてるわけで。
Xbox360が出た頃に、ナムコのテイルズスタジオは一つの挑戦としてこのハードに向けて一本のゲームを作ることになりました。
「テイルズ オブ ヴェスペリア」は、現在ではテイルズオブシリーズの中でも屈指の人気を誇る作品の一つ。
このソフトが最初にXbox360で出たこと、案外忘れてる人も多いんじゃないでしょうか。
ぶっちゃけ、私がXbox360を買ったのはこれを遊ぶためでした、はい。
テイルズオブシリーズにめちゃめちゃハマってたんですよ、高校~大学生当時。
10周年記念作品だった前作「テイルズ オブ ジ アビス」の次の
Xbox360向けということ、シリーズが10周年を迎えてファンの年齢層が上がってきたことを受けて、今作はシリーズで初めて成人の主人公が登場することになりました。
これまでの少年少女の成長物語という側面はヒロインのエステルやカロルといった仲間達が担うことになり、少し擦れたところがある兄貴分キャラの主人公ユーリは、彼らの手助けをしつつ自分の行く道を見定めていくという物語になっています。
現在では、シリーズの人気投票でも常にトップクラスの人気を誇るほどの人気を得るに至ったユーリ。
物語の展開はもちろんのこと、本作が発売された時代の中でのファンが求めるものを的確にとらえたキャラクターと言えるでしょう。
対照的な存在となる親友フレンの存在もあって、色んな意味で魅力的な存在になりました。
2人の友情に熱く燃える男性諸君も、厚く萌える淑女の皆さんもいたわけですわ、はい。
◆『「正義」を貫くRPG』
テイルズオブシリーズはほとんどの作品で「勧善懲悪」を描かない、とされています。
悪役達にもそれぞれが譲れぬ信念を掲げて戦っているというのが特徴でもありました。
もちろん今作でも悪役達にはそれぞれに掲げてるものがあるのですが、本作はあえて「勧善懲悪」のテイストを取り入れています。
非道な相手をビシッと成敗、というお話はやはり気持ちのいいものです。
が、そこで一捻り加えてるのが本作。
ここで生きてくるのが成人主人公というファクターです。
本作の物語は、巨大な帝国の帝都の下町から始まります。
ここの生まれであるユーリは騎士になるも、騎士団や貴族の腐敗ぶりに幻滅して退団。
下町で用心棒まがいのことをして暮らしています。
そんな彼は、下町で起こった盗難事件を追ううちに、逆に投獄されてしまうことに。
軽々と脱出した彼が出会ったのは、やんごとなき身分らしい女性エステル。
彼女の口から聞かされたのは、親友フレンの危機。
ユーリの幼馴染にして親友であるフレンは、生来の生真面目さから今も騎士団に残り、着実に昇進していました。
どうやら彼のことを疎ましく思うのがいる様子。
エステルに請われて共に旅に出ることになったユーリは、様々な出会いを通して帝国の現状を知っていき、己の行く道を探していくことになります。
やがて彼は、帝国の法とは独立した存在「ギルド」に着目し、仲間達と共に新ギルド「
彼が見つけた「正義」と、フレンが目指す「正義」は、時に協力し、時に対立しながら、世界の在り方を変えていく……
といった感じで、今作ではユーリとフレンの対比が物語のキーになっていきます。
ユーリは旅の途中で、帝国の法の陰に隠れた悪事を目の当たりにし、正規の道を行くが故に身動きできないフレンに代わって行動を起こすことが度々あります。
しかし、それでも変わらず悪事に手を染める貴族に対して、物語中盤でユーリは大きな決断をすることになります。
そこで彼が取った手段は、暗殺。
仲間の誰にも告げることなく、一人手を血に染めながら自身の信じた正義を進む覚悟を決めます。
挫折を味わった主人公が、常識にとらわれず、時には非合法な手を使ってでも自分の信じた道を進む。
いわばユーリは、シリーズ初のダークヒーローとして登場したんですね。
正規の道を進んで出世し、帝国を内側から変えていこうとするフレンに対し、非合法なやり方で自身の信じた道を行くユーリの対比は作中でたびたび行われます。
時には正面からぶつかることもあり、時には巨悪に対し連携して立ち向かっていくこともある。
彼ら2人の正義の行きつく先が、本作の見どころでしょう。
そんな彼らを繋ぐ存在となるのが、ヒロインであるエステル。
やんごとなき身分の身ながらユーリの旅に同行する彼女は、出会った人々を献身的に手助けしようとします。
しかし彼女は世界を揺るがす秘密を抱えており、物語中盤からはその身を狙われることになります。
騎士として彼女の保護をしたいフレンと、エステルの意思を尊重して旅に同行させるユーリ。
ここでも2人のスタンスの違いが出てくるわけです。
エステル自身も様々な経験をしながら成長していき、最後までユーリの旅に同行することになります。
本作が発売された2000年代は、日本では真っ当に生きることに息苦しさを感じ、変化を求めていた時代でもありました。
分かりやすい例で言うと、翌年の2009年に政権交代が起きた。
それだけ言えば、是非はともかくとして、どれだけの人が社会に変化を求めていたか分かるかと思います。
そんな時代に生まれたユーリは、そのキャラクター性が時代ともうまく噛み合った。
世間のどうにもならない事態に対してビシッと成敗する必殺仕事人というキャラ性は、意外とすんなり受け入れられました。
さらにフレンやエステル、「
◆『Xbox360版を見て欲しい!』
テイルズオブシリーズは主にプレイステーション系列で発売されてきたシリーズ。
他ハードで出た場合、色んな追加要素が入った完全版がプレステ系で出る、なんて印象は無いでしょうか。
俗にいう完全版商法ですが、このヴェスペリアは少々趣が異なります。
Xbox360版が発売された1年後、2009年にプレイステーション3版が発売。
このPS3版で大きく異なるのは、フレンの加入シーンが大幅に増えていることと、新キャラ・パティが新たに仲間に加わること。
言わば、メインストーリーに大幅に手が加えられているんですね。
これにより、特にフレンの扱いや印象は大きく違ったものになっています。
そもそものXbox360版では、実はフレンはずーっとパーティに参加しないんです。
たびたび登場するので存在感はあるのですが、ユーリとは常に別の道を行き続けていきます。
そして、物語終盤の1シーンだけパーティに参加するという展開になっているんです。
しかしだからこそ、ユーリとフレンの正義の対比という物語が見事に表現されていたんだと思うんです。
PS3版では、(多分最初から想定されていたと思いますが)フレンをもっと使いたいというユーザーの声に応える形でフレン加入のシーンが大幅に増加。
ラストシーンにも同行するようになり、ユーリとの合体秘奥義など見せ場が大幅に増えました。
それに伴い、Xbox360版の物語の中でフレンが行っていた行動のいくつかは、フレンの部下が担っているんです。
これによって、物語の印象はだいぶ変わったな、と思うのが正直な感想です。
船で突撃のシーンなんかは顕著ですね。
フレンがユーリに同行してるので、部下が臨時の隊長として激励を飛ばしたりしてます。
この部下の行動も、PS3版だと若干無理やり感があるんですよね。
本作の物語は3部構成になっているんですが、第2部ラストでこの部下がやってくれるわけですよ。
衝撃の第2部ラストですが、PS3版だとそれよりも前にユーリに対する怒りを見せるシーンが大幅に追加されて随分ひねくれた感じになっちゃって…
Xbox360版だとストレートかつ衝動的な部分が見える分、まだちょっと彼女の行動が理解がしやすいかと……あんま変わんないか。
現在ではリマスター版なんかがありますが、ベースとなっているのはPS3版。
Xbox360版の物語を見るのはちょっと貴重になりつつあります。
ただ、正義の対比というテーマで見るとこっちの方が合ってるなぁと個人的には思います。
見たことない人は、ぜひ見てみて欲しいです。
あぁ、物語の話ばっかりになってしまった。
本作はゲームとしての遊びやすさで見てもお勧めですよ。
チュートリアルが非常に丁寧ですし、戦闘中に自由に動き回れるフリーランがやりやすくなって、3Dテイルズの入門にも向いています。
条件が揃えば敵を即死させられるフェイタルストライク、任意でパワーアップや秘奥義を発動できるオーバーリミッツなど快適なシステムが増加。
育成システムはそれまでのシリーズにあった複雑な仕組みをあえて排しているので、サクサク遊べます。
ボス戦にはギミックを使ったシークレットミッションなんかもあって、やり応えもなかなか。
テイルズを初めて遊ぶ人にもお勧めです。
前日譚を描いたアニメ映画もよろしく。
◆シリーズリンク
エターニアのレビューはこちら:
https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054902555010/episodes/1177354054910224563
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