012:街コロマッチ

【タイトル】

街コロマッチ

【ハード】

Android・iOS

【配信/開発】

エイミング/グランディング

【配信日】

2016年8月8日(2017年6月14日サービス終了)



◆『スマホゲーの認識を変えてくれたゲーム』


スマホで遊ぶゲームっていうと、短時間でできて、ガチャがあって、課金しないと強くなれない。

そんな認識でいませんか?

えぇ、私も大体その認識です。

スマホゲーで遊ぶ人の生活スタイルに合わせて、そういうのを前提にゲームを組んでるケースがほとんです。


もちろん、そう思わせないために方々色々工夫しているわけですが。

パズドラやモンストの大ヒットによって、スマホ向けの基本無料課金制のゲーム、いわゆるソーシャルゲームというものが一気に普及しだした時代。

課金しまくらなきゃ楽しめないなんてゲームじゃねぇとか言ってた人、世の中にいませんでした?

私もその一人でした。

当時はまだ、ソシャゲに対して抵抗感はかなりありましたね。

まぁ、今も全く無いと言えば嘘になるし、滅多なことでは課金はしませんが。

普通にスマホでゲームをする程度にはなりました。


たぶん、今回紹介するゲーム「街コロマッチ」のおかげです。

ソシャゲらしいアレンジをされながら、ソシャゲらしさがどこか薄いと感じてたゲームでした。



◆『名作アナログゲームを大胆アレンジ!』


まず、「街コロ」というアナログゲームを御存じでしょうか?

グランディングが制作した、カードとサイコロを使って遊ぶ、最大4人まで遊べるゲームです。

プレイヤーは自分の町を発展させていくことが使命で、施設が描かれたカードを集めていきます。

施設カードにはそれぞれ数字が書かれており、サイコロを振って出た目に応じてカードの効果が発揮され、コインが手に入っていきます。

コインを払って施設カードをどんどん購入し、サイコロによる効果をどんどん増やしていきます。

同じ数字のカードを揃えて一点狙いで一気に稼ぐのを狙うか、いろんな数字のカードを集めて少しでも当たりの目を増やすか。

そういった、サイコロ運に対してどんなカードを手に入れるかという駆け引きがあります。

そして、ランドマークと呼ばれる施設をすべて買った人が勝利。


カードをたくさん並べることになるので、広いテーブルで遊ぶことを推奨します。

あと、サイコロ運がかなり重要なゲームなので家族でワイワイ遊ぶことに向いています。


このゲームは、アナログゲームのアカデミー賞ともいえる「ドイツ年間ゲーム大賞」に、日本発のゲームとして初めてノミネートされたゲームでもあります。

今でもちょいちょいと続編が登場しているので、アナログゲームが好きな方は知ってる人がいるかもしれません。


この「街コロ」のスマホアプリ版が一度、2014年に配信されていたんですが、非常に遊びにくかったらしくすぐ終了してしまったようで。

(私は存在すら知らなかったです)



しかし、その後登場したこの「街コロマッチ」はかなり大胆な方針を取っています。

街コロ原作者の菅沼正夫氏が自らゲームデザインを手掛けており、ガチャなどのソシャゲ要素を取り入れながらスマホでも遊べるように再構成されたものになっているのです。

街コロをベースにしつつ、ほぼ別物と思えるくらいの変貌。

しかし、ゲームとしては確かに街コロというゲームになっています。


原作のアナログゲームでは、全員共通の山札(?)というか、カードの山から施設カードを選んで買っていき、自分の手元にカードを並べることになります。

サイコロを振ると、出た目によって自分の手元や相手の手元にあるカードが発揮され、コインが手に入ります。

銀行にお金を払って業者に頼み、自分の街を作っていくという表現なんだそうで。


対して街コロマッチでは、まず自分用にカードデッキを組んで勝負に挑むことになります。

施設カードで自分の街用デッキを作るのです。確か10枚以上70枚以内だったかな?

そしてバトルでは、手札から施設カードを選んで、プレイヤー共通のフィールドに施設を建設していくというもの。

サイコロを振った時は、フィールドにある施設の効果が発揮されるというルールになっているのです。

一つの街を舞台に、それぞれが建物を建てていき、街の有力者に成り上がるという表現に近いでしょうかね。


言葉に起こしてみると、全然違うゲームのように感じるでしょう。

しかし、サイコロの目に応じた施設カードの効果が出る、その効果を増やすために自分の施設を増やしていく、というゲーム性は変わってないのです。

サイコロ運に非常に左右されるという点も同じ。

スマホの対戦ゲーとしてはびっくりするほど、サイコロ運の要素が強いゲームです。


かといって、運だけに頼るようなゲームではありません。

ソシャゲとして成立させるために色々なアレンジが加わっていました。

運を実力でねじ伏せるために、デッキ編集が重要になるのです。


プレイヤーは手札にある施設カードを、コインを支払ってフィールドに建設することになります。

レアリティの高いカードは建設費も高いものが多いので、レアリティが低いカードや効果の弱いカードというのも有用性があったりするのです。

シイタケ畑とか、レアリティA(他のゲームでいうと☆2かな?MAX☆5だとして)のくせに数を揃えると異常に強かったりしたからなぁ……


あと、ソシャゲユーザーに対して訴求するためか、施設だけでなくキャラクターカードなんてのもありました。

いわゆる魔法カードみたいな扱いで、1ターンにつき1枚だけ使用していろんな効果を発揮するというもの。

これも低レアの中に強力なものが紛れていましたね。

特定の属性の施設を1ターンだけ効果アップするというピンポイントな能力ですが、それに適したデッキならば大逆転も可能という。


こうした、低レアカードでも戦略次第で使えるというのは現在のゲームでもたまに見かけますが、当時としてはかなり珍しい部類だったと思います。

毎週のように新しいカードが出て、イベントがあって、その都度課金してガチャ回して新しいカードを手に入れないと付いてけない。

そんなゲームばっかりの時代でしたからね。


もちろん、レア度の高いカードは相応の効果もあります。

相手から直接コインをごっそり奪えたりとか。隣接エリアを使用禁止にするとか。

あと、原作のアナログゲーム版にはない要素として上書きというものがあり、相手の施設の上に自分の施設を上書き出来るという技があります。

相手のカードを消滅させつつ自分の施設を増やせる強力な技ですが、この場合は自分の施設の建設費+相手施設の建設費の倍額というコインが必要になってしまうんです。高い!

建設費が高いものは上書きされにくいという利点もあるわけです。


数字や建設費の大小もバランスよく集めるか、それとも強力なもので一点突破を狙うか。

どんなキャラクターカードを入れていくのか。

プレイヤーはデッキ編成で大いに悩むことになります。

原作ゲームとは考えるタイミングが違うだけで、ちゃんと「どんな施設カードを使うか」考える要素はあるわけです。


まぁ、結局ガチャでカードを手に入れるわけですが。

遊戯王とかのトレーディングカードみたいなものと思えば、そういうのは自然なのかなぁ……


ただ、いつもいつも強力なカードが追加更新される、というわけではなかったです。

いろんな観光地とコラボしてご当地施設カードとかが登場してましたが、効果がすでにあるカードと同じだったり。

どちらかというとコレクション要素として出てた感じはしましたね。


あと、集めるカードが施設ということもあって、ホーム画面にある街を自分の持っている施設でコーディネート出来る要素もありました。

街に行こうよ街コロマッチ。

人によっては、むしろこれに時間を掛けていた人がいたんじゃないでしょうか。



◆『時代にピンポイントでズレてしまったゲーム』


ゲームとしては非常に面白いゲームだったんですが、残念ながら1年と持たずにサービスが終了してしまいました。

スマホゲーとして見ると相性が悪かった面もあった点は否定できません。


本作は5分で決着がつくゲームと謳っていましたが、実際はサイコロ運によって2分でつく時もあれば20分かかる場合もありました。

さすがに20分は長いわな……社会人なら休憩時間終わっちまうぜ。

プレイヤー同士では対戦の中断が出来ないため、気軽に一勝負と行きにくかったところもあります。

ちなみに試合途中で抜けた場合はCPUが代打ちします。


せめてPC版があればなぁ……

今思えば、家でじっくり楽しむタイプのゲームだったのかもしれません。

ガチャの金額もちょっと高かったしねぇ……


あと、このゲームのプロモーション!

ソシャゲにはよくある、事前登録が一定数に達すると特別なカードがもらえるというやつ!

本作でもやってましたが、特典内容は「吉崎観音先生描き下ろしの"HIKAKIN"カードがもらえる」というものでした。


あの「ケロロ軍曹」や「けものフレンズ」などでお馴染みの吉崎観音先生がですよ!

あの日本のトップYouTuberであるHIKAKINさんのキャラクターカードを描いてたんですよ!

今聞くと、とんでもないことやってたと思いませんか!?


ところがこれが逆風になってしまっていました。

当時はまだYouTuberに対する風当たりは強かった時代だったんです。

YouTuberがゲーム実況をやったりするのも、売名じゃねって批判されることの方が多かった時代です。

私の周囲でも「なぜスマホゲーでHIKAKINなんか使ったしwwww」っていう感じでしたよ。

(HIKAKINさんをディスる気はありません。HIKAKINさんは真面目にプロモーション動画に参加していました)

ともあれ、最初にズッコケた感は否めません。


世の中そんな状態だったのに、1年後くらいには他のゲームでYouTuberさんとのコラボとかPV出演とか先行体験プレイとかが当たり前になっていくんですから、時代は分からんものです。

世間を読み取るというのは、本当に難しい……


スマホゲーって常に新しいものがどんどん出てくるから、スタートダッシュでしくじると立て直すことが難しいんです。

あっという間に埋もれて、世間に忘れ去られてそのまま消えてしまうゲームのなんと多いことか。


街コロマッチはまだ恵まれていた方かもしれません。

「新米婦警キルコさん」などを描いてた平方昌宏先生による漫画版があったこと。

あかつきごもく先生をはじめ、いろんな方がコラボカードを描いていたこと。

色々と手は打っていたようです。

電通が制作委員会に関わっていたので、そうした動きに働きかけられたようですね。


しかし、初動の遅れは結局取り返せなかったようです。

遊んでいる人からの評価はあるものの、そもそもプレイヤー人口が結局伸びず。

私もそこそこ遊んでましたが、なかなかマッチングせずCPUとばっかり戦ってましたね。

その分、マッチングできた時はお互い貴重な機会だと思って、存分に戦ってましたが。

そんなこんなで少数のプレイヤーに惜しまれながら、約10カ月でサービスは幕を閉じました。




……まぁ、一番の敗因は、配信時期が「ポケモンGO」と駄々被りしたせいでしょうけど。

なんともまぁ、時代の流れにピンポイントで乗り損ねてしまったゲームという印象が残ってます。





ところが、この街コロマッチはやはり遊んでいた人からは評価が高かったんだと思うような出来事がありまして。


サービス終了から結構経った後。

なんの気なしにTwitterで懐かしいワードで検索して、どんな話題が出るのかなって試したことがあって。

その時に、街コロマッチも入れてみたんですよ。


そしたら、とある方が「すでに終わっちゃったけど面白かったゲーム」として街コロマッチの話題を上げていて。

それに結構な数のリツイートや返信が付いていたんですね。

そのツイートの日付を見てみると、サービスが終了してから半年以上過ぎた頃のものでした。



本当に面白いものは、ちゃんとユーザーの心に残っているんだ、と。

そんなことを考えながら、私は黙ってリツイートを押したのでした。

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