001:星のカービィ スーパーデラックス

【タイトル】

星のカービィ スーパーデラックス

【ハード】

スーパーファミコン

【販売/開発】

任天堂/HAL研究所

【発売日】

1996年3月21日


◆『カービィちゃん!カービィちゃん!』

記念すべき最初のレビュー、何にするか迷いました。

ゲーマーとして「最高のゲーム」とは何かと言われても大いに迷いますよ。

名作というものはたくさんあるし、迷作と呼ばれるものにも忘れられない思い出は数あるし。

それぞれ違う魅力を持ってるんだからナンバーワンなんか簡単には決められない。

ただ、私がいちクリエイターとして「最高のゲーム」とは何かと言われたら、まずこれを挙げます。

もし、私がゲーム関係の学校の講師だったら、絶対にプレイしとけと言うであろうゲームです。


◆『最高傑作』と名高き大ボリューム

通称、SDX。

星のカービィシリーズはたくさん出ていますが、本編となる2Dアクションという点では4作目。

スーパーファミコン向けのソフトとしては中~後期に当たるアクションゲーム。

そして、シリーズ初のオムニバス作品という異例のスタイルを取った作品でした。


カービィのことをご存じない人は少ないと思いますが、簡単に言うとピンクの丸い奴です。悩みのない奴です。

カービィを操作して、ふわふわ飛んだり吸い込んだり能力をコピーしたりしながら、ゴールを目指していくというゲームです。

ジャンプと吸い込み、それさえ覚えればすぐに遊べる。

あとは吸い込んだ後にしゃがんで飲み込めば能力をコピーできるということを覚えておけば、いろんな能力で冒険が楽しめる。

分かりやすい。あぁ、分かりやすい。


そんなカービィですが、シリーズの最高傑作はどれかと言われたらまず話題に上がるであろう本作。

私も一押しです。


前述通り、本作はオムニバス形式という珍しいスタイルを取っています。

基本操作は一緒ながら、ルールやゲーム性が異なる6つ+αのゲームが収録されています。


初代カービィのリメイクにあたる、オーソドックスな「はるかぜとともに」

エリアマップを導入し、好きな能力を使いまくれるコピー部屋が登場する「白き翼ダイナブレイド」

食べ物拾って1位を目指す、レースとタイムアタックの「激突!グルメレース」←BGMが最高。

広大な1マップの迷宮で、全60個のお宝を探す「洞窟大作戦」

制限時間が導入され、キャラクターの台詞がシリアス感(?)を盛り上げる「メタナイトの逆襲」

いつでも能力変更が可能、後のシリーズにも影響する壮大な物語「銀河にねがいを」


以上6つのゲームのほか、すべてのボスと連戦する隠しモードや、2人で遊べるサブゲームなんかもあります。


◆『桜井カービィ』

このゲームのディレクターは、カービィの生みの親にして、後に「スマブラ」シリーズを手掛ける桜井政博さん。

実は桜井氏自らが指揮を執ったカービィ作品は数少なく、2Dアクションというジャンルでは実はこれが最後。

(桜井氏が関わってる作品は他にもあるが、ディレクションしてるのは、あとは「カービィのエアライド」くらい)


えぇ、私、尊敬するクリエイターは誰かと言われたら真っ先に挙げるのが桜井さんなんです。

桜井氏のゲームを遊んだら、まず最初にデータ消去を選んで「後悔しませんね?」のメッセージを確認するくらいにはサークライ信者と言えるでしょう。

ちなみにその「後悔しませんね?」が初登場したのも本作。


そんな桜井節とでも言える要素が詰め込まれてるのが本作。

ポーズ画面で見れるコピー能力のイカした説明文がイイ感じ。

はねをひろげて ごきげんかい?


テキストのセンスだけでなく。

何より、これでもかってくらい色んなタイプの遊びが詰め込まれてるのが桜井ゲーの特徴だと思ってます。


前述の6つのゲームもそうです。

カービィの続編を作ってほしい→いろんな案が出てきた→全部やっちゃおう。

いや、本当にそんなノリかどうかは知りませんが。


初代のように単純にゴールを目指してボスを倒していくもの。

メトロイドや悪魔城ドラキュラのように探索の要素が入ったもの。

グルメレースなんてアクションレースですからね、変わり種といえば変わり種。

それぞれ全然違うゲーム性になるならば、小さくオムニバスにして、まとめて一本に凝縮!

…そんな発想が出てくること自体がまず凄いと思います。


カービィのコピー能力も、かなり豊富かつ整理されています。

例えば過去作では炎系の能力で「バーニング」と「ファイア」がありましたが、本作ではファイアに統合。

バーニングは「ファイア」の技の一種という形になりました。


そう、スーパーデラックスになったら、各コピー能力にコマンド技なんてものが登場したんです。

どれも上+攻撃みたいな簡単操作で繰り出せるもので、遊ぶ分にはとても気持ちがイイ。

連打でソードをバシバシ突いたり、ビームを溜め打ちしたり、カッターで密接攻撃すればメッタ切りを出し。

中にはボタンの強弱を使い分けるファイターみたいな上級者向けの能力というのもあるので、アクションやり込み派もニッコリ。

当時はストリートファイターⅡなどもとっくに家庭用に普及してましたしね。

格ゲーほど難しいコマンドはない、けど多彩な技が繰り出せるというのはアクセントとして非常に魅力的でした。


さらに本作では2人同時プレイが出来るようになりました。

能力を元にヘルパーというお助けキャラを呼び出し、2人で遊べるようになったんです。

もちろん、1Pのカービィと別の能力を使うこともできる。

私も弟と一緒にやったものです。えぇ、大抵は私が1Pでした。

1Pがやられるとミスになるので、弟に任せられてなかったんですよ、当時。

ただ、2人プレイのみ出来るアクションというのもありますね。口うつしとか。


あと、初心者の部屋というチュートリアルも充実しています。

愉快なカービィ劇場と、実際の操作できるパートを以て、楽しくゲームが学べます。

これが全ゲームにある上、うっかり「いいえ」を選んでも簡略版が見れるのでゲームに不慣れなお父さんお母さんも安心。


多彩なルールのゲーム、多彩な技がある多彩なコピー能力、2人プレイのみ出来る多彩な技。

もう、多彩すぎる!

そして、これらの要素が絡み合っているのに、どのゲームにもまったく破綻が見られない。


6つ+αのゲームは、そのすべてがそれぞれに魅力を抱えていて面白いんですよ。

コピー能力も面白い新能力が増えました。ジェットとかヨーヨーとか。


とにかく飽きが来ない作りになっていて、最後まで走りきりたくなります。

遊ぶ側としては大満足なんですよ!




……と、ここまでのはゲーム好きなら結構な人が持つ感想でしょう。

なので、ちょっとクリエイター目線でも見てみたいと思います。

夢中になって遊んでから十数年後、見直してみるとこのゲームの凄さに改めて感じ入るものがありました。



◆『後悔しませんね?』

この「飽きが来ない作り」というものは、本当に奇跡的なバランスで成り立っていると思います。


コピー能力ひとつとっても、ゲーム内に登場する場面や順番が非常に深く考えて作られている。

「はるかぜとともに」はそもそもコピー能力が無かった初代のリメイク。

コピー能力ナシでも十分遊べるし、登場する能力も比較的簡単操作のものだけ出てくる。

それが次の「ダイナブレイド」になったら、この時点でほぼすべての能力に触れることが可能になる。

ゲームではまだ序盤なのに、結構やりたい放題出来るんですよ、ダイナブレイド。


そもそもカービィのコピー能力が初登場した「夢の泉の物語」でさえ、スタッフに言わせれば「何本ものゲームを無理やり詰め込んだようなもの」らしいです。

狂気の産物らしいです。

近接攻撃のソードと遠距離攻撃のビームひとつとっても、能力に必要なパラメータやらステージのバランスやら謎解きギミックやら、いろんな面を考慮しなくてはならないのですから。

そういうのが何十個と出てくるわけですよ。

作る側からすれば、そりゃ狂気だっていうわけですよ。


今作では更にコマンド技に2人プレイなんてものが増えたわけですから。

要素だけで見るともう、多彩すぎる!

1人でデバッグしろなんて言われたら絶対剥げる!(1人でデバッグなんて無謀は早々無いと思いますが)

クリエイター目線がついたことで、改めてコピー能力というものがいかにトンデモ産物なのかというのが分かります。


ただ、じゃあそのコピー能力を存分に楽しめる2つ目のゲーム「ダイナブレイド」でこのゲームのすべてか、と言われたらそうではなく。

コピー能力を使ったテクニックを駆使して、タイムアタックや謎解きなんかが後のゲームで待っています。

カービィのコピー能力って、お気に入りの能力をついつい長く使ってしまいがち。

しかし本作はオムニバス形式でゲームが変わることでプレイヤーの気持ちがリセットされ、自然と別の能力に手を出しやすくなっているのです。

各ゲームで最初に出てくる敵の能力がすべて違うのも、そういうことなんでしょう。

気が付けばコピー能力を捨てて切り替えることを覚え、それを活かしてお宝を探し始めている。

このゲームを遊んだ人なら、そんな経験があるのではないでしょうか。


本作はプレイヤーへの導線という点で非常に優れていると思います。

最初に初代リメイクで基本に慣れさせ、ダイナブレイドでほぼ全部のコピーに触れ。

グルメレースでちょいと箸休め…に見せかけて操作テクニックを磨かせ。

洞窟大作戦で探索に慣れさせ、メタナイトの逆襲でスピーディなものへ行ってから、銀河にねがいをという集大成へ。

1個1個は別個のゲームに見せかけて、ちゃんと6つで一本のゲームなんだと思わせられます。


もちろん、ひねくれて順番を無視して遊ぶことも出来るわけですが。

ちゃんと難易度表示してるんだから、やるからには自己責任でねって感じになっている。


ユーザーが最初から最後まで楽しんでもらえるように、見えない糸を綺麗に敷いていく。

言うは易く行うは難し。

桜井氏をはじめ、スタッフの方々は本当に細かいところまで「面白いものとはなんぞや」を考えていったんではないかと思います。

ひょっとしたら開発陣の間でも、「それで満足してもらえる?後悔しませんね?」とか言い合っていたのかもしれません。

いや、全部想像ですが。

私はものの見事に、このゲームの「面白さの導き」に引っかかったんだなと思うと悔しくてたまりません。

ゲーム開発に教科書というものがあるのなら、ぜひ載せてほしい1作です。


最近、面白いゲームというのはどこかしら「クリエイター陣の狂気が感じられるもの」と思うようになりました。

面白いものを作るのって、狂気にも似た熱意がいるもんなんだと思います。

発売から既に20年以上経っているにも関わらず、私の中でこのゲームが「最高のゲーム」だと思うのも、この熱意が伝わったからなのでは。

そう思うくらい、このゲームは本当に隅から隅まで楽しみ尽くしたくなるゲームです。


あぁ、またやりたくなってきました。

久々に起動しようかしら。








ドンッ!


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……このゲーム、詰め込みすぎて容量がパンパンらしく、セーブデータが飛びやすいのよね。

おかげで攻略率100%の数値を見るために3週くらいしました。

それでもめげずにやるくらい、ハマっていたんですが。



今だと3DSでリメイク版「星のカービィ ウルトラスーパーデラックス」なんてのもありますね。

こちらはデータが飛びやすいなんてことはないので、新規で遊ぶならおススメです。

新ゲームが増えてるので既プレイ組にもぜひ。

あとはSwitchのニンテンドーオンラインでもSFCのラインナップに入ってます。





何?まだ遊ぶ気にならない?





よろしいですか?




本当によろしいですか?





後悔しませんね?


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