相手になりたい 第3話
「えっ。じゃあなにやります?好きなボードゲームってなんですか?」
「あっ。これカワイイと思ってたやつ。ねぇ、これやろうよ」
「えー。それサークル室にあるじゃん。空いてるときサークルでやろうよ」
「じゃあ。これは?リトルタウンビルダーズ」
「この前やったばっかじゃない。お気に入り過ぎない?」
「ちょっと。ふたりとも
どうしてこうなったんだろう。確かに相席システムで相手を待っていたのは間違いないのだけれど。こんな風にきゃぴきゃぴとした3人の女子大生たちに囲まれながらボードゲームをやることになろうなんて思ってもいなかった。
「ねえ。小室さん。ほんと困っちゃいますよね」
そう話しかけてくれているのはカタカナでミツルと書かれた名札を付けているしっかり者の印象を受ける女の子だ。
困っちゃうのは確かだけど、そうやって気を使われすぎてもこちらも困ってしまう。できれば対等でいられればと思うのだけれど。そうも言っていられないくらいに向こうは元気だ。
セカンドダイスでのんびりとコーヒーを啜りながら待っていたら、彼女たちがわいわいと楽しそうにお店のドアをなれた手付きで開け、入ってきたと思った。なにやら先程の
そんなことを思っていたら智也君と話していた子が受付をそこそこにこちらを見て笑顔で微笑んだ。多分、智也くんから敬子の話を聞いたのだろう。
『よかったらご一緒しませんか?』
そう声をかけられた時、ドキッとしたのは間違いない。こんな若い子と会話はする機会なんて随分と減ってしまってどう接していいかわからなかった。
ほんのつい最近までそっち側だったのだけれど。と思わなくもない。こんなに落ち着いてしまったのはいつからだろうとも思う。やっぱり結婚は大きかった気もする。もちろん一緒に遊んでくれるのならば大歓迎だし、断る理由なんてもちろんない。
それからわいわいと自己紹介も適度に終わらせてボードゲーム選びが始まったのだけれど。これがまたひとつの難関だったのだ。
「簡単なのがいいわね」
どんなボードゲームがいいと問われても正直困る。やったことあるものなんてほとんどなくて、そのほとんどがここで店長に教わったものだけだ。家にたくさんあるのにと思うけれどあれは旦那のものなのだから仕方がない。
「簡単なのかぁ。チヒロおすすめってある?」
ミツルがチヒロと呼ばれた智也君と仲がいいであろう子に聞く。彼女が引っ張ってここに来ているのだろう。リーダー格らしくいろいろと場を仕切っているように思えた。
「簡単なのだと
全部聞いたことがやったことはない。全部家にあるものだ。しかし、知ったのは多分ここに通い始めてから。他のテーブルで遊んでいるのを目にしただけだ。
「小室さんどれか知ってるのあります?」
ハルとカタカナで名札に名前が書かれた子が丁寧に箱をこちらまで持ってきて見せてくれた。元気で気遣いもできる。人懐っこさもあってきっと人気なんだろうなと思える。
「全部面白そうなのだけどじっくりやるタイプのものがいいかしらね」
ワガママなことを言っていると自分のことながら思う。しかしボードゲームの腕を上達させるという目的がある以上。簡単ながらじっくり考えるタイプのゲームが好ましいのだ。
「あー。じゃあ、あれがいいかも。これ。ルール自体は簡単だし、考えることも多い。手先の器用をも必要だし、ボードゲームの魅力がたくさんつまってるんですよ」
チヒロがすぐさまセカンドダイスの中を探し始める。常連なのだろうが流石にすべてのボードゲームを把握しているわけじゃないのか。智也君に場所を訪ねたりもしている。
「あったよー。ハコオンナ。これ見るからに怖いでしょ」
笑顔でチヒロが持ってきた黒くて先ほど提案された箱よりはちょっと大きいその箱の表には少女が手を伸ばしているホラーテイストな箱で、『ここから出られない』なんて物騒な文字が見える。赤く血で書いたような題名も含めて、ちょっとだけだけど尻込みしてしまった。
「なにそれ。面白そう」
「あー。なんか聞いたことあるかもー」
チヒロと同じノリなのか、嬉しそうにする残りのふたりにもう断れる雰囲気でもないし、あまりわがままも言いたくないと覚悟を決めた。
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