所詮は遊び 第9話
「じゃあ。置いてくよー。最初は資源なくて建物建てられないから、どこに置くかだよね」
タウンボードを見てみると一度に資源を3つ獲得できる場所は4箇所。山・森・湖。森3つ。森・湖2つ。森2つ・湖。の組み合わせだ。ワーカープレイスメントは慣れてくれば建物を建てる順番とかを見通して最初に置く場所を決めることが出来ると先輩が言っていたのだけど、あいにくだが
「よくわからないから魚たくさんもらうねー」
「これがご飯なんだよねー。たくさん集めなきゃ」
ワーカーコマは3つ。つまり1ラウンド3回手番が回ってくる。その中で食料を3つ確保しなくてはならないので、たしかに正しい選択のようにも見える。それに一番手軽に建てれれる建物である畑は木材ひとつで建てれれる。なるほど春っぽいなと思う。
正攻法と言うか、真っ直ぐにゲームに向き合っている感じがする。ゲームの裏で動くことはしない。
「じゃあ、全部もらえるここかなぁ」
そして
「目標カード達成するの忘れちゃいそう」
千尋の言葉でその存在を思い出す。そう言えばそんなものがあった。とは言っても3つの資源を獲得する以外の方法を最初に取る必要はなさそうなので、とりあえず残った森2つ・湖の組み合わせの場所に置く。
ちらっと自分の目標カードをを確認する。どんなのが書かれているのかドキドキだ。「建築コストとして石を3つ以上必要とする建物を建てる」「魚、麦、木、石をそれぞれ2つ以上持つ」「同時に2つ以上の建物から効果として勝利点を得る」の3枚だ。
わかるようなわからないよな。春じゃないけれどやっていけば分かるのだろうか。とりあえず一番目指しやすいのは「建築コストとして石を3つ以上必要とする建物を建てる」だろうか。「魚、麦、木、石をそれぞれ2つ以上持つ」は狙うというより達成できそうなタイミングを見計らっていったほうがよさそうだし、「同時に2つ以上の建物から効果として勝利点を得る」はもっとゲームが進んでから狙ったほうが良さそうだ。
石を使った建物を使って勝利点を稼ぐ方向で進めばいいのか。目標カードなだけあって、ゲーム中の指針が決まるのかもしれない。慣れない身としてはありがたい。
「ふーん。こんなのが目標であるんだね。どうしようか悩むなぁ。書いてある数字が勝利点だよね。2か3って書いてあるけど、これって多いの?少ないの?」
正直分からない。達成しないと勝てないのか。
「みんなおんなじくらいだと思うし、難しく考えなくてもいいかもしれないよ。というか私もわかんないだけだけど」
千尋がまるですべて理解したように説明し始めるからみんなで覗き込んだ瞬間、引いた。絶対、勉強してないとか言いながらテスト前、猛勉強するタイプだよね。
「まあ、私は畑を作るんだけどねー」
先ほど魚と木を獲得した春がその木を使って畑を作り始めた。ビルドと書かれたマスにワーカーコマを置いて、5枚積まれた畑のタイルを手にっ取った。
「でも、どこに作っていいか分からないね」
そうなのだ。置けばその場所は他のプレイヤーに使われてしまう。建てた建物には家の形をしたコマを置く。各自選んだ色があってその色の家コマだ。自分以外の建物を使う時にはその建物を建てたプレイヤーに1金払わなければならないらしく、いい場所に置いて使ってもらいたい気持ちもあるし、その場所に自分のワーカーコマを置きたい気持ちも当然ある。
「まあ、ここでいいか」
春は自分のワーカーコマが置かれたすぐ隣に畑を建てた。つまりは、次からそのマスに置くと森・湖2つ・畑。の4つの効果を起動できるようになったわけだ。
「これって同じところに置いてもいいんですか?」
初心者だらけのこのテーブルで店長は特にアドバイスもなく最初の説明の後からじっと見ているだけだ。なにか分からないことがあったら聞いてねと言っただけ。
「だれかのコマが置いてあったり、建物が建っているところには置けないよ。つまりは早いものがち。その辺も考えないと美味しいところだけ取られちゃうよ」
言葉では簡単に言ってくれるけど、実際は考えることが多すぎてスッキリと解答は導き出せない。そんな印象を抱いている。そりゃゲームなんだし、みんながどう動くか全部わかったらつまらないので、その感想は間違っていないのだろうし、それを楽しむことが大事なのだとは思う。
サークル室でひどいことを言ってきた先輩の顔が思い浮かぶ。
こうやって悩み考えることがボードゲームをやっているで、スティックスタックのようなゲームがボードゲームじゃないなんてやっぱりどうしても思えなかった。
「ほら。美穂の番だよ」
いつの間にか手番が回ってきていたことに焦る。それを見て3人が笑顔で急かしてきながらも次の一手を見守ってくれている。
この感じそのものがボードゲームで遊んでいることだとそう思う。先輩にみせつけてやりたい。そう思って、やっぱり茶々入れられるイメージしかわかなくて考えるのをやめた。
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