塔の外:全ては自分次第だった。
桜の下で、ここ数ヶ月おもっていたことを言った。
彼を恋人と見られなくなったこと、どうしてそうなったのかわからないこと、けれど彼を傷つけたくなくて、今までのことを忘れるべき過去にはしたくないということ。
「じゃあ、君はどうしたいの?」と彼は訊いた。
「自分は――わからない」
本当にわからなかった。
別れを切り出すのが彼だったのなら、どれほど簡単だっただろうと思う。けれど彼はそうしない。全ては自分次第だった。
この一年、二人でしたことを全部思い出した。同じクラスだった。彼のことは可愛いと思った。酔うと、人に抱きついて手をつなぎに回るのだ。
それは彼なりの友情の示し方なのだと思っていたけれど、なんとなく――ほんとうになんとなく――彼のハグや手つなぎが本来よりもわずかに長い気がした。だから我々は映画に行った。博物館にも、遊園地にも。そして我々はその遊園地にふたたび行った。観覧車に乗って、初めてのキスをするために。
「キスしてもいい?」
彼はうなずいた。
一周年には、指輪を交換した。学生だから安物だったけれど、それで満足だった。
結局、それらは全部ウソだったということになるのか?
最初からすべて決まっていたのか?
その判断は、自分に委ねられていた――少なくとも、自分にはそう思えた。
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