塔の外:自分の番を待っていた。

 かすかな記憶がある。

 おそらく石壁なぞに取り囲まれていなかった世界。どこか違う世界での記憶だ。


 自分は椅子に座っていた。自分の番を待っていたのだ。

 でも、何の?

 塔とは何も関わりのないことはわかる。それはもっと日常的で、現実的で、シリアスなことだった――塔がそうではないというわけではないが。床は明るく、壁は真白く、緊張が空気を漂っていた。あの焦燥感を覚えている。

 何かの面接を待っていた――会社の面接。

 ひるむ。

 塔が夢なら、自分は会場で寝ていることになる。そして自分の名前が呼ばれたときに熟睡していようものなら、内定などもらえるはずもない。その面接のために積み上げてきた努力が水の泡だ。

 クソ。

 目を覚ませないかと、まぶたを閉じてまた開けてみたり、腕と顔をつねってみたり、脳を集中させたりしてみた。すべては徒労に終わった。

 逆に、自分が塔の中で夢を見ているのだろうか?

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