第2話(UFO?)

 学校の校庭は大きく第一グラウンドと第二グラウンドの2つに分かれていて、校舎とりんせつしてある第一グラウンドには、体育館、軟式テニスコート、プール、フィールドホッケーコート、しつとうなどがあり、第一グラウンドから階段を下りた第二グラウンドは、野球やサッカーを行なえる程の広い場所がある。

 俺の座るテニスコート前には体育館があり、先ほどまで二人を見下ろしていた視線を空の方に向けた。


「あっ!あれ、何!凄く光っている?」

 体育館の屋根の向こう側にしんようじゆの林があるが、その中でも特に太く高い木の真上に見慣れない銀色に輝く丸い物体がゆうしていた。


「どこ?どこ?」

「ちょうど、そこの木の上あたり・・・」

 左腕を上げて方向を教えるが、二人が空を見上げながら近寄って来たことに目を取られた瞬間だった。

「消えた!」


 見失った!どこだ?どこだ?


 俺の頭が上下左右と細かく振って探している様子は、鶏がエサをついばみながら歩く感じで自分でも激しく首を動かしていることが分かる。


1分が経過。変化無し。


「クソー!マジで何だよ!?謎の発光体ってUFOだよなぁ?それともタイムマシーンか?いるんだったらUFOの宇宙人さん!早く俺の前に現れろ!」

 鈴谷の怒鳴るように大きな声を荒げる。


 ヤバイ!見失ったままでいれば「嘘付き」呼ばれ、「デマ太郎」とあだ名が付くようになるかもしれないので早く探さねば。


 1分が経過。まだ見つかんねー。


 焦っている俺を見かねてか鳩山がフォローしてくれる。

「僕は信じているよ。それに、UFOは、かくにんこうぶつたいのことで、宇宙人が乗っているえんばんべつものだよ?」


 そっか。未確認なんだから、このまま発見できなくてもいいかな、俺。

「そんなのは知っている。そんなのどうでもいい!UFOって言ったら宇宙人って決まっているぜ!ユウキ君よー見たんだよな?」


「ああ・・・」

 見つけよう(笑)


「クッソー!いつだって、がくてきなもの見たことねーぞ!幽霊も妖怪も!」

 鈴谷がそう言うと、先ほどまでに恥ずかしそうに千夏の事を話していた鳩山が真剣なまなしで質問してきた。


「幽霊といえば、この学校の噂、知っている?自殺した生徒の幽霊が美術室に出るって話?」


 噂?幽霊?自殺?何のこと?


 全く記憶のない話にぜんとしていると鈴谷がすぐに反応した。

「それ!ああ、有名だよな。自殺じゃなくて行方不明!。今も発見されていなくて・・・3年前だったかなぁ?当時の1年生の女子の子が昼休みに消えた話な!」


 先ほどまでUFO話で明るく会話をしていた鈴谷の表情がくもり、おもむろに語り出した。

「この学校、周りにフェンスがあって、ゆいいつ、出られる場所には防犯カメラがあるに、その時間帯、校門から外に出て行った生徒はいなくて、入ってくる不審者もいないって話だったよな?」


「そうそう!結局、今も見つかっていないし、その後の話で、誰もいなくなった美術室の壁からトントンとたたく音がすると、助けを呼ぶ少女の声が聞こえるって言って幽霊になったと言われたね」

 鳩山もその内容に詳しいようだった。


「小6の時に話したらユウクは『中学には行きたくないよー』ってわめいた事あったなぁ?」


「えっ!そんな話、記憶にないけど?」

 俺には本当に記憶はない。そのインパクトのある話があったら必ず覚えているはずで、全くといっていいほど覚えていない。


「あれ!言わなかったっけ?すげー盛り上がた記憶があるぜ!」

「それにテレビでニュースになったし、SNSでもリツイートされって話題になったろ!あの時は周りの大人たちが、すごくあせっていたのを思い出すぜ!」


「ハァ?俺は全然知らないけど」

 世間ではそんな事件があったなんて、俺は知らなかった。今にして思えば、何となくと言う程度であるけれど、そんな内容の話だったような事を聞いていたような、思い出すのも難しい程、記憶の奥深くにちん殿でんするだんぺんをかき混ぜてみたが、いまいち、思い出せない感じである。別に興味がなくてわざと情報をしやだんしていたわけでは無いのだが、結果的に全然知らないと同じであることは間違いない。


「えっ?知らなかった?ユウキってスマホを買ってもらってなかったのかよ?」

「結局、その後、とうこうきよするヤツが、数十人。幽霊、ものなどのを見たと証言する者、数えきれず。今でも何が起こっていたのか、結局、分からないでしゆうそくしたよなァー」


「へぇー」

 うちの親は知ってて人学させたのかよ!

 自分が現在、その場所にいるにもかかわらず、へいぜんとうなずいて見せた。怖さも不思議さもさほど感じられない。

「俺はうれしい。やっと、中学に入学できたし。幽霊を見たくて、これから楽しみだ!」

 まぁ、鈴谷も恐怖はなさそうだ。楽しそう。


「そうだ!思い出したけど、ユウキの前の席の・・・何つー名前だっけ?」

 俺は教室を思い浮かべた瞬間、光よりも早く、光速よりも早いとされるタキオンりゆうよりも早く、すぐに、その子の名前と顔を思い出す。


「・・・・あかひばり」


 俺の前の席にすわる女子は、髪はボサボサで左目に白い眼帯をして、歯にはきようせいそうのブラケットを装着する不気味な感じの女の子である。女子や男子とはほとんど会話をして所を見たことがないし、ある意味、存在感は全く感じられない。


 授業中に小テストが行われる時は、前の席からテスト用紙が配られるが、その子から手渡しされる瞬間に首をあり得ない方向に曲げて、俺の目を見て笑う瞬間がある。最初の頃は、驚きも先に「怖い」と、ものすごく背筋が凍る思いをした覚えがある。今は、その子の顔を見ることを避けてうつむき加減で受け取るようにしているので、その子の表情を見ることは無いのだが、時々、手渡す瞬間にうめき声?とも、言いしれぬ、奇声を発して俺の腹が痛くなる事もあるほど。


 今、思い出して、ものすごく強い恐怖を感じる。マジで、先ほどの話とリンクさせて、ひたいから嫌な汗が出てきてかんを感じた。


「そう、そのがんたいじよ。うわ、気持ちわりー。あれ、間違いなく幽霊だって!近づくと呪われるぜw」

「席が近くじゃなくて、良かったwww」

 俺が一番近くにいるのに良くも平気でいえるな!おい!


 しかし、思い出したくない。凄いけんかんためいきと共に感想を漏らす。


「ホント気持ち悪いなぁー。なんか、半分、死んでいるぽい?」

 背中にも冷たい汗が流れる。ヒィィィィイー。

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