第11話
光の中に入ると、列車221系はそのまま加速する。
「トキオくん、もうすぐだから」
心の準備は出来ていた。
何が起きても、動じない。
≪間もなく、終点に到着します≫
アナウンスが流れ、駅に着く。
まるで、ローカル線の終着駅みたいな感じだ。
駅名は、書かれていない。
「行くよ、トキオくん」
しぐれの後を着いて行く。
改札口を出ると、すぐドアがあり、しぐれは目で合図をする。
一緒に来いということか・・・
しぐれがドアを開けると、僕は目を疑った。
そこには・・・
僕としぐれが、いた。
えっ・・・どういうことだろう?
「ようこそ、ジオラマのトキオくん、そして、案内ありがとう、ジオラマのしぐれ」
目の前のもうひとりの僕が、話だす。
「ようこそ、ジオラマのトキオくん。私は本物のしぐれ。ジオラマのしぐれが世話になったね」
部屋にいた、もうひとりのしぐれが話をする。
「じゃあ、トキオくん。詳しくは、そっちの本物のトキオくんから、訊いて」
そういうと、一緒に来たしぐれは、そこにいた本物らしいしぐれと、部屋を出た。
既に事の真相を知っているようだ。
「驚いているようだね。ジオラマのトキオくん」
「ジオラマということは、僕は・・・」
「そう。僕が作ったジオラマの一部さ・・・君もね」
僕には意思も記憶もある。
なのに、目の前のもうひとりの僕は、ジオラマだという。
「ここへ来る時、他の列車もみたよね?」
「うん」
「彼らも、同じ。ジオラマの一部だよ。君と同じように、真相を確かめに行ってる」
「真相?」
「おそらく、今の僕たちと同じ会話をしているころだね」
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