第8話

「さあ、トキオ」

差し出された手を取る。


温かい。


「私も、生きた人間であることが、わかったろ」

「ああ」


答えると同時に、しぐれは走りだす。

あらゆる人をよけて、駅まで向かう。


とても、早い。


「ここの生物や建物は、創造主が動かさない限り、固定されている」

「それは聞いたけど・・・」

「なので、パターンさえわかれば、衝突はない」


それなら、建物も創造主の意思で動かせるのか?


「まあ、建物は固定されているので、まず動くことはない」

「まず・・・ね・・・」


駅のホームに辿り着いた。

切符は・・・


「ICカードでいける」

しぐれは言う。


ご都合主義だな。


「トキオくん、何か飲むか?」

「飲めるの?」

「ああ。これも再現されている」


ホームの自販機で、しぐれは紅茶を買った。


「じゃあ、僕も同じのを」

「OK」


ホームには、ご丁寧に時刻表も再現してある。

創造主はとても、根気のある方のようだ。


「トキオくん」

「何?しぐれ」

「乗りたい列車はある?」

「言ったら何でも乗せてくれるの?」

「ああ。あればね」


しぐれは、スマホを取りだした。


「どこへ、連絡するの?しぐれ」

「創造主」


スマホで連絡が出来るのなら、わざわざとも思ったが、この世界を楽しみたいという気持ちが勝った。

リクエストしてみよう。


ちなみに、ホームの人は動かない。

鳩も動かない。


「トキオくん、さあリクエスト」

「じゃあ、221系で・・・」

「了解」


しぐれは、何やら話をしている。


「トキオくん。OKだ。すぐに臨時列車としてやってくる」


駅の行き先表示番に、臨時と出た。

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