第3話

「僕が来るのを?」

しぐれは、頷く。


「私は、この世界の住人。でも、元は君と同じ世界にいた。」

「僕と同じ世界」

「そう・・・。つまり、私と君は同じ町の住民だった。」

「同じ町?」


どういうことだ?


「この町は、君と私が住んでいた町を、そっくりそのまま再現した世界」

「そのまま?」

「ええ。但し生物の動作を覗いて」

「動作を?」


しぐれは頷く。


「何のために?」

「いずれ話すわ。まずはこの世界に慣れて欲しい」

「この世界に?」

「とりあえず。今日は私は帰る。君は、ゆっくりしてほしい」

そういうと、しぐれは去ろうとする。


僕は、それを呼びとめた。


「しぐれは、何のために僕の前に現れたの?」

その問いに、しぐれは一言だけ答えた。


「君は、ひとりじゃないということを、知ってほしかった。そして・・・」

「そして?」

「私もひとりでなくなった事を、知りたかった」


そういうと、しぐれは去っていた。


果てしなく同じ音が続く、テレビとラジオは僕も消した。


蛇口をひねると水は流れる。

電気もつく。


おそらく人の手によるものではないのだろう。


まるで、実物大のフィギュアが飾られているようだ。


妹の部屋では、妹が寝ていた。

悪いとは思いつつも、頬をさわってみた。


温かい。

温もりはある。


少しだけ、制服のスカートをめくってみた。

めくれた・・・


犯罪行為になってしまうが、そのほうが良かったかもしれない。


完全に生物だけが、動いていないようだ。




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