第9話 思慕

 それは、短い夏に命を燃やし、懸命にあの色この色で燃えさかる花が、急激に萎れ、東風が止んだ頃のことだった。

 塩の町は農作物の収穫期を前に緩み、満たされた生活にんでいた。男子は徴用され続け厭戦気運がない訳ではなかったが、運び込まれる奴隷が人々を盲目にし、町の人々はすることもなく怠惰な生活を謳歌した。

「秋になったらまた我々はこき使われる」

「もう限界だ」

「どうせこのままでは死ぬのだ。黙って殺されるぐらいなら」

 その日は蝙蝠コウモリすら団居して、なぜか一つの星も見えない夜だった。

「何だ今の声は」

「悲鳴みたいだな」

「今しか楽しめねえからな。まァ喧嘩も絶えないだろう」

ちげえねえ」

 そしてまた一口、酒を煽った。

「大体おかしいよな。おかみだけ酒飲めるなんて」

「ま、確かにルフォートは豪物えらぶつさ。だが漁師上がりの月下将の無能共までもがふんぞり返っているのは解せん」

 そこににじり寄る影。半開きの目がそちらを向いた。

「……なんだ奴隷か。なにやってんだ! お前らは毎日の仕事があるはずなんだから、夜は規則正しく寝てなくちゃ駄目だろうが!」

「そう言ってくれるとこちらとしても躊躇わずに済む」

「あ?」

 きらり、月光を照り返す。ざしゅっ。喉が血しぶきを上げる。混乱と悲鳴が町に幾重にもなって木霊した。

 草のこびりついた刃こぼれだらけの鎌だった。だから、なかなか死ねない。激痛にのたうち回る。

「何だ。今日はお祭りか?」

 酔いつぶれていた男達が立ち上がると、次々と凶刃に斃れた。病が伝染するように、殺戮が連鎖する。

「奴隷どもが……反乱を起こした!」

 短い夜が明け空が白み始めても、今日は礼拝に出る者は誰一人としていなかった。代わりに、鎌を剣に持ち替えた奴隷達が息を荒く町を闊歩していた。

「それっ!」

 女子を満載した馬車が北へ向けて飛び出していった。

 奴隷達は町を手に入れ、食事を取ると休むことなく町の住人を捜した。奴隷達は容赦なかった。塩の町で過ごした日々が、剣を振り下ろす腕に力を与えた。

 後に残された光景は酸鼻を極めた。血の臭いを嗅ぎつけて豺狼や犬鷲の類が町を跋扈し、生気を失った奴隷だけが閑散とした町をうろついている。軒並み朱に染まり、どこにも平素の景色はなかった。

 日をまたいで、町に異変があった。

 町を取り囲む人影が現れたのである。

「なんだあれは?」

「ルフォートだ……」

 奴隷達は、逃げ出したくなる気持ちを必死で抑えた。その衝動は彼らの体に生じてしまった『習性』であった。彼は恐怖の象徴そのものだった。

 ルフォートは町の惨状を目の前にして怒りと呆れが入り混じった感情に目を血走らせ、ずっと何かを呟いていた。月下将は途方に暮れ、ただルフォートの言動に全てを委ね怯えていた。

「塩の町を奪還する。奴隷どもをぶち殺せ」

 と言うが早いかルフォートが真っ先に挑みかかった。

 それは戦と呼べる代物ではなかった。

 ルフォートの兵は戦慣れした猛者が綺羅、星の如く集まり組織を形成していた。実力差は歴然、奴隷を包囲しては殲滅し、たちまち奴隷達は潰走し武器を捨てて逃げ出した。物陰に隠れ、町を脱しようとした。

 ところが。あちらも。こちらも。行けども。行けども。

 ルフォートの兵は町を取り囲んで行く手を阻んだ。

「そのまま円形を維持し、半径を狭めよ」

 幾度もの遠征を経験して、ルフォートが取るようになった戦術がこれであった。

 逃亡者は、他の邑に逃げ込むとルフォートのやり方を伝え、ルフォートの人物像を極悪非道に脚色し、あげつらい、喧伝した。そのせいでルフォートは色々と面倒な目に遭ってきたのだ。数を重ねるほど邑々の抵抗は増していった。陥とした邑でも食料を隠したり、穴を掘って隠れたり、面倒に遭った。それで対象をを完全に包囲する手法に行き着いた。

 完璧主義だった。

 落ち度があると執拗に悔いた。煩悶した。しかしそれを他人には決して見せなかった。失敗することがあっても強がった。

「殺せッ! 奴隷などもう要らぬ!」

 己が許せなかった。

 兵の波は奴隷達を呑み込み、たちまち町は奪還された。

「留守を預かっていたのは誰だ!」

 みんな顔を見合わせるばかりで答えない。知っているのに答えない。

 その様子を見届けるとルフォートは踵を返し寺院に入って行った。そして執務室へ。

「お前らか……」


 ルフォートは人の名前を覚えるのが苦手だった。もっと正確に言えば他人にほとんど興味がなかった。

「お前らで適当に決めろ」

 そう言って誰がルフォートを補佐するのかさえ全く興味がなかった。


 ルフォートはシスを振り下ろした。

「そっ、それは……」

 床に転がった骸が真っ二つに裂かれた。続いてもう一つの死体にもシスを振り下ろす。

「もう……お止めください」

「死者への冒涜です」

何故なにゆえこのような無碍なことをなさるのですか」

「死の世界に引き摺り込まれたらどうするのです」

 ルフォートは死体を切り刻みながらずっと部下の気配を伺っていた。見た目は正気の沙汰ではなくても、心は恐ろしいほどに冷えていた。

 そうか。人は反抗するか。

「ふん」

 ルフォートは大股に僧院を出た。

 眺め渡すと兵士が死体を漁る獣達を追い出しにかかっている。兵士以外の人影はなく、まるで廃墟だ。ルフォートはいらいらしながらどこへともなく町を見て回った。

「お」

 この混乱の町で生き残った者がいた。

 薄汚れた毛皮を体に巻き付け、甕を手にしており生気のない肌に亡霊かと見紛う。その足音は不規則だった。一歩踏み出すごとに体が揺れる。

「イイム……」

 無表情にルフォートの傍を通り過ぎた。甕から液体の跳ねる音がする。

 ああ、俺の所為だ。俺の所為だ。

 そのまま、日が暮れるまで佇んでいた。が、急に我に返るとこう言った。

「誰か。イイムの家にうまい食べ物ときれいな服を届けてやれ」

 なぜ生き残れたのだろう。奴隷がイイムを殺さなかった理由がルフォートには解らなかった。

 

 町が一定の秩序を取り戻すと町外に逃げ潜んでいた人々も徐々に戻り、一応の平穏を取り戻した。人口は半減したが、誰もが再建に勤しんだ。

「ルフォート様、陳情に来た者がいます」

「どうせ、奴隷が欲しいとほざくのだろう。放っておけ」

 奴隷はいなくなったために汚れ仕事も自分達でこなさなければならない。怠惰な民にルフォートはいらいらした。贅沢はさせるものじゃない。

 しかし労働力が減り生産性の低下は如何ともしがたく、徐々に不平が聞こえてきた。そんな声を聞き流して、ルフォートは馬車の改造に着手し始めた。主に手を加えたのは荷車と車輪である。安定性を増して、揺れを少なくするのが目的だった。

 


 塩の町から延びる道は往来する馬車の頻度に比例し道幅も広く、頻繁に整備も行われていた。

 北に向かって、夜を徹して疾走する一台の馬車があった。

 朝になって、どやどやと荷を満載した馬車が冶金の邑に到着した。

「停まれ」

 御者は腰巻き一枚だった。体には痛々しい打撲が見られる。至急、邑長が呼ばれた。

 白髪男は杖をつきつきやってきた。荷を見ると口を歪める。

「まさかこの子らを買えというのではあるまいな」

「俺達は塩の町の奴隷だ。逃げてきた。今は我々が町を支配しているが長くは持つまい。この邑に我々を匿って欲しい。願わくば、この邑に住まわせて欲しい」

 荷車には幼い女の子が満載されていた。更に御者は言った。

「塩の町の戦士は負け知らずだ。率いるのは暴力クーデターで政権を奪った悪辣なルフォート。ここもいつ狙われるか分からないぞ」

「ふむ。御忠告、痛み入る」

 冬支度と平行して、南門に見張り小屋も作られ、戦争になった際の準備も着々と進められた。

 

 山が轟く。

 耳慣れた火山の噴火ではない。雪崩だった。長い冬も終わり、ようやく大地が瞼を開こうとしている。

 すっかり雪に埋もれた道を掘り、掃き清める。冶金の邑は塩の町と畜産の邑を結ぶ宿場町でもあった。

 去年はこの時期になると南から馬車が来て、大量の塩と金属器を交換した。氷が融けると北から羊毛や家畜を積んだ船が来て、塩の町の馬車に揺られ帰って行った。

 ところが、待てど暮らせど馬車は現れない。もうじき来るだろうと高をくくっていたので塩は使い切ってしまった。雪深い山中に動物は少なく、体が塩分を求めて疼いた。しびれを切らした邑人達は、使者を送ろうかと討論を始めた。だがこちらから要請して応えてくれるか不透明だった。また、交易をしてくれと謙らねばならない、沽券に関わるという意見も出た。結局、ひたすら馬車を待つしかなかった。

 今はただ、せめて来訪する馬車が迷わないように、毎日道を整えていた、そんなある日のことだった。ついに馬車が姿を現したのだ。

「報告! 報告!」

 冶金の邑は歓喜の声が飛び交った。ただ、目を凝らすと、それをいぶかる声が上がった。

「なんだあれは?」

「何って……馬車だろう?」

「こんなにたくさんの馬車が?」

 道いっぱいに、馬車が猛進してくる。その数は多すぎて何十台あるか判らない。いや、百を超えているかもしれない。

 白髪男は病に横臥していたが話を聞くと跳ね起き勢い込んで南門に駆けた。

「敵襲じゃ……」

 呆然と、呟いた。

 馬車はそれぞれ二頭の馬が荷車を曳いていた。荷車には二人の男が乗っている。その群れが、うしおになって逆巻き、波打ち、せり上がってくる。

「戦えぬ者は南へ向かって走れ! 戦える者は武器を取れ! 応戦じゃ!」

 精一杯声を張り上げ、白髪男は咳き込んだ。

 まもなく、荒波が冶金の邑に進入した。邑人を見つけると馬車の上から槍を投げつけた。夥しい血飛沫が舞い散り、雪を染める。ばたばたと邑人が倒れていく。

 白髪男は家に戻ると剣を抱えよろよろと外に出た。逃げ出す者の無防備な背中に馬車から降りた猛者の刃が食い込む。

 まさか、ここまで来襲が早いとは思っていなかった。これほどたくさんの馬車を運用し一気呵成に攻めて来るとはまったくの想定外だった。

 立ち向かう邑人は皆、覚悟が決まっていた。退散する者の為に、命を棄てるのだ。

 そのとき、雪舞う中を翩々と旗が翻る馬車が悠々と邑に乗り入れた。

 その馬車には屋根があり、中から真紅に染められた革の服に身を包み、真紅の布を髪に巻き付けた男が現れた。

 白髪男は剣を杖代わりにして近づくとしわがれた声で呼ばわった。

「御主だな、ルフォートは」

 ルフォートは危険がないのを確認してから地面に降り立った。

「この儂と勝負せい。而して儂に負けたときは一転、撤退するのじゃ」

「俺が勝った場合は?」

「この邑をくれてやる」

「ふん。もうここは手に入れたようなものだ。お前の話は俺にとってうまみがない」

 白髪男はにやり、笑みを漏らした。

「御主、この翁に負けるとでも?」

 ルフォートは切れ長の目を白髪男にくれた。顔はひび割れて土色、剣を地面につきようやく立っている状態。

「ふん。了解した。その丸見えの針にかかってやろう。お前ら、手出しは無用だ。第三者が介入しねえようにだけ見張っておけ」

 そしてルフォートは身を躍らせるとおもむろにゆらり、シスを振り上げ斬りかかった。白髪男は剣を当ててシスを弾く。そして再度。

 ほう。目がいいな。ルフォートは感心した。

 ルフォートの武器は湾曲した剣だった。まだつばが発明されていなかったので剣で受け止めようとすると手首を落とされかねなかったが、白髪男は果断に斬撃の方向を見極め最適な角度で打ち払い、受け流し、機を待った。

 ルフォートは大きく息を胸の奥に吸い込むと、重心を下げた。

「だが、それだけのことだ」

 腰を入れ、ルフォートの攻撃は力を増した。白髪男に反撃の余裕がないことを見て取ったのである。一撃受ける度に、体が泳ぐ。反応が遅れていく。白髪男の額に玉のような汗が浮かび、湯気が漂う。

 水深く潜む魚に比べれば、こうして挙動も表情も視線も意図も見えてしまう相手など、釣り上げた魚の息の根を止めるほどに容易い。ルフォートは斬り込む角度、力加減、律動リズムを白髪男の動きを予測しながら絶妙に変えていった。

 もう、誰の目にも白髪男の不利は明らかだった。いつ命を刈り取られてもおかしくないように見えた。ルフォートは弄んでいた。白髪男は咳き込み、目は霞んで、剣を支える腕は鈍重に、顔は蒼白に、しかし目だけは死なず、ルフォートをしっかと捉えていた。

「飽いた」

 ルフォートは肩を入れ、渾身の力を込めシスを振り抜いた。白髪男の胸に深く深くシスはらわたが突き刺さり、切り裂き、その名の通り中身を曝け出した。

「お父さん!」

 この邑の人間は皆、髪が短かったがその女は腰まである長い髪をしていた。

 一目見てルフォートはその美貌に心動かされた。

 白髪男の屍の傍で女が噎び泣いている。

「オオ。美しい娘がいたものだな」

 歩み寄る。

「おい女、お前の住んでいた家はどこだ」

 ルフォートは女を担ぎ上げた。女はルフォートを自宅へと案内した。

 息を潜めていた母が目を丸くして二人を迎えた。

 二人が暖炉の前に座ると、母は後ずさりして入れ替わるように外に出て行った。

「名は何と言う」

「……メーレと申します」

「メーレ、俺の女になれ」

 メーレは大きく瞬きをした。

 悲鳴が聞こえた。メーレは無表情のままでいた。間違いなく母のものだった。今までちょっと聞いたことのないような声だった。びくっと一度、メーレは震えたが、細かく口で息をしながら何事もなかったかのようにルフォートに目を遣って。

「わかりました」

 とだけ答えた。

 ルフォートはメーレを抱き寄せた。

「それで」ルフォートは微笑んだ。「どうやって俺を殺してくれるんだ?」

 メーレは無反応だった。ルフォートは口を閉じたまま深く息を漏らした。メーレの目は何も語らない。

「私はそんなこと考えていません」

 どこも見ていなかった。ルフォートは寒気がして居住まいを正した。

 何らかの感情を見て取りたかった。恐れでもいい、怒りでも、絶望でも、何なら呆然でも狂気でも、憐憫でも。

 泣き喚く女を屈服させるのが至上の愉悦だった。いや、それだけでなくあらゆる極限状態の人間の様、極端な精神状態、本音、痴や愚の観察を好んだ。

「メーレ、お前は今何を考えている?」

 その質問には抑揚が、なかった。

「ある殿方のことを考えています」

 ルフォートの顔がわずかにほころんだ。

「そうか。その男は今、どこにいる? 逃げてしまったのか?」

「わかりません。霧のように、隠れてしまいました」

 今でも昨日のことのように思い出す。

 メーレの脳裏にはまだあの狂おしいぐらい真っ赤な西日がこびりついていた。その夕方から時が過ぎているという事実を認められないでいる。

 きっと私は、トキアミという女に似ている。そのことにはたぶん、感謝している。そのおかげで、私はあの夏だけでもチトフに愛してもらえたから。だからもう悔いはない。

 だから、チトフがトキアミと、もしくは誰か素敵な女性と、結ばれて、幸せになっていればいい。

 私はね、あの日々のことを回想するだけで、幸せだから。

 私は、偽物だから。

「お前のような名花を放ってどこぞへ遊びに行くとは見る目のない奴だな」

 ルフォートは力を込めて笑うと、メーレを引き寄せた。


 メーレは息をする死体のような女だった。呼吸は乱れる。だが、それ以上の反応はない。泣かない。喘がない。

 ルフォートは半ば猛り狂ってメーレを攻め立てた。


 はっとして、ルフォートは白髪男の家を飛び出した。兵達は邑に蓄えられていた魚に齧り付き、呑気に麦粥を煮ていた。

「逃げた邑人を捕まえて来い」

 食べかけの麦粥を放り出し、慌てて追撃に出る。

 ルフォートはいらいらした。

「誰も指示を出さなかったのか?」

 自分の振る舞いを見て部下は何も考えなかったのだろうか。学習能力というものがないのだろうか。ルフォートはいらいらした。しかしよくよく考えてみると、決定権をすべて自らが掌握し、すべて独断で決めてきたのは他ならぬ自分自身だった。

 ルフォートは家を睨みつけた。

 もしかして、メーレが俺を拒否しなかったのは、俺の目を自分に向けさせるためではないだろうか。考え過ぎだろうか。

 考え過ぎだ。……いずれにしろもう詮無きこと。

 何をしているんだ俺は。斯様な時に路傍の徒花に心乱されるなど。

 並の女なら腹いせにたたっ切られていたところだろう。しかしルフォートはもうメーレの虜だった。どんなに贅を尽くしても、メーレは眉一つ動かさない。何より笑顔を見てみたかった。決して笑顔を見せなかった。これではまるで生ける屍ではないか。

 ただの花ではなかった。ルフォートの胸の奥に根を下ろし、如何な風が吹いても燦然と咲き誇った。五色の衣を着せてやると誰もが放心するほど可憐で眺めているうちに息をするのも忘れた。

 俺がどれだけ偉大か、見せてやろう。そうだ、このまま北進し、畜産の邑を我が物とするべきだ。あそこに飼われている豚という動物の肉は非常に美味だった。

 メーレにうまいものを食べさせてやりたい。

 幸い、奴隷の反乱では直属の兵は減じず、今回の遠征でも被害はほとんどなかった。続けて戦に出ることも十分に可能だ。

 ルフォートは馬車を整列させ、入念な整備を命じた。兵は意気軒昂で、冶金の邑を陥とした自信に満ちていた。

 と、ルフォートは自分の馬車の前に立った。

「あっ」

 誰もが声を上げた。

「なんだこれは」

 ルフォートは天地総攬を真っ二つに折ってしまった。ぞんざいに、投げ捨てる。

 呆気にとられたが、兵達は再び己の職務に戻った。

 ルフォートに対する忠誠心はそんなものがなくても、揺るぎないものだった。ルフォートは満足気に周りを見回すと、北を見据えた。

 整備が済むとルフォートは捕らえた邑人を塩の町に輸送し、畜産の邑に使者を遣わした。

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