06 襲撃者の謎 (fix

 映像を見る限り、撃たれたのはブラックサンダー社のメテオフォール・ヒュージ・ミサイル。一発のお値段が金策ミッション十数回分もするという、とんでもなく高価な代物。

 どう考えても、ウチのような規模のステーションに撃ち込んで元が取れるようなミサイルじゃあない。

 たぶん一発分だけで大赤字だ。


 展開を始めていた基地防衛用の自動戦闘艇ターレット・ドローンが、ヒュージ・ミサイルを捕捉して攻撃するのが画面の端に見て取れた。

 しかし、迎撃火力が足りていない。

 なにぶん初拠点だったこともあり、防衛設備も最低限。対空モジュールが破壊されていなくても、高価な大型ミサイルの耐久値を抜けたか怪しいところ。

 そもそもステーションから得られる儲けに対して、割に合わないヒュージ・ミサイルで爆撃されることなど、想定しているわけがないのだけれど。


 そんなことを考えながら見ていると、二発の大型ミサイルが、ステーション近くで近接信管の起爆。

 ミサイル内に超高密度に圧縮されていた大質量の粒子端末グリッターダストが放つ、粒子干渉場エルフェルトの蒼いプラズマ・アークが、宇宙を染めた。

 自動戦闘艇ターレット・ドローンを数隻巻き込みつつ、ステーションの側面、数区画ブロック分を、おのおの二つの蒼い火球がきれいに吹き飛ばす。


 オマケとばかりに、剥き出しになったステーションの中枢区画コア・ブロックへ向けて、腰背部に装備された増設武装区画サブ・アーセナルから、圧縮粒子ダスターロケットが盛大にばら撒かれ、ステーションが完膚なきまでに破壊されたところで映像は終わっていた。


「ここまでやって、わざわざ骨格艦レヴナント格納港区画ドック・ブロックを残したんは、なんでやろか?」


 ステーションが破壊されたにも関わらず、ログインした俺たちがミーティング・ルームに復帰リスポーンしたのは、骨格艦レヴナントが収容されている格納港区画ドック・ブロックが無事だったから。

 そうでなければ、スカラブレイ星域セクターの各経済圏エコノミー回収港サルベージ・ドックに乗艦ごと復帰リスポーンする。


「それに物資狙いなら、対空砲をあっという間に黙らせられる腕があるんだし、わざわざ高価なヒュージ・ミサイルなんか撃たないで、スナイパー・ライフルで中枢区画コア・ブロックだけ狙撃すればよくない?」

「ステーションの中枢区画コア・ブロックを破壊する目的って、他にはクラン戦の勢力スコア狙いやんな? ……いやでもウチのチームって、まだクラン入ってないんやけど?」

「物資狙いでも、勢力スコア狙いでもないとすると……」


 俺とクロエが悩んでいると、ユキムラが思い出したようにポンと手を打った。相変わらずユキムラは仕草が古臭い。


「あ、あれじゃない? ほら、『アノマリー』のクエスト。なんか変なポイントを結構な量貯めさせられるみたいな話、読んだことあるけど」

「『アノマリー』ってゆーたら、サーバーに一種類一個づつしかないっていうガチのユニーク・アイテムやんな? そのポイントって狙って集めるモノなん? いやそもそも、ソロやしなぁコイツ」


 話題の逸れ始めた二人の話を聞いていて、俺は一つの可能性に思い当たる。


「ユキムラ、ステーションの中枢区画コア・ブロックって今?」

「ん? 完全破壊されてなかったから、ログインした時に再起動かけておいたけど――たぶん今日中には復帰リスポーン終わらないから、復旧は明日以降かな? 骨格艦レヴナント、壊さないでね? ステーションの機能が死んでるから、補給も修理も明日まで出来ないよ」


 ユキムラが中枢区画コア・ブロックだけは復旧をかけたから、格納港区画ドック・ユニットに収容された骨格艦レヴナントではなく、コア内にあるミーティング・ルームはいつも通りログインしたわけだ。

 だけど今はそっちの話ではなく。


「いや、これだけやって中枢区画コア・ブロック格納港区画ドック・ユニットを残すような人ならさ……対人スコア狙いの可能性も――」


 そこまで言いかけたところで、警告音アラートが鳴り響いた。

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