04 ユキムラ
俺とクロエの幼馴染かつ、同級生。クラスまで同じ。
女性型のアバターは、俺と同じでデフォルトの、リアル身体のスキャンデータから、そんなに弄ってはいない。
品行方正で生徒会役員もこなす
一方、アバターは目元が凛々しい感じで、瞳の色も、髪の色も明るい。
後、
俺も似たようなものなので、ユキムラも「それなりにメイキングした」つもりだと思うのだけど、何せ
さて、あらためて二人に、バス停の少女との出来事を話すと、ユキムラは整った眉を寄せて、眼鏡越しに俺を見つめる。
「シド君……白昼夢でも見たんじゃない? 今日、寝とく?」
ユキムラも器用に、無重力のミーティング・ルームを重心移動だけで移動して、おでこに手を当て、真剣な目。お前もかユキムラ。
「いや、寝ぼけてたとか、そんなんじゃあないって」
「でもこれ、ロボゲーよ? 女の子がやる? ふつう」
クロエと違って正真正銘、女の子のユキムラにいわれると、今度は違う意味でシュールだ。なんなんだ、このコントは。
「ユキムラがそれ、言うか?」
「ユキムラさんは良いのよ。私は特殊なSFオタらしいし?」
特殊なSFオタ呼びが気に障ったのか、気に入ったのか、判断の付かない表情で笑う。
彼女が
大体、このゲームに俺とクロエを誘ったのが、ユキムラなので。
「まあ、シド君の夢遊病の話はちょっと横に置いといて――ここで、ちょっと悲しいお知らせがあります」
箱を横に置く仕草をして、ユキムラは話を変えた。仕草が古臭い。
いやな予感がする。
もとい、いやな予感しか、しない。
横を見ると、クロエもどうやら気づいたようで、眉を寄せて「げっ」と言いださんばかりの顔をしていた。
「どうも昼間に、『レイド』に遭いました。ウチ」
***
おのおの自分の
原型は留めておらず、三つの大きな残骸が、周辺の
「うー、わ」
クロエが、面白いイントネーションでうめく。
「ついにウチも、レイドされたかー……」
レイド――さまざまなゲームで『強襲』や『襲撃』を意味する単語として使われているその言葉は、
この仕様に沿ってステーション等を襲い、物資を奪う行為が『レイド』と云うわけだ。
しかしプレイヤーの主要な乗艦、ロボゲーと云われる所以――
無傷でレイドを成功させたとしても、戦闘機動に
ここはスカラブレイ
「それでウチみたいな、辺境の小さなステーションをわざわざ襲ったモノ好きさんは、どこのチーム?」
宇宙ステーションはカメラ・センサー・モジュールで、襲撃者の情報と映像が量子センサ・ネットワークに保存されるから、相手がよほど、ステルスやECM装備にお金を掛けて襲撃しない限り、襲った犯人は知れる。
「いや、それがさ……見てみる?」とユキムラから映像通信。
「なに? ずいぶん勿体ぶるね」
「レイドしてきたの、チームじゃなくって単独犯なのよね」
蒼い映像通信ウィンドウの向こうに映るユキムラが、コンソールを操作するのが見えると、こちらの艦橋の空中に、べつの映像ウィンドウが表示された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます