第二十一章 七分間の嵐
「落ちろぉぉ!」
ユウは巨大宇宙怪獣にゼロ距離からライフルを放つ。対超巨大宇宙怪獣ライフルの弾は硬い宇宙怪獣の表皮を突き破り宇宙怪獣を撃破する。
爆発する宇宙怪獣を推進力代わりにして次の巨大宇宙怪獣をロックオン。
「日本出身者としては複雑だけど、そうも言っていられないよね」
そう呟くとロックオンした巨大宇宙怪獣に向けて核弾頭ミサイルを発射。発射した核弾頭ミサイルは巨大宇宙怪獣に直撃して火球に包まれる。
現在、宇宙怪獣の本隊に切り込んだモビル・トルーパー部隊は爆撃装備で大暴れしていた。ユウの他にも爆撃装備のモビル・トルーパーが次々と巨大宇宙怪獣を葬り去っている。ストライカー装備となったカスペン大佐含めた五名の働きもすさまじいが、それ以上に暴れまわっているのが超兵器『アース』であった。
アースは腹部からのブラックホールキャノンをはじめに、全身から射出される全方位レーザー、腕からアンテナを出し、それを通して直接縮退エネルギーを叩き込むバスターアンカー。さらには超巨大なトマホークを使い、すでにアース単機で二個艦隊もの巨大宇宙怪獣を葬り去っていた。
『作戦限界時間まで残り三分です! 至急、指揮官級宇宙怪獣を撃破してください!』
「簡単に言ってくれるよ……!」
オペレーターの言葉にユウは思わず毒づいてしまう。
すでにユウだけでも巨大宇宙怪獣の撃破数は十を超えている。作戦に参加しているパイロットの数を考えればすでに千は超えているだろう。それでもまだ発見すらできていない。
ユウは空になった対超巨大宇宙怪獣用ライフルのマガジンを捨て、予備のマガジンに取り換える。
「ああ! くっそ! また来た!」
そこに襲来してきたのはポーン型の宇宙怪獣。アースやストライカー装備なら問題ないが、爆撃装備ではポーン型に対処できない。そのためにユウは機体を旋回させて逃亡を始める。後ろからは二匹のポーン型宇宙怪獣が迫ってくる。
「近くのカスペン戦闘大隊はどこにいるんだ! なんとかそこまで逃げなきゃ……!」
ポーン型宇宙怪獣のビーム射撃から逃げながらユウはレーダーを確認する。
そして愕然とした。
「やばい! こっちは宇宙怪獣の制宙圏だ!」
気づかぬ内にユウの機体は宇宙怪獣の群れの真っただ中に入り込んでしまったのだ。
「うわわわわわわ!」
そしてユウは四方八方からポーン型の襲撃を受ける。それから必死になって逃げ回りながらユウは考えを続ける。
(どうするどうする! 流石にここまで入り込んじゃうとカスペン戦闘大隊の援護は期待できない! かと言ってアースやストライカー装備でもない自分の機体じゃ撃破も無理! ついでに殲滅できる腕前もない!)
「完全に詰んだぁぁぁ!」
半泣きになりながらユウは叫ぶ。それでも逃げることを諦めないあたりに生き残ることを最優先にするユリシーズモビル・トルーパー部隊のパイロットとしての意地があった。
「なにか! なにかないか!」
ユウは必死に逃げ回りながら自分の機体の装備で現状を打開できないか考える。
「ライフルは自分の腕前もあって当たるわけがない! 頭部バルカンは一匹落としている間に集中砲火を食らう! 近接装備は爆撃装備にはない! あとは肩の核弾頭ミサイル……あ! 核弾頭ミサイル!」
そして思いついたのは核弾頭ミサイルを利用してポーン型を纏めて薙ぎ払うという考え。下手したら自分も巻き添えを食らうが、このままでもじり貧で落とされるので覚悟を決める。
ユウは機体を操作して自分の機体を追いかけてくるようにポーン型宇宙怪獣を集める。そしてユウの機体の背後に集まったのを確認すると急反転。
「全部持ってけ!」
残っていた核弾頭ミサイルを全弾発射すると全力で離脱。ユウの機体に大きな振動が伝わってくるがそれを気にせずに必死に離脱する。
爆発と振動が収まると、ユウを追いかけまわしていたポーン型宇宙怪獣は消滅していた。
「とりあえず助かった……」
周囲の巨大宇宙怪獣から攻撃がないのを確認してからユウは操縦桿から手を放して一息つく。
周囲を見渡すとところせましと超巨大宇宙怪獣がいた。
その事実に思わずユウは顔を顰める。
「うへぇ、嫌な光景。とりあえず元の宙域に戻りながらライフルで沈めていくかな」
そう言って機体を翻そうとしたユウのモニターにとある宇宙怪獣が映る。
超巨大宇宙怪獣をはるかに超える超超巨大な宇宙怪獣。周囲にはその宇宙怪獣を守るように超巨大宇宙怪獣たちがいる。
その光景にユウは思わず息を飲むが、慌ててエデンへと通信をつなぎ叫ぶ。
「指揮官級宇宙怪獣らしき存在を発見! とにかくでかい! こいつはモビル・トルーパーじゃどうしようもない! 画像とポイントは送る! どうにかしてください!」
ノリコはアースで宇宙怪獣を撃滅しながら突き進む。周囲には道を切り開くためにストライカー装備のモビル・トルーパーが五機と、爆撃装備のモビル・トルーパーが大量にいる。
その報告がエデンにもたらされたのは一分前。運悪く敵陣に迷い込んだ友軍機がそれを発見した。
既存の兵器では太刀打ちできないであろう超超巨大宇宙怪獣。
司令部は即座にこれが指揮官級宇宙怪獣と断定。ノリコに撃破を命じてきた。
「見つけた……!」
そしてアースのカメラでもその姿を確認できた。
超巨大宇宙怪獣に守られるように佇む超超巨大宇宙怪獣。
『ノリコくん、聞こえるか』
「カスペン大佐」
そこに通信を入れてきたのはストライカー装備でモビル・トルーパーを駆るカスペン大佐であった。
『口惜しいことであるが、我々の装備ではのデカブツには歯がたたん。アースでできるか?』
「できます! いえ! やってみせます!」
ノリコの言葉にカスペン大佐は大笑いした。
『気に入った! 君はまだ子供であるが間違いなく戦士だ! 周囲の露払いは任せたまえ! 君はあのでかいのだけに集中しろ!』
その言葉と共に通信は切れ、モビル・トルーパー部隊が先行して超超巨大宇宙怪獣を守っている超巨大宇宙怪獣たちを落としていく。
そのことをありがたく感じながらノリコはアースを超超巨大宇宙怪獣に向ける。
「システム連結! 縮退炉フルドライブ!」
アースの縮退炉は限界を超えつつある。それでもノリコは縮退炉を止めない。
「片腕のバスターアンカーじゃ足りない! それなら両手を使えばいい! それでも足りならなら全方位レーザーも叩き込む! 行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
ノリコは叫びと共に両腕のバスターアンカーを超超巨大宇宙怪獣に叩き込む。そして全身のレーザーも一か所に集中して叩き込む。
だが……
「まだ足りない……!」
アースの全力の一撃。それでもなお超超巨大宇宙怪獣は健在であった。
「だったらぁぁぁ!」
そしてノリコはさらに縮退炉を追い込む。
「メイン動力縮退炉! 火器管制縮退炉連結! 二つのエネルギーをバスターアンカーへ!」
その操作によって黒かったアースの表面が暴走によって赤くなる。コクピット内もサウナを超える暑さだ。
ノリコはそれに耐えながら再び両腕を超超巨大宇宙怪獣に叩き込む。
「これでどうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ノリコの叫びと共に超超巨大宇宙怪獣の全身が崩壊を始めるのであった。
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