社畜は苦く、ほんのり甘い過去を思い出す。
黒歴史というものは、おそらく誰もが持っているものだろう。特に男であれば。ちょっと周りよりできることがあると、「自分は特別なんだ!」っと思ったり。それを態度で示せば立派な黒歴史の出来上がりだ。他にも強盗が襲ってきて、それを自分で倒すとかの妄想かな。こういう経験は女でもあるのだろうか。俺男だから知らんけど。じつは俺も少しあるんだよなあ、そういうの。でも俺はあんまり過去の俺を恥ずかしいとは思わない。むしろ過去にあんな嫌な事件があったにも関わらず、こんな健全な妄想ができる俺スゲー。この俺の妄想力には、おもわず誰もが勲章をあげたくなるだろう。ん?なに。「妄想に逃げてただけだろ」だって?シベリアに送ってやろうか!!まあとにかく俺は嫌な過去というと、どうしても『あの事件』を思い浮かべてしまう。正確には高校時代もそうなんだが。今思い出すと、こわくなってくるあのことを、伊月の奴は忘れやがったらしい。あんまりおもいだしたくないんだけどな。俺の学生時代が壊れたきっかけのあの中2の時
伊月「先輩のトラウマってなんでしたっけ?」
武田「それは確か中2の時…
中2の時の俺はクラスの中心的グループにいた。もちろん今とは違って女子とも話していたし、コミュ力もそれなりにはあったと思う。とはいえ顔が平凡だったこともありモテることはなかった。恋愛相談はよくされたがな。まあきっと隠れて俺に好意を持っていたやつくらいはいただろう。うん!そうに違いない。もし『典型的な良いひと止まりな奴』っと、思った輩がいたら、ぜひともうちの会社で働いて過労死することを願う。さて話を戻すと、そんな俺は体育の授業でマラソンをやっていた。その時の体育教師は26歳くらいで、若い女教師だった。梨花先生と皆から呼ばれており、俺は体育のわからないところを、よく教えてもらってた。そのためこの時は、真面目で優しい『尊敬できる先生』だと思っていた。そんな先生はその授業中俺を見ていたのだが、息がすごく荒かった。心配になった俺は、授業後先生に大丈夫か聞いた。すると「大丈夫では無いので、空き教室に連れて行ってほしい」とのことだった。今考えると、普通保健室なのだが、その時の純粋無垢な俺は簡単に信じてしまった。そうして俺は、先生に肩を貸しながら空き教室にいった。そして空き教室につくと、先生は教室のカギを閉めたのだった!!そして服を脱ぎながら、
先生「もう我慢できないわ。謙信君が悪いのよ。あんなに汗をかきながらハアハア走って!」
そう。先生、いやババアは変態だったのだ!それもかなりやばめの。どういう感じか説明するのは、R判定がついてしまうので無理だが、今の俺でも背筋が凍るほどである。そして先生に襲われかけるが、なんとか逃げることに成功した。が、その時負った心の傷は相当のものだった。なんせ当時はセッ**すら知らないくらい無垢だったうえ、尊敬していた先生が*尿プ**何ていうことを言ったんだ。純粋な恐怖と、未知の恐怖、皆もこうなんじゃないかという疑いが出てくるこの事件は、俺のトラウマになるには十分すぎるほどだった。こうして俺は親すらも怖くなり、部屋に引きこもった。
武田「っとまあ、こんな感じだ。」
伊月「改めて聞くと悲惨ですよね。」
武田「ああ。この時のことのせいで年上は今でも少し苦手で、小学生くらいの奴が天使に見えるようになったんだよな。」
伊月「もしかして私、口説かれてる!」
武田「いや。できればホントの小学生を口説きたい。」
伊月「…、もしもしポリスメン?」
武田「通報はやめて。冗談だからマジで。」
伊月「怪しい…。
それより、その後どうなったんですか?」
武田「その後は、…
そのあと俺は引きこもっていたため、学校に行っていない。再び行き始めたのは中3の2学期からだ。当然怖いし、怖い。あと怖い。そしておもらししちゃうくらい、ビビっていた。何か噂になっているんじゃないか。笑われているんじゃないか。ずっと登校していなかったせいで、トラウマとは別の恐怖が俺を襲った。でもまあ、予想はいい意味で裏切ってきた。俺の思っていた以上に、同級生には良いやつしかいなかった。これまで通りに接して来る奴や、理解しようとしてくれる奴。中にはトラウマを治そうと手伝ってくれる奴。まさに『やさいせいかつ』じゃなくて『やさしいせかい』だった。驚くことに遠くからなら女子と話せる位には、一時的にはなったんだ。本当に感謝しかない。でも、そんな奴らとも別れが来るわけだ。俺のいく高校は少し遠く、俺の親友くらいしか知り合いがいなかったのだ。トラウマは完治してはいなかったが、その時の俺はどうにかなると思っていた。だが、その考えは世界一甘いグラブジャムンより甘かったのだ。って知らんか!このスイーツ。話を戻すと、この世には俺の勤めている給与だけいいブラック企業があれば、給与も労働環境も悪い超ブラック企業があったりもする。その中にポツンとある企業こそホワイト企業なのだ。つまりこの世には、『厳しい世界』がほとんどで、『やさしいせかい』はほんの一部でしかない。このことを当時の俺は知らなかったのだ。なんせ15年間生きていたのに、怖い世界を一度しか見たことがないのだから。俺は高校に進学したのだが、親友は別のクラスだったんで、その時の俺は友達を作らなくてはと思っていた。なら、自己紹介で笑いを取ろうと考えたのだ。俺は自分の女性恐怖症の自虐ネタで笑いを取った。けど、クラスメイトの笑い方は『今までの世界』の笑い方とは違ったのだ。高校は『やさしいせかい』ではなかったのだ。休み時間、俺の噂話ばかりだ。特に女子は容赦がなかった。
「あいつ絶対童貞だよねー。」 「それな。女子と話したことなさそう。」
「恐怖症とか絶対嘘でしょ。モテない陰キャの言い訳じゃね。」
「ハハハハハ」 「ハハハハハ」 「ハハハハハ」
今であればスルー出来るかもしれないが、やさしさばかり浴びていた当時の俺の心を壊すにはオーバーなくらいの罵声だった。俺の恐怖症は悪化し、二度目のトラウマが心に刻まれた。それでも、男を怖がらずに済んだのは親友と、理解のある数少ない男友達のおかげだろう。その日は親友に泣きながらだきついた。そういえばあいつ、そのとき『頬があかかった』ような。まあどうでもいいか。それで、高校ではくそ陰キャライフを送った。
伊月「先輩…、シリアスすぎません!!今までのコメディーっぽい話から飛躍しすぎですよ。絶対読者の中でついていけない人いるでしょ!!」
武田「メタ発言やめろ。つーか、今のお前の発言でシリアスなふいんき吹き飛んだわ。」
伊月「でも、久しぶりに聞くと胸糞悪いですね。よく今普通に社畜してますね。」
そうだな。今普通に社会で生きていけてるのは、こいつのおかげだったな。
伊月「先輩」
高校での出来事で女性が怖くなり、ひねくれてしまった俺に手を差し伸べてくれたこいつ。
伊月「先輩?聞いてますか。」
俺はこいつにキッチリ恩を返さねばならん。
伊月「聞いてくださいよ。せんぱーい。」
武田「伊月。」
伊月「先輩、やっと聞いてくれた。」
武田「ストーカー、必ず捕まえてやるからな。」
伊月「なんですか。急にやる気出して。ちょっときもいです。」
武田「うっせー。」
この時社畜は決意した。伊月を助けると。
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