9.『創り手』と『造り手』
「曰く、この世にはごくたまに不思議な力を持った人間がいる。
「
「そうだ。加羅里も先生も、この
その話を聞いて、私は小さく身震いする。それはとても恐ろしい話だった。自分の感情ひとつのせいで、自分だけではなく周囲の人たちを犠牲にしてしまう可能性があるなんて。
「だから人々を守る手段として、実在する『器』にその存在を封印するための技術が編み出されていったんだ。その技術を持った封印者が、自身の制作した絵や造形物などにその存在を封印する。それが、俺や黒野のような
私は額に手を当てて顔を
「信じられないよな。俺も、黒野にきいた時は信じられなかった。こんな時に何を寝惚けたことを言ってるんだって、殴ってやろうかと思ったくらいだったよ。でも、それでも黒野は薄笑いを浮かべたまま、その信じられない話を続けたんだ。……先生、大丈夫か?」
情報の消化不良でひどい胸焼けを起こしたような感覚を覚えながらも、私は視線で鞍馬さんに大丈夫だと示して、話の続きを請う。彼も、小さく頷いて続きを話してくれた。
「
「………………」
私はぐっと強く唇を咬んで、情報を整理する。
召喚者である
私はそれらの情報を総合して、ぐるぐると目まぐるしく働く頭の中で答えを導き出す。
「つまり、加羅里さんが
「そうだな。加羅里自身が
「でも何かの手違いで、加羅里さんはまだ未完成だった封印に触れてしまった……?」
私の頭は決して良くはない。だけど、ある程度察しは良い方だと自負している。
鞍馬さんも私の出した結論に、小さく頷いてくれた。
「ああ。多分、そうなんだと思う。黒野は確かなことは何も言わなかった。けれど、当時の俺も、結局その結論に至った。半信半疑ではあったけれどな。俺の気持ちは無秩序に混ぜられた
それもそのはずだ。子供だった鞍馬さんにとっては姉の死だけでもいっぱいいっぱいだろうに、その死の原因を作ったのが兄と慕った人だったのだと暗に知らされてしまったのだ。勿論それは必死に守ろうとした結果であったのだろうけれど、それを理解出来ていたからこそ、何も言えなかったに違いない。
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