第17話 二十四日水曜日 ⑤

 「?どうしたの?」飯に箸をつけないおれを見た友子が怪訝な顔つきで訊ねてくる。

 沈黙。しかし時間は進み、その経過と共に友子の疑問は募るばかりだ。早く何か答えなくては、嘘の理由を。ホントのことは言えない。

 「うん、そうだね……」

 「野菜炒め嫌いだっけ?それともどこかで食べてきちゃった?」

 「いや、違うんだ……なんだろう、急におれは、こんな彼女がいて、幸せだなとか思って」

 友子は一瞬きょとんとした顔をし、

 「はぁ~、いきなり何言ってんのよ。そう思うならねあなた、まずはまともな職を見つけて私に恩返ししなさいよ、まったく」しかしその顔は嬉しそうだ。続けて 「ちょっとトイレ行くね」

 友子がリビングをぬけ、トイレに入るのを確認したおれは、急いでキッチンへと向かい、箸を水で濯いだ。

 ジャーッ、友子がトイレの水を流す音。

 おれは急いで自分の座布団へと戻り、友子の野菜炒めを頬張る。

 「あら、食べてる。おいしい?」

 「うん、うまいよ」

 そのあとうだうだとおれのアルバイトの話や友子の大学での話をし、テレビを見た後、そのままリビングで一緒に寝た。

 目を覚まし、働き、飯を食べ、セックスをし、寝る。そしてまた陽が昇り、朝飯を食べる。それぞれがそれぞれの役柄を成す。その中で少しずつ他者との摩擦で心は喜んだり傷ついていく。そしていつか時が経てばただの肉の塊となりそれでおしまい……おれは何のために生きているのだ。


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