第14話九月二十四日水曜日②
「彼女、古橋(ふるはし)優(ゆう)ちゃん、よくトイレに行くんですよ。何度も。一時間に三回とか。病気なんですかね?頻尿?膀胱炎とか?」その表情には心配と疑問が入り混じっているように見えた。
「過去に何かあるのかな」
「え?」
「ある種病気だろうけど、心の方じゃないかな。こんな話がある。ある少女は何度も排尿をしないと部屋から一歩も出られなかった。たとえ友達と遊びの約束をし、玄関で待っていようが、学校に遅刻したとしてもね。なんでだと思う?」
「見当もつきません」早く教えてくれという眼差しを向けてくる。
「それは彼女の過去に問題があるんだ」
「過去?」
「うん。ある時彼女は劇場で男性に対し強く惹かれたために性器に興奮を覚え、そのために排尿したくなり劇場を去らねばいけない状態に陥った。そして彼女は勘違いをする。〝私は膀胱を調節できなくなってしまった〟性的興奮を尿意が急にくる体になってしまったと置き換えてしまったんだね。本人は置き換えたことを意識していない。だから勘違いともいう」
高倉結衣の眉間に皺がよる。
「つまり彼女もそれと同じ状態ということですか?過去に何かあった?」
「うん。だけどあの子の過去で何があったかは推測でしかわからないけれどね。例えば彼女の父親が公然の場で小便を漏らしちゃって、それを恥じと感じ、少しでも尿意を感じたら漏らして恥をかくと勘違いしているかもしれないし、さっきの話のような状況に遭遇してしまったのかもしれない」
「へぇ~~、何でそんなことがわかっちゃうんですか?」やはり高倉結衣は興味津々といわんばかりの顔でこちらを見る。何も知らない、知りたがりの十代。
「大学が心理学を学ぶところだったからね。無駄に知識がついちまったのさ」
「へぇ~、すごいですよ!私も心理学勉強しようかな」
「そんなに良いものじゃないよ。わかったからって大した役になんか立たないんだ。さ、お客さんがきたよ」
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