第12話 九月二三日(火)②

 「バイト初日はどうだった?」

友子が台所で晩飯のカレーを作りながらおれに訊ねる。鍋の中で煮立ったカレーがコポコポ音を立てている。カレーのいい匂いもする。

 「面接の後ひと通りの規則や作業を教えてもらった。レジ打ちの仕方とか。二〇分くらいで終わったよ」

 「本屋で前にバイトしてたこと言わなかったの?」

 「うん」

 友子は不思議そうな顔をしながら「なんで?」と訊ねる。

 「その方がおれが入りたてなのに覚えが良くてできる奴だと思われるだろ?」

 友子は「呆れた」とぼそっとつぶやく。

 「なんで?例えばだよ、例えばテストで成績が悪かったとするだろ?だけどもし、テストの日から三ヶ月前に戻ってもう一度授業を受けられたなら成績は上がるだろ?授業を二倍受けたことになるからさ。つまりおれは時間を戻したのさ」

 友子はおれを見つめながら

 「ズルイし、ウザいし、たとえ話もよく分かんない……何気取ってるの?うざい、ただうざい」

 「時の魔術師と呼んでくれ」

 「きも……」

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