第9話 九月二十二日(月)④
友子のマンションに戻るまでに愛について考えたり、生きている意味を考えたりした。
愛とは何だ?巡り巡る心と心が重なって、同じ軌道を進むことが愛か?寂しさの埋め合わせ、神話では男と女は初め一つの存在で、何か罪を犯して神に引き裂かれてしまったという話を本で読んだことがある。そしてお互いにその片割れを探している。赤い糸。運命の人。そんな人間などいるのか?唯一の存在?友子?そうなのか?友子とおれはまるで感性が違うが……。足りない部分を埋め合わせている?理解し合えぬまま終わるのでは?人は自分以外を完全に理解することはできないだろう。ならば何故人は、理解し合えぬ相手を求め、時に傷つけ、傷つき、時に笑い、時に涙すらするのか。交わることのない心と心を交わらせようとするなんて、時間の無駄なのでは?そして人はどのような生き方をしてもいつか死ぬ。ならば生きている意味すらあるのか?生物繁殖の意味は?繁殖したところで、子孫はおれではないのに。何故。
「かわいそうな人……」
急に後ろから女性の声が聞こえてきた気がした。振り向くと人で溢れていた。立ち並ぶ雑居ビル。おれは知らぬ間に街中(まちなか)の駅付近まで歩いていた。夕方のオレンジ色の空、学生、サラリーマン、老人OL、女、男、……溢れかえる人々。風が過ぎていくように、人々が立ち止まるおれを横切っていく。……おれに対して声をかける人物なんていなくて、自分の心の声であることに気がついた。
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