第8話 九月二十二日(月)③
レジに並んでいる客を見ると、先頭から二十代前半であろう黒髪ショートヘアーでメガネのおとなしそうな女性。その後ろに、黒いスーツに身を包んだ険しい顔の四十代と思われるオールバックに黒縁メガネをかけたおっさん。その隣のレジの客は、先頭から小太りな主婦と思われるおばさん。その後ろに左手に杖、右手に『週刊現代』を持つ八十代かと思われる頭ツルツル、皺だらけのおじいさん。そして、リュックサックを背負った小太りメガネで顔には脂汗を滲ませテカテカさせている青年が列を成していた。
おれはサラリーマンのおっさんの後ろに並んだ。
先頭の女の子がレジを済ませ、おれの一つ前のサラリーマンのおやじが、購入する本をカウンターテーブルの上に置き「カードで」と店員に言う。つまりこれはクレジットカードで支払うということであるが、店員の高校生ぐらいの青年は、「何のカードで?」と聞く。
メガネおやじは面倒臭そうに目も合わせず「クレジットカード」とぶっきらぼうに吐きすてる。多分この青年アルバイト君は新人なのだろうと思った。アルバイト自体が初めてなのだ。おれも昔、本屋のアルバイトに入りたての頃、全く同じことをしてしまった経験がある。緊張していたのだ。初めてのアルバイトで。しかもクセがつき、相手がクレジットカードで支払うとわかっていてもおれは、「クレジットカードで?」と聞き返すようになってしまった。
何故だろう、その懐かしいような光景を目にして、本屋でバイトをしようとその時思った。
中島らもの『頭の中がカユいんだ』を一時間程かかり立ち読みで読了し、帰宅。
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