第56話 尋問2
「さて、何から聞いてみようか?」
「まずは、私達を暗殺するように指示したのは誰なのか聞こう。それから……」
しかし、ローグ達が尋問する前に、一人目の身に思いもよらないことが起こった。
「(ゴクンッ)」
「「「「……っ!」」」」
「ん?」
「何?」
一人目は口が自由になったとたんに何かを飲み込んだ。それから、青い顔して苦しみ始めた。
「~~~~~~!」
「な、まさか!? マズいぞ、毒を飲んで自害したんだ!」
「何!?」
「ええ!?」
リオルの言う通りだった。男はしばらく苦しんだ後、そのまま死んでしまった。青い顔のまま、白目をむいてぐったりしている。それを見たローグとリオルは戦慄し、ミーラに至ってはへたり込んでしまった。
「ひ、ひいいい……! し、死んじゃった!」
「……これは、口の中に毒薬を仕込んでいたのか?」
「そのようだな。さっきの苦しみ方は我が国の毒薬によるものと同じだ」
「な、何でそんなことを!?」
「「「「……」」」」
ミーラは青い顔をして叫ぶが、ローグとリオルは落ち着いて考察する。
「どう見ても敵に情報を与えないためだろうな。その予防策として自力で自害する手段を備えておいたってとこか」
「クロズクは情報を取り扱うことにもたけている。情報を守る手段に秀でていてもおかしくない」
「そのために死んだってこと!?」
「そういうことだろう」
「…………」
「そんな!?」
ローグ達は絶句した。価値ある情報、それを守るために自らの意志で死を選ぶなんて……。帝国の皇女リオルでさえショックを受けるのだから、クロズクという組織の非情さがよく分かる。だが、ローグ達にとっては貴重な情報源だ。これ以上彼らに死なれるわけにはいかない。知るべきことがたくさんあるのだ。
「尋問を続けるぞ」
「えええ!?」
ミーラはこの期に及んで尋問するというローグに驚きを隠せない。リオルは訝し気にローグに問いただす。
「……おい、どうするんだ。何か手はあるのか、自らの命を絶つ覚悟があるこいつらにどうやって……」
「そのための魔法でもある」
「!?」
「やはりな……」
「「「「……!?」」」」
リオルはそれを聞いてため息を吐く。ローグはまだ生きてる4人に向かって手をかざす。この状況に適した魔法を掛けるためだ。それも、彼らの忠誠心と自己犠牲の精神を踏みにじる魔法をだ。
「【外道魔法・色欲】『愚かな人形』」
ローグの手から赤紫色の光が漏れだした。その光はもちろん、縛られた4人に放たれる。
「……っ(ドキッ)!?」
「~~っ(ブルブル)! ~~っ(ブルブル)!」
「~~っ(ガクガク)!?」
「…………(ダラン)」
4人は個々で違った反応を見せたが、最終的に意識があやふやになったのか、動かなくなった。ついでに目は虚ろである。
「いい感じに仕上がったな」
「……これで大丈夫なのか?」
「ああ、早速試してみよう」
ローグは二人目の口の縛りを解いた。今度は何かを飲み込むようなことはしないでボケーっとしている。自害の心配はなさそうだった。
「よし、死なないな。今度は尋問を始めるか。おい、お前たちは何者だ?」
「……自分たちは、帝国軍クロズク所属、第2暗殺部隊………(省略)………」
「どうだ、ちゃんと話せるからいいだろう?」
「そ、それは……」
「…………」
自慢げに語るローグを見てリオルもミーラも複雑な顔になる。何しろ洗脳して尋問しているのだ。気分のいいものではない。
「何故俺達を襲った?」
「……『ウルクス』様の、命令で動いた、危険分子だからって……」
「クロズクの長『ウルクス』のことか!」
「知ってるのか、どんな奴だ?」
「目的のためなら手段を選ばない男だ。すでに老人のくせに私が後ろを取られるほどの実力を持っている。敵対することは分かっていたがやっかいな相手だ」
どうやら強敵のようだ。いずれ立ちふさがる相手になるのは確実のようなので、ローグはウルクスについて知る必要があると判断し、二人目に詳しく聞いてみた。
「ウルクスについて詳しく教えてもらおう。そいつは最近どんなことをしている?」
「……ウルクス様は第一皇子を利用しようとしている……」
「何だと!? 兄上を利用しようとしているだと!? どういうことなのだ!?」
「何のためにそんなことを?」
ミーラとリオルが動揺するがローグは冷静に分析を続ける。
「二人とも落ち着け。詳しいことを聞こうじゃないか。どう利用するというんだ?」
「……帝国の主導権を握るため……既に第二皇女はこちらの手にある、心を縛って……」
「心を縛る!? 貴様ら、一体何をしたんだ!? 場合によっては……」
「いや、落ち着けって」
この後、ローグ達は黒幕に目星を付けることができた。そして、この後の行動も決まった。
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