第55話 尋問1

※現在(リオルの部屋)


 落ち着いたリオルは、ミーラが敵を感知したことでローグが先に奇襲をかけて未然に防いだと聞かされた。理解した後は呆けてしまったが、少し間をおいて質問を始めた。


「……どんな風に倒していったんだ、手練れを5人だぞ?」

「敵5人の位置を正確に把握して、一人ひとり気絶させたり縛ったりしました」

「各個撃破というやつか? あいつ一人で?」

「そうですね。一人目を後ろから口をふさいでローグの『ビリビリ』でやっつけて、気付いた二人目をお腹を思いっきりパンチして倒しました。いっぱい殴ったから倒れたんですよ」

「…………」

「三人目は物音に気付いたらしくて、ローグは魔法で二人目に変装して近づいて油断したところを『ビリビリ』で倒して、4人目はローグに気付く間もなく『ビリビリ』で倒れました」

「…………」

「5人目はローグに勝てないと思ったみたいで逃げ出したんですけど、ローグが魔法で早くなったみたいで、追い抜かれた先で殴り倒されました」


 5人目に関してはミーラも協力していたのだが、彼女は自分の活躍を言いそびれてしまった。もっとも、ミーラ自身も気付いていないから仕方がない。


「…………その後、5人はどうなった?」

「今、外で縛られてます」

「……そいつらに会わせろ」

「はい、もちろんです。ローグも待ってます」


 ……とりあえず、リオルはローグに合流することにした。多少の怒りを抱きながら。





宿の裏から離れた場所。


 ローグは騒ぎになることを避けるために、倒した連中全員を宿から離れた場所に移動していた。リオルが合流してきた時、ローグは縛られた5人組に尋問を始めるところだった。


「おっ、ちょうどいいところに来たなリオさん」

「『リオさん』か。その呼び方でよかろう」


 リオルは呼び方に抵抗があったようだが、ムスッとした顔で受け入れた。


「偉そうだな。まあ、仕方ないけど」

「なっ!?」


 ローグは思ったことをそのまま口にした。もちろん小さな悪意を込めて。当然リオルは突っかかろうと思ったのだが、それどころではないので不本意だが置いといた。


「……ちっ、今はそんなことはどうでもいい。それよりも何故すぐに私を呼ばなかった! 敵襲なんだぞ! 分かっているのか!」

「人数と居場所を把握してるんだ。敵は5人。少人数で来て離れて行動してるなら、こっそり各個撃破したほうがいい。迅速に行う必要があったから、呼びに行く時間も惜しかったんだよ」

「な、何!?」

「それに俺は自惚れではないがかなり強い。だからこそ、クロズクとかいう連中の戦い方をもう少し見てみたかったというのもある。もっとも、こいつらは大したことなかったがな」

「「「「「……!」」」」」


 ローグは傍らにいる縛られたクロズクの5人組を見やる。万が一抜けられないように手の込んだ縛り方をしているため、忍者のような彼らでもどうしようもないようだ。5人組は悔しそうにローグを睨んでいる。選りすぐりのメンバーであっただけに、「大したことなかった」と言われるのは耐え難い屈辱なのだろう。


「くっ、せめて声くらいかけてくれてもよかったんじゃないか!?」

「リオさんの性格からして、敵の存在を察知したとか言えば慌てて武器を取りに行ったりするんじゃないか? そして突っ込んでいく。迅速に動くと言えば物音は厳禁なのにだ」

「うぐっ」

「…………」


 リオルは自分だけ後から呼ばれたことに不服を告げるが、ローグの言い分も分かるので言葉に詰まる。それに確かに慌てて行動したのも事実だ。これで反論できなくなった。


「ぐぬぬ……」


 リオルが悔しそうに黙り込んでしまう。流石に気の毒に思ったローグは嘘でも反省してみた。これでは話が進まないからだ。


「ま、まあ、確かに仲間外れにしたのはやりすぎだったかもしれないな」

「そうだろう、そうだろう!? 非はお前にもある!」

「……(言うんじゃなかったかな)」


 ローグは今度は後悔する。リオルが悪い意味で元気になったのだ。今度はローグが不機嫌になりそうだ。


「あの、ローグ、リオさん……そんなこと言ってる場合じゃないんじゃないの……?」

「……それもそうだな、すぐそばにこいつらがいるし」

「くっ、くそ! そうだった!」

「…………」

「「「「「…………」」」」」


 口を挟んだミーラの言う通りだった。ローグは気にしたそぶりもなく、リオルは悔しそうに話題を変えた。ギャアギャアうるさかったのが静まると注目は再び5人組に戻った。


「こいつらはクロズクの手下で間違いないか?」

「ああ、この装束は奴らの者だ。5人一組で暗殺に来る手口も聞いたことがあるから間違いないだろう」

「そうか、ならちょうどいい。聞きたいことが山ほどあるな」

「ここで尋問か?」

「ああ、せっかく情報が釣れたんだし利用させてもらおう」


 ローグは5人組の中から一人ずつ尋問を始めることにした。まず、戦った一人目から始める。そのために口元の縛りを解いて口が利けるようにした。

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