第四章 白狼の娘

白狼の娘 第一話 攫われた少女

 この話は、ユニが生まれる五十年近く前に起きた事件に端を発する。


      *       *


 リスト王国の全土に張り巡らされた街道のほとんどは未舗装である。

 その代わり道は十分に突き固められ、荷車によって掘られたわだちは定期的に埋められる。

 そうした管理工事は街道周辺の村々にえき(税の一種)として課されるが、その分年貢は軽減されるので民衆に不満は起こらない。

 路上の馬糞や牛糞などはよい堆肥になるので農家の奪い合いとなり、主要街道は極めて良好な管理がなされている。


 しかし、これが辺境の脇街道ともなると事情は一変する。

 道幅は狭く、中央部が盛り上がった極端な〝馬の背道〟になっている。排水対策ではなく、牛馬の糞が処理されないため固まってそうなるのだ。

 雨が降れば簡単に泥濘となり、干天が続けば埃が舞う。いずれの場合も悪臭が酷いのは言うまでもない。

 確かに原野を歩くのに比べれば遥かにましだが、決して快適な道ではなかった。


 その田舎の脇街道を、ゆったりと身体を上下させながら進む若い女性がいた。

 身長は百六十五センチほどである。引き締まった筋肉質の身体だが、若い娘らしくぱんとみなぎる脂肪とそれを包み込む瑞々みずみずしい肌で、実際は痩せ気味なのだが、ふっくらとした印象を受ける。


 目も口も大きく、くるくるとよく動く茶色の瞳は愛嬌たっぷりで、いたずらっぽい笑みを湛えた唇の端がきゅっと上がっている。

 栗色で緩いウェーブのかかった髪は、肩の上で切りそろえられていて、身体が上下するたびに空気を孕み、軽やかに跳ね踊っていた。


 丈夫そうな布地のパンツと革のショートブーツ、上半身にはシンプルな綿のブラウスを合わせ、その上から埃避けなのだろう目の詰まった生地の赤いケープを纏っている。

 そのケープが春の風にあおられると、時折めくれて白いブラウスが覗くが、そこには体つきとは不似合いな豊かな膨らみが隠され、歩みに合わせてゆさゆさと揺れている。


 貧しい開拓村をつなぐ辺境の脇街道だが、住民の生活道路でもあるためそれなりの往来がある。

 親郷に収穫物を納める者、鍛冶屋に農具の修理を依頼しに行く者、年貢減免の陳情に向かう者、それぞれの事情で先を急ぐ農民たちが行き交っていた。


 だがそうした人々は、この若い娘の姿を認めると、すれ違えぬほど狭い道ではないのに慌てて道の端によって立ち止まり、彼女に道を譲った。

 特に家畜を曳いていた農民は大慌てで羊や山羊を街道の下に避難させ、抱きかかえるようにして逃亡に備えなければならなかった。


 なぜなら、その娘がオオカミに跨っていたからだ。

 それもただのオオカミではない。体長は三メートルを軽く超している、馬よりも巨大な怪物だったのだ。


 オオカミの全身は真っ白な毛並みに覆われていた。

 よくよく見れば銀色の毛もかなり混じっていて、分厚い毛皮の下に盛り上がった筋肉が歩むたびに動くと、キラキラと輝く毛並みが波打ち、銀色の波紋がさざ波のように全身を駆けめぐる。

 この巨大な白狼はくろうの名は、ロキといった。


 顔を引きつらせて白いオオカミをやりすごし、その後姿を見送った農民は、呆然として独りちる。

「何だ、あれは?」

 すると、周りにいた農民たちがたちまち寄り集まってきて噂話の花が咲く。


「あんな化け物みたいなオオカミに喰われもせずに乗ってるんだ、魔女にちげえねえ!」

「馬鹿だな、お前は。今どき魔女なんぞいてたまるか!

 ありゃあ、召喚士だよ」

「召喚士? ああ、そうか! そういや昔、俺も蒼城市で見たことがあったな。

 だが、そいつはでっけえ角のある牛みてえな怪物を連れていたぞ」

「召喚士によって連れている怪物が違うらしい」

「なんでいくさでもないのに召喚士がこんな田舎を歩いているんだ?」


 すると二人の男が同時に「あっ!」と小さな声をあげる。

「……ひょっとしてあれか?」

「ああ、間違いねえ。この間も北のサイジ村で出たらしい」


 ほかの数人はわけが分からずに、いらいらして話に割り込んだ。

「おい、一体何の話だ? 出たって、何がだ?」


 二人の男は、その必要もないのに素早く周囲を見回すと、声を潜めた。

「オークだよ、オークが出たんだよ!

 あの召喚士はこの辺の親郷が雇ったんだろう。

 噂じゃ召喚士の幻獣は、オークを二つに引き裂いて喰っちまうそうだ!」


      *       *


 農民たちが噂したとおり、白狼に跨った若い娘は召喚士で、サイジ村の親郷であるクリル村の依頼を受けてオーク狩りに向かうところであった。

 彼女の名はヨーコ・マクレーンといい、今年二十三歳になる二級召喚士である。


 十八歳で王立魔導院を卒業してからは、主に王都と白城市で誘拐、強盗犯などの追跡と捕縛を私的に請け負う仕事をしていた。

 名のある貴族、富豪や大商人は、そうした犯罪組織に狙われることが多く、さまざまな事情から秘密裏に解決したいと望むケースが多かった。

 ヨーコはそうした依頼を受け、オオカミの鋭敏な嗅覚を活かしてそこそこの成果を上げていた。


 成功報酬は大きかったが仕事がいつ入るか分からず、彼女の生活は極めて不安定なものであった。

 そんな中、タブ大森林の東端にあるというサクヤ山が大噴火を起こしたのだが、それ以来辺境にオークが出没するようになり、家畜ばかりか人的な被害も発生するようになった。

 まだ都市部の関心を呼ぶまでには至ってないが、辺境では大問題となっていた。

 各村の肝煎きもいりや親郷の村長は対策に頭を悩まし、彼らの陳情によって軍が出動することになった。


 ところが、討伐部隊の駐留は貧しい辺境の村々にとっては負担が重すぎ、農民たちはたちまち音を上げた。

 確かに兵士の給料は国の負担で報酬の必要はなかったが、彼らの宿舎や提供する食事、燃料の薪、軍馬の飼葉は村が用意しなければならなかったからである。


 そこで、枝郷を取りまとめる親郷の村長たちは二級召喚士の存在に目をつけ、報酬を用意して主要な都市部にオーク討伐の募集をかけた。

 国も軍を派遣するより負担が少ないこの対策を歓迎し、勧誘の支援や報酬の援助を約束した。


 ヨーコはこうした募集を受けて、辺境に向かったのである。


      *       *


 親郷クリル村からは、東に向けて開いた扇のように六つの支郷が点在している。サイジ村はその最北端に当たる。

 この村では今、大騒ぎとなっていた。一週間前にオークが放牧地を襲い、羊が一頭さらわれたのである。


 放牧地の頑丈な柵はいとも簡単に壊されており、そこには大きな裸足の足跡が残されていた。

 サクヤ山の噴火以来、ぼつぼつと辺境ではオークの襲撃が起こるようになり、辺境では近頃最大の関心事となっていたから、サイジ村の人たちも「とうとう来たか」という思いだった。


 辺境の開拓村は小規模だが、王国の古都のような城塞都市を模した構造をしている。

 どんな魔物が潜んでいるかもしれぬタブ大森林の中に拓いた村である。外周に頑丈な防壁を築き、その内側で守られた家に住むことで住民は安寧を保っていたのだ。


 開拓村は周囲の森林を切り拓いて生活圏を広げていく。そのため耕作による収穫で潤うようになるには相当の年月が必要になる。

 それまでの農民の生活を支えるのは、羊や山羊の放牧である。

 取り合えず巨木を切り倒して陽の光の当たる平地を作れば、簡単に雑草の生い茂る広い土地が手に入る。家畜を飼い育てるにはそれだけで十分なのだ。


 針葉樹に覆われていた土地は痩せていて、そこを農地にするには大量の施肥が必要となる。

 家畜の糞尿は、畜舎に敷かれた藁とともに集積されて堆肥が作られる。それを開墾した土にすき込んで少しずつ土地を肥やし、畑の収穫を上げていくのだ。


 家畜からは肉が得られ、乳を搾り、その毛から糸を紡ぐことができる。農耕を生活の主体にするまでは、文字どおり開拓民の生命線であった。

 したがって、開拓民にとって羊一頭、山羊一頭の価値は信じられないほどに重かった。

 オークの餌にされて、「人間に被害がなくてよかったね」と笑って済ますわけにはいかなかったのだ。


 サイジ村の肝煎(役人を兼ねる村のまとめ役)は、ただちに親郷に急使を出して対処を要請した。

 親郷は枝郷からあがる生産の一部を吸い上げているだけに、一蓮托生の立場にある。クリル村の村長は配下の村に被害が出る前から王都や四古都にオーク討伐に当たる召喚士の募集を出していたが、それは他の親郷も同じことで、なかなかよい人材が捕まらなかった。それがやっと最近になって若い二級召喚士の応募があったのだ。


 その召喚士が若い娘だということを知った親郷の村長は驚き、多少の不安を抱いたが、今さら贅沢は言えない。

 村長はヨーコに対して銀貨十五枚という多額の成功報酬を約し、彼女の到着を待っていたかのようにオーク襲撃を訴えてきたサイジ村へと送り出したのだ。


 オークに襲われたサイジ村では、当然のことだが警戒を強めていた。

 防壁に囲まれた村内には急ごしらえの羊小屋が作られ、家畜たちの夜間の安全が図られた。

 日中の放牧には、武装した男たちが駆り出されて警備に就いていた。

 武装といっても、彼らが手にするのは辺境で〝ホーク〟と呼ばれる(正式にはピッチフォークという)、干し草運びに使う先の尖った農具であった。


 最初の襲撃から五日目のことである。いかに食い応えのある羊であっても、オークだってそろそろ食い尽くした頃だろう。

 緊張がいや増す村人であったが、その日の朝、親郷からの急使が届き、オーク討伐の召喚士が村へ向かっていて、午後にも到着するだろうと伝えてきた。

 村人の安堵と喜びは大変なものだった。

 家畜の警備に当たっていた男たちの顔にも、久方ぶりに笑顔が浮かんでいた。


 リーアムという男もその一人だ。まだ三十歳前の若い農夫で、逞しく寡黙な男であった。

 しかし無口な彼も、さすがに今日ばかりは親郷の知らせに興奮し、放牧地に着いてからも数人の仲間たちとまだ見ぬ召喚士と幻獣についての噂話に熱を入れていた。

 この頃の辺境では、新生児に対する適正検査儀式のおかげで召喚士の存在そのものは知られていたが、実際にそれを見た者など数えるほどしかいない。


 夜通し駆け続けて急を知らせてくれた親郷の使いの話によると、召喚士は天女のように美しい若い娘で、その幻獣は小山のように大きな化け物オオカミであるらしい。

 使いの男は「あれならオークなんて一口で飲み込んでしまうだろう」と請け合っていた。


 こうした話が大げさであるのは世の常である。ヨーコは確かに美しかったが、むしろ愛嬌があるという方がしっくりくる顔立ちだった。ロキもオオカミとしては巨大だが〝小山のよう〟とは言い過ぎである。

 しかし、召喚士も幻獣も見たことのないサイジ村の人々はすっかりそれを信じ込み、期待に胸を膨らませたのである。


 リーアムたち見張り番の農夫たちは、召喚士を出迎え(見物)にいけないことを歯噛みして口惜しがった。彼らだって、怪物オオカミや絶世の美女を一刻も早く見たかったのだ。


「だが、召喚士さまはオーク退治にいらしたのだ。俺たちとともに家畜の守りについてくれるに違えねえよ」

「そうだな、そうなったら身近でその美人やオオカミを見られるってわけだ。だけどおっかねえよな、うっかり俺たちを喰ったりしねえよな?」


 農夫たちが噂し合っていると、一人の男が急に周囲を見回し、仲間の肩を抱いて引き寄せた。

 彼はその必要がないのに小声でささやいた。

「これはお前らだから話すんだがな、実を言うと親郷から使いで来たケリーって奴は、うちの女房の親戚なんだ」


「本当か!」

「ああ、女房の親爺殿の従妹が嫁にいったのがクリル村でな、その娘がケリーの兄貴に嫁いだんだ」

「なんだ、それじゃ血がつながってないだろう」

「親戚には違いあるめえ、とにかく互いに顔は知ってるんだ。それでな、朝にこっそりケリーから話を聞いたんだが、あいつは召喚士さんのことでまだ話していないことがあるって、俺に教えてくれたんだ」


 農夫たちは驚き「なぜそんな重大事を今まで黙ってたんだ!」と彼を責めたてた。

「だから、お前らだけには教えるんだよ。

 いいか、召喚士さまは若い娘で大層な美人だそうだ」

「それは聞いたぞ! それでどうした?」

「王都で育った娘だ、この辺の芋丸出しの田舎娘とは、言葉遣いも立ち居振る舞いもまるで違うそうだよ。おまけにな……」

「うんうん」

「……乳が風船みたいにデカいらしいぞ!」


「おおおーーーっ!」

 男たちからたちまち歓声が沸き起こる。

 その時だ。彼らの背後から「がさがさっ」という雑草を掻き分ける音が聞こえてきた。

 農夫たちは一斉に先の鋭く尖った農具を手に振り返った。


 だが、ホークを向けられ、呆然として立ち止まっていたのは女の子だった。

 質素な綿のワンピースに洗いざらしのエプロンをつけ、黒く長い髪はスカーフで包み、腕には大きな蔓籠をかけていた。典型的な田舎の女児である。

 驚きに見開かれた瞳は濃い茶色で、切れ長の目をしていた。

 誰だと問うまでもない、その顔立ちはリーアムと瓜二つである。


「なんだエーファじゃないか」

 男たちはほっとして武器をひっこめる。狭い村であるから、彼らはみな顔見知りである。


 エーファはリーアムの一人娘で今年十一歳になる。父のリーアムが十八歳、母のアシュリンが十六歳の時の子どもであるが、田舎ではその年齢で子を産むのは普通のことで、それよりも一人っ子であることの方が珍しかった。


「駄目じゃないか、放牧地は危ないから来ちゃいけないって言っただろう? まったく、アシュリンの奴は何をやってるんだ……」

 父親は一応叱りつけたが、その目は笑っている。娘が可愛くて仕方のない彼は、エーファが会いに来てくれたことが嬉しいのだ。


「あの……父ちゃん、お弁当持っていくの忘れたでしょ?

 あたし、届けにきたの」

 エーファはそう言うと、被せていた布巾を取って籠を差し出した。

 厚切りの黒パンにバターを塗り、燻製肉の薄切りを挟んだサンドイッチに瓶に入れた山羊のミルクである。


「ああ、そうか! 召喚士の話で熱くなって、すっかり忘れていたんだな。

 ありがとよ。だが、ここは危ないから早くお帰り。

 お前も聞いているだろう? 午後には召喚士さまが怪物みたいなオオカミを連れてオーク退治に来るそうだ。

 父ちゃんは見張りでここを離れられないから、お前が代わりに見て夕飯の時に父ちゃんに詳しく教えておくれ」


 エーファは「うん!」と元気よく答えると、ぱたぱたと村へ向けて駆け出した。

 しかし、数歩も行かないうちに突然立ち止まり、くるりとこちらを向く。

 そして父親の周りで笑顔を受けベている農夫たちにむけて、「忘れてた!」とばかりにぺこりとお辞儀をした。


『なんて可愛いんだ……!』

 農夫たちは一斉に相好を崩したが、それは一瞬のことだった。

 にこにこしていたエーファの表情がいきなり変わったからだ。

 少女の顔は驚きとと恐怖に支配され、半開きになった口からは声にならない悲鳴が吐息となり、「ひゅう」という笛のような音を立てて漏れ出していた。

 そしてその眼差しは、農夫たちの背後を見据えている。


 男たちは恐るおそる振り返った。

 彼らのすぐ後ろには、いつの間に現れたのだろう、身の丈二メートルを超す半裸の大男が立っていた。

 瘤のように盛り上がった筋肉、突き出た太鼓腹、豚のように垂れた耳と下唇から突き出た牙。手には木の根をそのまま掘り出したような棍棒を引きずっている。

 彼らはその怪物を初めて見たが、その正体に迷うことはなかった。――まぎれもない、噂に聞くオークの姿そのものだったのだ。


      *       *


 一方、サイジ村の正門には、村人たちが鈴なりになって集まっていた。

 もう昼時で、多くの者はいったん家に戻ったが、パンと水筒を引っ掴むとすぐに戻ってきた。

 召喚士が来るのは〝午後〟と告げられていたが、昼の鐘が鳴ればもうそこからが午後である。誰一人として、召喚士の到着を見逃す〝間抜け〟にはなりたくなかったのだ。


 村人たちはのんびりと街道の先を見守りながら、召喚士と幻獣についての噂話や想像を、飽きもせずに語り合っていた。

 そのざわざわとした空気を押しのけるように、別の方角から何やら叫び声が聞こえてきた。

 群衆の喧騒はぴたりと止み、誰もが声の方向を見やった。


 遠くの方から数人の男たちが走ってくる。全力で走りながら両手を大きく振り、彼らは何事かを必死で叫び続けている。

 やがて、風に乗ってその声がはっきりと届き始めた。

「オークが出たぞーーーーっ!」


 村人たちは一斉に声を上げて走り出した。それは男衆の怒号であり、女衆の悲鳴であった。

 群衆は急を知らせにきた者たちを迎え入れると、取り囲んで口々に事情を訊ねた。

 息も絶え絶えな男に、誰かが水筒を差し出すと、彼はそれを奪い取るようにして水を飲み干し、やっと息をつく。

 そして咳き込みながら叫んだのだった。


「オークが出た! ……リーアムがやられた! エーファはさらわれた!」

 次の瞬間、凄まじい悲鳴を上げて一人の女性が倒れた。エーファの母親であるアシュリンだった。

 肝煎が男の肩を鷲掴みにして揺さぶる。

「それで? オークはどうなったのだ! リーアムは生きているのか? エーファが攫われたとはどういうことだ!」


 男は涙を流しながらやっとのことで説明した。

「リーアムは多分……死んでいる。オークに殴られて、頭が背中の方にぶら下がっていた。

 俺たちは逃げ出して、遠くから見ているしかなかったんだ。

 オークはリーアムの足を掴んで引きずっていった。エーファは気絶したままオークが鷲掴みにして、そのまま連れていかれたから、まだ生きているとは思う。羊たちは無事だ。

 奴はそのまま森に姿を消した。その後のことは分からない」


 その場は騒然となった。

 数人の男たちがアシュリンを抱きかかえて彼女の家へと向かい、仲のよい女たちが心配して付き添った。

 それ以外の女たちは子どもの手を引っ張って家に閉じこもり、鍵をかけた。

 肝煎は男たち全員に武器を持たせて現場に向かった。

 もう、召喚士を出迎えるどころではなくなったのだ。


 その半時後、ヨーコがサイジ村に到着した際には、彼女と白狼のロキを迎えてくれたのは、二人の門番だけであった。

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