第13話:厄介事
それからは大変だった。
授業の間の休憩時間に昼休み。危惧した通り、本当に見世物パンダ状態だった。
寝込んている(こととなっている)間に身長が10センチ近くも大きくなれば、物珍しく見られても不思議ではない。
クラスメイトからはもちろん、他のクラスの者までわざわざ見にくる始末。
それに雫や碧人、雅さんに関しては、仲が良いこともあって徹底的に追求して来た。納得いっていなかったようだが俺もわからないで突き通した結果、それ以上聞いてくることはなかった。
「あ!あの人じゃない?」
「ああ、あの高崎さんに振られてショックで身長伸びた人!」
なんとも言えない気持ちである。廊下を歩くたびに噂される。それも意味のわからん不名誉な内容で。
振られてショックで身長伸びるなんて、どんなびっくり人間だよ。そんなんで身長伸びるならみんな苦労してないわ。
「真白、失礼。高崎さんはいるかい?」
教室のドアが勢い良く、開けられる。あれは、八代だったか。生徒会役員の。
高崎さんも同じく生徒会役員なので生徒会の仕事か何かだろうか。
「あ、八代君だ。今日もかっこいいな〜!でもあの噂って本当なのかな?」
「噂?あの八代君と高崎さんが付き合っているっていう噂か。本当なんじゃない?よく一緒にいること見かけるし、それに今も呼び捨てしてたし。」
「そうなんだあ〜。残念。でも高崎さんなら八代君ともお似合いだし、仕方ないかな。」
クラスの女子たちが話をしている。そう、八代はイケメンであり、よくモテる。
スポーツ万能で秀才。性格も良く、親しい友人も多い。まさにカースト最上位の存在である。
しかし、八代はいろんな女子に手を出している、女癖の悪いという噂がある。でもこれは一部の生徒が嫉妬して流したガセネタだろう。完璧すぎる人間というのはいつの時代も敵がいるものだ。
そんな八代が同じく女子の中で最上位である、高崎さんと一緒にいれば噂が立つのも必然と言える。
ただ、高崎さん本人は否定しているみたいだが。
「はあ。相手は同じ生徒会役員であの八代。俺に勝ち目は初めからなかったって訳かあ」
いつまで落ち込んでいても仕方ない。今日はもう帰るとしよう。
今日は雫も委員会って言ってたな。
帰ったらまたご飯作りに来てくれるっていってたけど、今日は流石に留守にはしないようにしよう。後が怖い。
教室を出て廊下を進む。もう放課後なので生徒の数もチラホラしか見えない。人が少ないので昼間のようにひそひそされるということはなかった。
先ほどの八代と高崎さんのことを考える。やはり好きな人が別の人とできているという話は面白くないものだ。
「ひゃっ!」
考え事をしていると、廊下の曲がり角で誰かにぶつかってしまった。ぶつかってしまったのは女生徒のようだ。リボンの色から見るに上級生のようだ。
周りには彼女が持っていたであろう資料が散らばっている。
「すみません、大丈夫ですか?」
慌てて手を伸ばす。彼女は手を取ると立ち上がった。
「ありがとう。私の方こそ失礼した。もう少し注意をしておくべきだったな」
立ち上がったその人は、この学校の生徒会長、音坂凛だった。
生徒会長である音坂凛は、生徒からも先生からの評判もよく、理想の生徒会長として羨望の眼差しを向けられている。
そして、その容姿。美しく長い髪に高い身長。クールな性格の彼女は、高崎さんとはまた違った魅力のある女性である。
2年の高崎さんと3年の音坂さん、そして1年の
俺は断然、高崎さん派だが。
それにしたって、容姿で選んでんじゃないってくらい生徒会は美男美女揃いだよな。
「ん?どうかしたかい?」
音坂さんの顔を見ていた俺は、不思議に思われたようだ。
「すみません、なんでもないです。これから生徒会ですか?資料すみません、拾いますね。」
音坂さんに落とした資料を拾いながら問いかける。
そんな資料には各部活における部費の予算や備品の一覧などもあった。
ん?神楽山における封印に関する調査...?
資料を拾っていると一部、よくわからない内容の書いてある資料があった。
「ああ、そうだよ。少し忙しくなりそうでね。資料拾ってくれてありがとう。それでは失礼する。」
会長は、俺から急いでその資料を奪い取ると足早に消え去って言った。
封印ってなんだ?この学校になんの関係が?
そうか。なんかの地域調査かな。生徒会も大変な仕事やってるんだな。
「なんだこれ?」
会長が尻餅をついたところになにか落ちている。
「生徒手帳か。どうしようこれ。」
生徒会まで届けるか。
「お、三波。丁度いいところに。」
ポケットに入れ、生徒会に向かおうとしたところで担任の先生と遭遇してしまった。これは厄介ごとの予感。
「三波、ありがとう。助かったよ。これは礼だ。」
「どうも。」
結局あの後、先生に授業で使う教材運びを手伝わされてしまった。かなり重い物が多かった。お礼には缶コーヒー。重労働の割に対価が少ないと思ったのは内緒だ。
重労働で疲れた俺は、そのまま家へ帰ることにした。
会長の生徒手帳を届けることを忘れて。
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