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「家の近くの、それっぽいところ、ですか……さっきの動画では関内さんの住まいは新宿との話がありましたが」
「そうですが……まさか私の家に来ようっていうんですか? 絶対に止めてくださいよ。最低」
「とんでもない。ですが、問題のいち早い解決をお望みであれば藁人形の発見は重要になりますので、大体の位置までは案内をお願いします」
「……わかりました。やればいいんでしょ?」
関内は渋々といった様子で了承した。
「動画の二人がどこかに捨てた藁人形を探す。そして動画が撮影された神社に趣いて夢の原因を突き止める。僕は今からこの二つに取り掛かります。その間、化け物のような、人間に脅威をもたらす存在が現れれば排除にあたります」
「排除……ちゃんとやってくれるんですよね?」
「依頼を受けた以上、関内さんの安全を守ることも含めて、最大限の努力はさせてもらいます。ですが、最初に申しましたように、命の保証は決してお約束できません。何しろ、どんな相手が出てくるかはわかりませんので」
関内が深い溜息をついた。
「僕の活動は、あなたが止めるか、こちらが脅威の除去が終わったと判断した時点で終了します。その後に処置が不十分だと感じたのであればもう一度依頼をしてください。追加の依頼料は無しで再調査を行わせてもらいます。まあ、そんな事例は今まで一度たりともありませんでしたので、こちらの見立てはある程度信用してもらっていいと思います」
「あなたがお金だけ持ち逃げする可能性だって無くはないでしょう?」
紅色がその言葉に微笑み、自分の横に立てた長方形のケースをぽんと叩いた。
「ならばこれです」
着席した紅色の背丈と同じくらいの大きさのそれは、茶色の合成皮革に立派な錠前のロックが二つ付いた箱だった。
「何ですか? その大きい箱」
「この中には僕の大事な商売道具が入っています。依頼をこなす間、あなたにはこれを好きなだけ持っていてください。ただし、僕が要求した場合はすぐに渡してください。あなたの身の安全のためにもね。ああ、あなたも、その箱を開けようとしたり、持ったまま何処かに逃げてケースの中身を二束三文で売り払おうなんて気は一切起こさないように、十分に気を付けてください。鶴の機織りを覗いた老夫婦や浦島太郎よりも遥かに
関内がひどく怪訝な顔になる。
「中身は爆弾でも入ってるんですか?」
「――バリトンサックス」
「は?」
「その箱はバリトンサックスのケースです。だから、そういうことにしておいてください」
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