第12話 出発

 微妙に狂わされた、そもそも有って無いような計画の修正は早々に諦め、晩飯と風呂を済ませてから再びネバエンへとログインする。

 『Newvision』のメッセージアプリに通知があったので確認したが、「電子黒板が白いのになんで黒板なのか知ってる?」などという、テスト中に寝落ちをかまして赤点になった馬鹿からのスパムだったので無視する事にした。

 早速完成しているであろう武器の受け取りに向かう。


「あれ?店間違えたか?」


 武器を預けた店を覗いてみると、カウンターには知らない顔が立っていた。俺の知っているオヤジと同じ犬系獣人のようだが、体はひとまわり小さいうえ、ケモノ度が違う。オヤジはよくある耳と尻尾をつけたような感じだったが、こっちは犬を二足歩行にして上手く人型に当て嵌めたかのようだ。

 そして何より性別が違う。


「あン?なんか用かい」


 おっと、繊細そうな見た目に反してだいぶ粗野な喋り方だ。


「いや、ここに武器の強化を頼んだはずなんだが」


「あーアンタかい、ウチのに武器預けた星人の冒険者ってのは」


 ウチのというにはあのオヤジはこの人の旦那なのだろうか。あのガタイと並んで立っているところがどうにも想像できない。


「あー、まあ多分そうかな」


 この武具屋にくるプレイヤーが俺だけしかいないってわけじゃないだろうが、その辺りの判断はどんな風になされているのか非常に気になる。


「ったく、最近のヤツらお前みたいなヒョロイのばっかだな。もっと身体を鍛えろってんだ。ホラよ」


「ありがとう」


 あのオヤジくらいの体格をえらぶプレイヤーはそうそう居ないだろうよ、と内心で苦笑しながら武器を受け取る。

 強化された武器は、特に見た目の変化はなかった。強化素材がそもそも生産に使うものと同じだし当然だろう。ちなみに、今更確認したのだが、生産可能な武器は鉱石素材と骨素材の基本武器のみだったので、特に問題はなかった。

 さて、性能はどうなったのかな、と。


『ロングソード+1 (ATK:10)

 要求ステータス:なし

 標準的な鉱石の剣。鍛え直された刃は使い手の想いに応えるだろう』


 多少の武器攻撃力の上昇と、フレーバーテキストの変化があるが、特に武器スキルが増えたりなどはないようだ。初期強化だから当然と言えば当然か。

 オヤジの奥さんに礼を言いながら代金を支払い、早速装備をした。本当なら盾も欲しいところだが、完成品の取り扱いはないし、生産に必要な素材も足りていないので今回は見送る。



名前:アリー(出自:高貴なる者)


Lv:17

職業:騎士

所持金:5200M


称号:5

特殊称号:1

表示称号:『はじめの一歩』

     『加護を授かる者』

     『祈りを受ける者』

     『見習い騎士』

      +1


状態:『女神信仰:極低』"効果なし"


HP:303

MP:162

STR:37

VIT:32

AGI:27

DEX:14

MND:10

LUK:30

残りポイント:5


装備

武器:ロングソード+1(ATK:10)

頭:牛猪革の兜(DEF:3)

胴:牛猪革の鎧(DEF:3)

腰:牛猪革の腰巻(DEF:3)

足:牛猪革のブーツ(DEF:3)


スキル:騎士系統

    『スラッシュ』

    『パワースラッシュ』

    『チャージスタブ』

    『精神統一』


    その他

    『ジャストパリィ』

    『挑発』

    『ダッジステップ』

    『ガード』



 ステータスはおおよそSTRとVITには振りつつ、AGIとDEXにも振り分けてる感じだ。なんとなくだがDEXは武器装備に関するステータスになりそうなので、もう少し振っておけば良かったかと少し後悔している。

 LUKに関しては、アイテムドロップとかにも影響があるようだが、何より確率が絡む事象に関しての補正があるようなので振っておいて損はない。

 MNDは、もう諦めている。幸い騎士スキルの『精神統一』である程度は上昇させられるので、ソロの時や脳筋パーティの時はそれとアイテムで我慢だ。

 スキルの方だが、ジョブ系統スキルの場合はより強力なスキルが出現しても下位互換スキルは消えないらしい。逆に行動参照で覚えるスキルの方はより最適化されるといった感じだろう。

 これは完全にタンクをしろと言われているな。


「もとよりそのつもりだが」


 ステータス欄を閉じ、転移ポータルに向かうことにした。向かうは西門、港湾都市に向けて伸びる街道だ。

 特に教会関係NPC以外からなにか悪感情が向けられているということもなく、門衛からはにこやかに送り出された。その能力を持って強力なモンスター達を狩る星人は、単純に彼らの助けになっているのだろう。


「これからどんな風になっていくんだろうか」


 NPC vs プレイヤーみたいな地獄絵図を想像して少し身震いしながら、俺は西を目指して歩くのだった。

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