第333話 的なもの
「リン。きたわよ」
現地時間23:50分。満天の星が綺麗に見える時間にリリーが警戒の声を上げた。
……それほどの相手ってことか。前回の戦いを生き残っただけはある……。
>っと鑑定するが、それらしい兆候はない。だが、なにも鑑定されないことが襲撃されてることのいい証明だろう。
「配置した万能偵察ポッドは?」
「第六から第四までの防衛線のが機能停止してるわ」
察知されず機能を停止させてくるか。極めたヤツはおっかねーな。
「今、第三防衛線を突破されたわ」
「どちらからきてる?」
「北西。真後ろね」
さすがに真正面の海からこないか。わざと視界のいい場所に陣取ってるしな。
「能力範囲は?」
「五十から六十メートル。曖昧ね。風の影響を受けてるわ。上空は十メートルもないわね」
重力に支配され、風に左右されるか。そうなるといくつかに絞れるな。
「風を吹かして。海側から」
そうミカンに指示を出すと、能力範囲が動いた。これでまた能力が絞れた。
「海から三十人ほどやってくるわよ」
自ら陽動するか。いや、海からのも陽動かもしれんな。
「空はどう?」
「気球、いや、飛行船が一機、いるわね、武装した者が十二名。筋肉のつき方からして特殊訓練した暗殺者、ってところかしら」
随分と物々しいな。ねーちゃんらを生け捕りしたヤツの襲撃方法とはおもえないな。神の使徒とは思えないぞ。
「うん。あなたもね」
「…………」
か、神の使徒も人間ってことさ。うんうん。
「さすがに地中からきてないよね?」
「震度計に異常はないわ。目の前には異常者がいるけどね」
なんだろう。オレの周りは毒を吐かないと死んじゃう病気でも蔓延してるのだろうか。
「発生源ならわたしの目の前にいるわよ」
へー。じゃあ、取り除いててよ。
なぜかパンチをしてくる守護天使。オレの後頭部に発生源がいるのかな?
「とりあえず、海からのを攻撃して」
「了解。機雷、強制点火」
三十にも及ぶ機雷が大爆笑──ではなく、大爆発。海からの使者を吹き飛ばした。
「ご臨終です」
その報告もどうかと思うが、まあ、結果はそれなんだから問題ナッシング。よき来世であることを形だけでも祈っておきます。
「飛行船より敵が降下したわ」
「撃ち落として。あと、飛行船を捕獲。ウェルヴィーア教の御座船とする」
何日もかけて竜車移動は辛い。空を飛べる乗り物があるなら使わせていただこうじゃないか。
「接収と言うより没収でしょうが」
ウェルヴィーア教とマイティア公国の名による接収です。
「第二防衛線を突破されたわ。慌ててる感じね」
連携が取れてない感じだな。
「多少なりとも怪我させてもいいから暗殺者は捕獲しろ」
暗殺者だったらそのノウハウは貴重だ。ウェルヴィーア教の糧となってもらいましょう。
「正面、約十キロに海賊船。数は六隻。熱量から一隻に五十名は乗船してるわ」
「大量だこと」
「接収する?」
「いらない。飛行船は遠ざけろ」
飛行船の技術が得られたら海賊船などいらないさ。汚そうだし。
「第一防衛線を抜かれた。距離、五十メートル」
足腰が丈夫なヤツだ。あの密林を数分で駆けてくるなんてな。
「リン」
警告するほどのなにかが迫ってきてるってことか。
砂を踏む音がして年齢不詳のグラマスな女が現れた。
「こんばんは。リンの仕掛けた罠にいらっしゃい」
自分の能力にかかってないことに一瞬だけ驚いたが、前回の戦いを生き抜いただけはある。すぐに妖艶な笑みを浮かべた。
「わたしがくるのがわかってたみたいね」
「ううん。知らなかった。ただ、いつ襲撃されてもいいように前以て用意しただけ。それを考慮できなかったそちらの落ち度」
「……そうね。ルルの計画を潰しただけはある。わたしでは相手にもならなかったわね……」
「ルルって言うんだ。災害竜を計画した奥の奥にいた邪神の使徒は」
ようやく名前まで辿り着けた。そして、逃げた先はアイカワ帝国だとわかったよ。
「あなた、ルル並みに厄介ね」
「リンは何度もそのルルに殺されかけた」
「普通は一度目で殺されてるものよ。神の使徒を何十人と殺した存在なんだからね」
想像以上にヤバい存在でした! 今からでも仲良くなれないかな?
「無理でしょう」
だよね~。知ってた。
「降伏を勧める」
「できたらそうしたいわ」
「できない理由はなに?」
「呪いをかけられた。誰にも解けない死の呪いをね……」
胸元を露にすると、乳房の下に魔法陣っぽいものが深く刻まれていた。
「邪神の使徒の能力?」
「ええ。どんな能力かはわからないけどね」
自虐的に笑うボインなねーさん。
「あなたがどれだけかは知らない。けど、あの女には勝てないわ。降伏しなさい」
「それはできない相談だ。オレは長いものには巻かれるが、人を道具とするヤツには巻かれない。まして裏でコソコソ動くヤツは絶対に屈しない。必ずその目的を粉砕してやるよ」
そのルルってヤツはダメだ。絶対に譲歩しないタイプだ。目的のためなら失敗も恐れない。必ず目的を果たすヤツだ。そんな存在に屈服しても明るい未来はやってこない。
「名は?」
「……サリーよ……」
「では、サリー。そのルルとやらの目的を砕くところを見せてやるよ」
手のひらの創造魔法でバリアーを張る。
「ミカン。点火!」
「ハァー。点火」
ミカンの発動許可により、地中に埋めたTNT爆破薬的なものを一トン、爆発させた。
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