第329話 弱点があった!?

「……海が地獄のようだわ……」


 守護天使が地獄とか言うと洒落にならんわな。まあ、オレは神の使徒だから天国にいくけど。


「その自信はどこからくるのかしらね?」


 神の使徒と言う事実からですが? それともなにか? 神の使徒を地獄に落とすってのか? それならオレは邪神側に寝返って地獄の番人にしてもらうぞ。


「ハァー。主よ。正しき清浄なる世界のために地獄の業火でリンの魂を焼いてください」


 守護天使とは思えない願いである。あと、そんな願いをして清浄になった世界ねーから。神、無能~! って言ったら噛みつかれました。歯ないのに痛いよ!


 ……クソ。オレが地獄に落ちるよりリリーのほうが闇落ちしそうだな……。


 頭を齧られながら浮いた魚を見てたら煮魚が食べたくなった。


「だったらあそこに浮いてる魚を責任持って食べなさいよ」


 オレは煮ただけの魚を食いたいわけじゃない。酒、みりん、醤油、あと生姜を足して煮たものを食いたいんだよ! でも、リヴァイアサンはあとで鍋にして食べるから万能偵察ポッドで回収しておきます。


「リン。海が冷めたぞ」


 うん。今はスズだからちゃんと使い分けてください。変身してるのがバカみたいじゃないのよ。


「じゃあ、いこうか」


「片付ける気なしなのね」


「自然が片付けてくれるって!」


 大丈夫大丈夫。自然の回復力は沸騰した海をいつもの海にしてくれるって。別に漁は他でやってるんだから問題ナッシングさ!


 皆の白い目などなんのその。そんなものに負けてたら邪神となんて戦ってらんねーよ。図太く、大胆に、強い意志を持って生きようぜ! ダゼ☆


「イビス連れてきたほうがよかったんじゃないか?」


「連れてきたところでリンは止まらないでしょう」


「……それもそうだな。てか、リンを止められるヤツ、いなくね?」


「きっと敵にいるわよ」


「……敵も大変だな。同情するよ……」


 おい、実の姉。敵に同情するなら味方しろ!


「そう言えば、同情するなら金をくれ! ってドラマあったわね。わたし好きだったわ」


 守護天使が日本のテレビドラマなんて観てんじゃねーよ! いや、オレも観てたけど! おもしろかったよ!


「もー! バカやってないで出発するよ!」


「大概バカやってんのはあんただけどね」


 バカじゃない! 一生懸命生きてんだよ! まあ、確かにバカなことをしたこともあるけど! クソ! こんなことなら一人でくるんだったよ!


 プンスカと船に乗り込み、魔砲少女として船首に立ち、操船はミカンに任せて出発進行。海賊が根城へとゴー! だ。


 時速三十キロくらいで海を進み、一時間くらいで酔いました。オゲェェェッ!


「汚いな~」


「リンが船に弱いとはね。なんにでも弱点はあるものなのね」


 自分でもびっくり。まさか船に弱いとは思わなかった。シルバーや竜車、ワイバーンに乗っても酔わなかったのに……。


「……神の呪いか……?」


「単なる体質でしょう。死ぬようなもんじゃないんだから苦しんでなさい」


「……か、神のご、ご加護を……」


「自分の魔法でなんとかしたらいいでしょう」


 そんな精神力はねーんだよ! オゲェェェェッ!


「……お、おねえちゃん、ヘルプミー……」


 ねーちゃんになにができるかわからないが、この気持ち悪さから救われたい一心で助けを求めた。


「放っておけばいいのよ」


 守護天使なら助けろや! 守護対象が死にそうなんだからよ! 


「酔ったくらいで死なないわよ。死ぬメンタルもしてないでしょう」


 メンタル関係ないよ! 死ぬ酔いだよ、これ! 手のひらの創造魔法を使えないくらいに参ってるんだよ!


「我が妹ながら苦しんでるのかふざけてるのかわからんよ」


 素直に苦しんでんだよ! ふざけてるように見えるほうがどうかしてるよ!


「ミカン。あとどのくらい?」


「二時間くらいよ」


「じゃあ、このまま進んで」


 オレの救いは?


「ナナリ、雷使える?」


「ああ。あまり強くないけど、なんで?」


 おい。それ、守護天使がやっちゃいけないこと!


「首のところに雷を放って。調整はわたしがやるから」


 だから守護天使がやっちゃダメなやつ!


 ねーちゃんの手がオレの首に触れたら瞬間、痛みが走り抜けて意識がなくなった。

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