第330話 姉が姉なら妹も妹
目覚めたら檻の中でした。はぁ、どーゆーこと?
「目覚めたようだね」
なにか洞窟を利用した檻のようで、声をかけてきたのは三十くらいの女だった。
「……こ、ここは……?」
「海賊のアジトだよ」
はぁ? 海賊のアジト? なんでそんなところで目覚めんのよ? 守護天使、説明しーや?
と、リリーが地面に落ちていた。おい、指人形のフリ、止めろや!
なにがなにやらわからないが、スズの姿のままであり魔女服のままだ。手のひらも拘束されてるわけでもない。なんらかの偶然で捕まったわけじゃないようだ。
……いや、これはねーちゃんらの仕業だ……。
どんな仕業かまでは知らないが、わざとオレを捕まらせたのは間違いないだろうよ。
……妹を囮に使うとか酷い姉である……。
「いや、お前が言うな」
って、リリーからの脳内突っ込み。指人形のクセに洒落たことするじゃねーか。ゲシゲシとリリーを殴ってやった。ザマー味噌漬け。
「ハァー。まったく面倒なことをする」
よっこらしょと立ち上がり、スズからリンへと戻った。
「……あなた、いったい……」
「説明はあと。怪我した人はいる?」
檻の中にら女たちだけが閉じ込められており、粗末な服を着せられていた。てか、長いこと閉じ込められてるのか臭い。まったく人をケダモノのように扱ってくれてんな。これは万死に値するな。
一生働かせてやろうと温情をかけてやろうとしたのに、自ら地に落ちる行為をするとは愚かな。いやまあ、ケダモノなんだからしょうがないか。
「え、ええ。長いこと閉じ込められて酷い状態よ」
死んでないのが不思議でないのが何人かいるな。では、ちちんぷいのシャランラーで全回復。アイテムボックスから衣服や食料を出した。
「……あ、あなた、いったい……?」
「名前はリン。神の使徒として地上に平和をもたらすために使わされた者。海賊の被害があると聞いて殲滅にきた」
「せ、殲滅!?」
「そう。殲滅。ケダモノはこの世から消す」
更正とかする必要もない存在。この世に不要な命。消えてくれて初めて世のため人のためになる存在である。
檻を砕き、外に出る。
「リリー。ねーたちは?」
指人形からオレに憑いた守護天使に尋ねる。
「別の島に本隊がいたからリンを囮にして向かったわ」
やっぱり囮にしたんかい! ケダモノに悪戯されたらどーすんだよ!
「悪戯しようとしたバカが毒を打ち込まれて心臓発作で死んだけど」
あ、そう言えば自動防御をつけてたんだっけ。悪戯されることないから忘れてたわ。
洞窟の外は死屍累々。謎の疫病が蔓延でもしてるのだろうか?
「きっとリンと言う猛毒が蔓延したんでしょ」
フッ。オレに触れると火傷するぜ。気をつけな。
「もう気をつけられない場所に逝ったけどね」
それは御愁傷様です。来世は虫にでも生まれて人間に踏まれたらいいさ。
「ミカンもあっちに向かったのか」
君、オレをサポートする存在なんだから残れよな。
「ハァー。しょうがない。自分でやるか」
死体をアイテムボックスへと放り込んでいき、野望のエサへとする。
片付けが終われば蔓延している毒を吸収。次回また使うために専用貯蔵庫に仕舞った。
「出てきて。外のケダモノは片付けた」
洞窟に戻り、捕らわれていた者たちを外に出した。
「この島のこと知っている人はいる?」
と尋ねたら、皆さんアイカワ帝国の出身で、奴隷として連れてこられたそうだ。あっちも奴隷制があるんかい。国としてちゃんとやれてんのか?
「帰るところがないならウェルヴィーア教として迎え、住む場所を与える。どう?」
そう尋ねたら全員が膝をついて頭を下げた。
「従います。どうかわたしたちをお救いくださいませ」
回復したくらいで神を信じるとかチョロいヤツらである。まあ、信者(魔力)が一人でも増すならなんでもいいさ。ウェルヴィーア教として迎えましょう。
とりあえず、ねーちゃんたちのほうが片付くまでオレはバカンスを楽しむとしますかね。
さあ、信者(下僕)ども。ここを南国リゾートに改造するぞよ。
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