第328話 魔砲少女
海で綺麗になったケダモノは集まってきた兵士たちに引き渡した。
「リン様より湾岸整備に使えとのことです。あとはお願いね」
「ハッ! お任せください!」
魔法少女スズちゃんは、リン様の直属の実働部隊の一人と知らしめている。ちゃんと下まで行き届いているようで反発する者なし。いたら厳しくも優しい再教育してやるのに。残念。
運ばレテいくケダモノを見送り、ミカンを呼んだ。
「船にトランスフォームして」
「了解。トランスフォーム!」
いや、別に声に出す必要はないんだけど。
「元があなたなんだからしょうがないでしょう」
「やっぱりか。なんかたまにリンみたいな行動するな~って思ってたんだよ」
「でも、リンより大人しいわよ」
なんだろう。オレよりオレを知ってそうな口振りは? オレ、本心を見せずに生きてきたんだけど。
「どんな姿になろうと根本的なところは変わらないしね」
「姉を姉とも思わないところ。ケダモノに容赦ないところ。目的のためなら手段は問わないところ。器用なクセにヌケてるところ。あんたは昔っから変わらないよ」
「ふふ。さすがリンのお姉ちゃんね。よくわかってる」
なんだろう。物凄く恥ずかしいんですけど!
「ふふ。照れてる照れてる。リンのこう言うところ、可愛いわよね。ナナリの妹って感じだわ」
オレ、ねーちゃんと似てるか? 性格真逆だと思うんだけど?
「わたしはリンほど狂ってないわ」
「狂人なところじゃなくて照れ笑いしたところよ」
サラッとオレを貶めるね、君。まあ、ねーちゃんと一緒にいる人だしな、心臓に針金が生えてても不思議ではないか。
「ミカン。ちょっと小さくない?」
いずれ海に出る日がくるだろうと用意はしてたが、なんか予定してたのより小さくね? 近海に出る漁船くらいしかないよ?
「動かせる万能偵察ポッドが二百だけなんだからしょうがないでしょう。補う国土領土、守るべき人、監視するものがどれくらいいると思ってるのよ? 人工知能搭載型を増やさないと管理しきれないわ」
確かにそうですね。海賊退治が終われば人工知能搭載型を創らせていただきます。ううっ、また大量に魔力が飛んでいく……。
心の中で大泣きしながら船に乗り込んだ。
「武装はないの?」
まんま船じゃん。オレ、巡視船とか思い浮かべてたんだけど。
「スズかナナリが船首に立てばいいでしょう。あなたたちは下手な大砲より凶悪なんだから」
いや、確かにそうだけど! 人としてのプライドが傷つけられると言うか! 越えちゃいけないラインと言うか! ま、まあ、今さらだけどね!
「わかったよ。おねえちゃん、砲塔やって」
と言ったら殴られた。ぼ、暴力反対……。
「暴力を肯定してるような存在がなに言ってるんだか」
オレがやっているのは暴力ではない。平和活動行為だい!
「あんたは姉をぞんざいに扱いすぎなのよ!」
ぞんざいには扱ってないよ。激しく扱っても壊れないとは思ってるけど。
なんて言ったらさらに殴られそうなのでお口にチャック。さあ、出港といきますか!
船に乗り込み、船首へと立つ。
「魔法少女が魔砲少女になるとはね」
一文字違うとまるっきり違う存在になるもんだ。
「一文字変わろうが、本質は変わらないでしょうに」
変わるんだよ! 心情的に!
「ミカン。操船よろしく」
「万能偵察ポッド扱いが酷いんだから。あんまり無茶言うと反乱起こすわよ」
うん。君が言うと洒落にならんから止めてください。早急にあなたのお仲間を創るんでさ。
「くるわよ」
なにが? と尋ねるより早く海からリヴァイアサンが現れた。お前、まだいたんかい!
「殲滅ラブビーム!」
で、さようなら~。って、なにしに出てきたんだよ?
「リンに殺されるためでしょう」
なるほど。確かに意味のある行動(存在か?)だったな。お陰でレベル17になったよ。ごっつあんです。
「……相変わらずエゲつないヤツだよ……」
「……海が沸騰してるわよ……」
あ、ちょっと強すぎたか。無駄に魔力を使ってしまったぜ。
「ミカン。浮上だ!」
宇宙な戦艦のように飛び立つのだ!
「そんな機能ないわよ。したいのなら魔力を寄越しなさい」
ションボリルドルフ。
「ハァ~。冷えるまで待つとするか」
アイスココアを出し、沸騰した海が冷めるまで待つことにした。
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