第251話 撤収

 キャー! と、嬉しい悲鳴が止まらない。


 あるわあるわの金銀財宝。よくもまあ溜め込んだものである。きっと悪いことして集めたんだろう。この悪党め!


「それ以上の悪党が横からかっさらってるけどね」


 なんだと!? これはオレのものだ! 誰にも渡さないからな!


「誰もいないじゃん。焦らせるなよ」


 一生懸命アイテムボックスに放り込んでんだから邪魔すんなや!


「ねーちゃん! 物色はあとにして! 欲しいのがあったらあげるから!」


 またいい剣があるんじゃないかと物色するねーちゃんを叱りつける。


「あ、ごめんごめん。つい、アハハ」


 まったくもー! 物欲は時と場所を選んで!


「今まさに時と場所を選んでるでしょうに」


「茶々いれるなら手伝え! 堕天使が!」


 お前もアイテムボックスを使えるようにしてるんだから手伝えよな! 


「わたしにコピーしろとは言わないのね」


「この世界でインフレ起こしてられるかよ」


 パン一つ買うのに金貨百枚支払う世の中にしたいのか? ジンバブエに謝れ!


 金は貴重だから価値がある。経済をもっと学べや堕天使が!


 にしても国家予算級の金を形にしたら凄まじい量になるよな。いちいちこっから出してんのか? 金貨払いなのか? 


 まあ、細かいことはいいや。ここにあるだけでザイフルグ王国は十年先まで戦えるんだからな! いや、テキトーだけど!


「リン! 外が騒がしくなってきたわよ!」


 ミューリーの叫びに瓦礫を排除しているだろう聖王国の兵士たちの声が耳に届いた。


「まだ半分以上あるのに!」


 こんなことならもっと収納量を増やしておくんだったぜ!


 手のひらの創造魔法の弊害か、アイテムボックスに収納する量は両手のひらに乗るくらいが一瞬で収納してくれる。だが、それ以上だと収納するのに時間と魔力が必要になるのだ。


 一瞬で収納できるように手のひらに乗せられる量でやっている。これが終わったら改良しないとな。


「リン! 破られそうよ!」


「ねーちゃんとミューリーは収納を続けて!」


 収納を止め、両袖からスコーピオンを展開。除かれた瓦礫の隙間へと弾丸をぶっ放した。


 これで時間を稼げればいいんだが、そうは問屋は卸さないだろうな~。


 と思ってたら、なんか黒い全身鎧を纏った者らが瓦礫を排除し始めた。


 もちろん、スコーピオンで阻止するが、黒い全身鎧には通じず、なんかパワードスーツかのように重い瓦礫を排除している。あんなのまであんのかよ! 卑怯だろう!


「目からビーム!」


 は効果あり。なんの弊害もなく貫いてくれた。


 四人ほど貫くと、黒い全身鎧が下がり、短い矢を放ってきた。拳銃くらいのボーガンとかあるんだ!


 まあ、矢の威力は弱く、ローブが弾いてくれるが、瓦礫の隙間から撃ってくるから邪魔臭い。ってか、鏃に毒っぽいのが塗られてるじゃん!


「顔にマスクして!」


 なんかヤヴイ感じがしたので二人に顔を覆うマスクをするよう声をかけた。


 右のスコーピオンで撃ちながら鏃を>っと鑑定。メイリアと言う気化する毒だった。えげつねーな!


「ねー! 撤退!」


「いいのか? まだあるぞ!」


「諦める」


 諦めたくはないが、引き際は守るべきだ。宝物庫に籠って一時間近くなる。そろそろ外から援軍とか来てるはずだ。


 壁に手のひらをつけ、万能偵察ポッド一つ入るくらいの穴を開け、TNT爆破薬的なもの五キロほど仕掛けた。


「またあとで取りに来たらいいじゃないの?」


「移されるおそれがある」


 またここを修理して使うにしてもお宝はどこかに移すはず。なら、確実に移させるほうが奪いやすいってものだ。


「ねーたち、準備はいい?」


 振り向くと臨戦態勢バッチグーな感じだった。


「城を出たら街を出て。集合場所は万能偵察ポッドが導く。途中、邪魔されたら排除して」


「了解」


「わかったわ」


 二人で逃げるだろうから心配はしてないが、不測の事態は起こるもの。なにもないことを祈ってるよ。神ではないなにかに、な。


 スコーピオンからグレネードランチャーに換え、目と鼻の栓が崩壊するような煙幕弾を放ってやる。


 しゅぽんしゅぽんと破裂して煙が吹き出した。


「いくよ!」


 残虐怪盗姉妹、撤収でござる!

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