第202話 オレンジ色の髪
第三の使徒、ゲットだぜ!
となったわけだが、床が大惨事である。
「血塗れになっちゃったね」
肉人形を操っているので両手が吹き飛ぼうと痛くはないが、両手首から血がどばどばである。
「大丈夫なの?」
「なんも問題ナッシング」
我が手のひらの創造魔法は万能魔法。あらよっと! で両手は完全回復。グーチョキパー。
「……チートね……」
「これはボクの努力です」
オレは、苦労しなきゃ成長しない能力をチートと認めないぜ。
「そっちは大丈夫なの?」
ルジュの両手からは血は流れてない。と言うか、石膏が崩れた感じだな。
「わたしの能力は──」
「──能力を教える必要はないよ。それはルジュの武器なんだからさ」
それはプライベートと同じ。語る必要はないとオレは思っている。
「いえ。教えておくわ。わたしの能力では邪神と戦うなんてできないから」
「別にルジュが最前線に立つ必要はないし、戦いは後方でもできる。ルジュの性格と能力からして後方向きでしょう?」
オレはバランス重視の戦略を是とするタイプ。後衛にハピネスを置いたとは言え、自由貿易都市群リビランをカバーできる手足が圧倒的に足りてない。
手足となる伝道巡回も最低でも八つは欲しい。欲を言えば二十は欲しい。
まあ、そこまでいくには何十年とかかるだろうが、ジュアに任せている伝道巡回だけでは焼け石に水である。
今回のことだってすぐに呼び寄せることができたらもっとスピーディーに解決できたんだよ。そうしたら聖都グランディールに戻れたのによ。
と、まあ、嘆いてもしかたがない。今ある人材でやりくりしましょうだ。
「今後のことは落ち着いてからしよう。今はルジュの願いを叶えるとしますか」
これは取引。交換条件。ルジュに邪神と戦わせる自覚を持たせるための……なんだ? あれだ? ま、まあ、そう言うことダヨ。感じてちょうだいな。
まずは、手のひらの創造魔法でボロい教会をウェルヴィーア教会色に染め上げた。
いや、どんな色だよ? とかの突っ込みは一生しないでください。
「ボス。どうなった?」
あ、イビスのこと忘れてたわ。
「ご苦労様。ナイスシュートだったよ」
狙撃したときの言葉がわからんのでそう労っておいた。
「それで、作戦は成功したのかい?」
「うん。大成功だよ」
血を……見はしたけど、快く協力関係を結べた。大成功と言っても過言ではないでしょうよ。
「こっちはイビス少佐。九十九人のうちの一人だよ。ボクらの両手を吹き飛ばした戦争屋だよ」
「戸惑ってるわよ」
疑問符を咲かせるルジュ。わからなかったか?
「あ、今のは守護天使のリリーね」
「情報量を抑えてあげなさいよ。理解が追いついてないわよ」
イビス、リリー、以上。大した情報量ではないだろうが。
「まあ、悪魔よりも悪魔なボスだが、仲良くやっていこうぜ」
どんな挨拶だよ。あと、オレは人よりも人らしく一生懸命生きる人なんですけど。
「……あ、あなたも、同じなの……?」
「ああ。ボスより前に能力を選んでこの世界に生まれた愚か者さ。ちなみに能力は銃器召喚だよ」
まあ、イビスのプライベートはイビスが決めたらいいし、ウソを教えるのも自由。オレが口出すことじゃないので黙っておいた。
「イビスは前衛。戦うのが専門ね」
「単なる猟犬だよ」
「……猟犬……?」
「そう。猟犬さ。わたしはボスに飼われないとなにもできない存在さ」
そう自分を卑下するが、猟犬には猟犬なりのプライドがある。そのプライドを侵害しないために使うにも苦労があるんだからな。
「こらこら。ルジュをいじめないの。同じ神の被害者なんだから」
「主を貶めないで」
オレはこの世に生まれてから被害しか受けてないのですがね。
「わたしは、あいつらのところに戻るわ。いろいろ決まったら教えてくれ」
と、教会を出ていった。
「この様に戦闘では絶対の信頼をおけるけど、他のことにはまったく役に立たないんだよね。だから、ルジュには戦闘以外で力になって欲しいんだよ」
戦闘員は余りあるくらいいるのに指揮官や後方支援がまるで足りてない。邪神の使徒と戦うには社会システムを作る必要があるんだよ。クソが!
「今さらだけど、ルジュって呼んでていいのかな?」
リリーがルジュを名前で呼ばなかった。それはおそらく使徒の情報を口にできないのだろう。
「……この世界でもらった名前は、デミニオよ……」
デミニオ? なにか男っぽい名前だな。
「男として生まれたの」
と、女の子の姿が一瞬で消え、オレンジ色の髪を持った男の子になった。
………………。
…………。
……。
はぁあぁぁぁっ!?
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