第167話 魔法教義会
ボクはスズ。どこにでもいる魔法使いの女の子。冒険者になって修行の旅に出るんだ!
「うん。魔法使いの女の子なんてのはどこにもいないから」
え、マジで? なら、テイクツー!
ボクはスズ。どこにでもいる魔法使い見習いの女の子。冒険者になって一流の魔法使いになるんだ!
「……冒険者になる前に魔法教義会に入ることをお勧めするわ」
え、そうなの? バルンダさぁ~ん! バルンダさぁ~ん! 魔法教義会のバルンダさぁ~ん! どこで~す~か~?
市役所内をさ迷って三十秒。歩いているところを発見した。
「バルンダ様~。魔法教義会にいれて~」
と話しかけたらキョトン顔。おいおい、魔法教義会の重鎮(?)様が情けない顔するんじゃないよ。
「え? だ、誰だい?」
「スズだよ!」
「いや、わかるワケないでしょう。嫌がらせか!」
と、リリーに頬を殴られた。
「……リン、様、なのかい……?」
あーあ。オレったら抜け作ちゃん。リリーのこと完全無欠に忘れてたわ。とりあえず隠れててくださいな。
「ボクはスズだよ! 魔法使いになりたいの! 魔法教義会にいれて!」
ここは空気を読んでよろしくスマッシュ!
「……こっちに」
複雑怪奇な表情を見せたのち、奥歯を強く噛んだ顔してどこかへ向かった。
あとに続くと、地下へと下りていき、なんか悪魔でも封印されてそうな扉を開けて中へと入った。
「ライジーをお呼び」
中には灰色のローブに黒いマントを羽織ったレディたちがいた。
……魔法は女が使うものなのか……?
「こっちにおいで」
「は~い!」
奥へと誘われ、執務室っぽい部屋へと通された。
「お座り」
と言うので、遠慮なく部屋の中央にあるソファーへと座った。あ、お構いなく。
向かいのソファーに座ったバルンダさんは、オレをまじまじと見て、深いため息を吐いた。
「……なんなんだい、いったい……?」
なにか祈るように指を絡め、地の底から響いてきそうな問いでした。
「もぉ~怖いな~。魔法使いになって冒険の旅に出たいの! だから魔法教義会に入れてください!」
「…………」
バルンダさんの額に青筋が。ブチ切れって感じ?
「失礼します。バルンダ様、お呼び──」
扉がノックされ、すぐに扉が開いて……え? マルレインおねーさん? なんで?
「マルレインとは違うわよ」
あ、確かによく見れば違う。目元がやや下がり気味だし、年齢がやや上っぽいや。
「え、マルレイン? あなた従姉妹を知ってるの?」
おっと。余計なことを口走ったぜ。
「ライジー」
バルンダさんが一言で黙らす。おっかね~!
「この子はスズ。わたしの遠縁の子だ。魔法教義会に入会させるから手続きを頼む」
「……わ、わかりました……」
マルレインおねーさんとは違い、空気を読む能力も察しも悪いみたいだが、バルンダさんの教育か恐怖からか、異論を口にすることはなかった。
……感情豊かなおねーさんやね……。
羊皮紙? なものを出され、そこに名前を書き、血判を押す。やけに重いものだな。辞めたら呪われるとかイヤだよ。
「簡略だが、これで魔法教義会会員だ」
と、羊皮紙的なものを燃やした。
……この世界に生まれて九年。ファンタジーなものを見た感じ……。
「魔法教義会本部にスズの名前と魔力を登録されたから悪さしないでおくれ。魔法教義会には厳しい審議部があるからさ」
わかるような手段があるんだ。この世界の魔法、結構高度だったりする?
「わかった~。魔法は善いことに使うよ!」
ケダモノを根絶やしにするために、な。フヘヘ。
「あと、このバッヂを見えるところにつけておきな。身分証になるから」
なにか模様が刻まれた銀色のバッヂを渡された。
>っと鑑定。ただの身分証だった。魔法的なもんやないんかーい!
納得できないものがあるが、だからと言って変えたいワケでもない。そう言う仕様だと思っておけ、だ。
バッヂをローブの胸につける。
「バルンダ様、ありがとう! これで冒険の旅に出られるよ!」
「各都市の支部にわたしの名で通しておく。拗れる前に話を通しておくれよ」
拗れないように心がけしたいと思います。
「冒険者登録をするのかい?」
「うん! 少人数で動きたいから」
傭兵団として動くと目立ってしょうがないし小回りがきかない。自由に動くには冒険者が一番だろう。まあ、不自由も多いだろうけど。
「……最近、マリンダール都市周辺に魔物が増えていると聞く。気が向いたら足を伸ばすのもいいかもしれないよ」
それはいい情報をいただいた。なら、最初の冒険はマリンダール都市周辺としますかね。
「魔法教義会の名に恥じないよう頑張っておくれ」
「はい! 魔法を極め、魔法を広めて参ります!」
隠れ蓑は多いに越したことはない。オレの盾になるよう育ててやるぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます