第86話 災害竜編、かな?
春が終わり、初夏になる頃、皆様はいかがお過ごしですか? オレは次なる戦いに向けて四苦八苦しております。
なぜかって? レベルダウンの余波かなんなのかわからんけど、倦怠感が消えてくれないんだよ。お陰で創ることも貯めることもできんわ。
「わたしは毎日コピーさせまくりだけどね」
健康な体が羨ましいです。できることなら代わって欲しいよ。
「代わったら代わったで、毎日創らされるんだからイヤよ」
オレも人形(?)の体になんぞなりたくないわ。女の体ですら辟易してんのによ。アレが始まったらと思うとゾッとするわ。
「ハァ~。ダルゥ~」
いつになったら消えてくれんだよ。もう一月近くなるって言うのによ。
「ボス。弾入れしてるんだから集中しな」
ダルいとは言え、時間を浪費するのは愚かなので、イビスと一緒にマガジンに弾込めをしてるんですよ。
「だって面倒臭いんだも~ん」
弾入れって拷問? 拷問ならオレはすぐに口を割るぞ。
「愛らしく言っても弾はマガジンに入ってくれないぞ。キリキリやる」
「イビスの鬼~!」
「天使に悪魔と罵られるボスには言われたくない」
「ひ、酷い。リン、いい子だって有名なのに……」
リン、拗ねちゃうから。
「どこの異次元での話よ。わたし、リンの守護天使になってから魔女とか悪魔としか聞いてないけど」
「わたしもボスの悪行しか聞いてないな」
ヤダ。オレの評判が悪すぎなんですけど。あんなに苦労してるのに誰もわかってくれない!
「人を食い物にして生きて来て、自分をいい子と言える神経が理解できないわ」
おかしいな? ケダモノしか食ってないんだがな?
「わたしも結構イカれてるが、ボスは飛び抜けてイカれてるよな。どんな人生を送ればこんなのになるんだ?」
「普通の家庭に生まれて普通に育ったよ」
「ほら、ボス。さっさと弾を込めな」
正当な主張を軽く流されてしまった。クソ……。
「そうだ、イビス。銃のサイズって変えられる?」
イカれてる相手に突っ込んでも無駄なので、前から思ってたことを尋ねてみた。
「サイズ?」
「そう。リンの手、小さい。だからサイズを変えられると助かる」
「それじゃダメかい? ベレッタM1934はいい銃だぜ」
銃の素人に銃の良し悪しなどわからんよ。まあ、威力のあるなしはわかるがよ。
「連射できるのがいい。リンの腕では当たる気がしない」
いろいろ試し撃ちさせてもらってベレッタM1934になったのだが、五メートル先の的にも当てられなかった。
「なに事も練習だぜ、ボス」
「リンは銃で生き抜くつもりはない。あくまでも護身用。魔力が尽きたときの保険。いざと言うときに使える腕があればいい」
一度した失敗は二度はしない主義であるが、魔法なんて知らない世界で育った者。ましてや神の雑なレベルアップで加減がわからない。
TNT爆薬的な? で創ったものもオレの中ではもっと威力が小さいものだった。なのに、すり鉢状のクレーターを作ってしまう威力だった。
……的なものにしたから悪かったのだろうか……?
「他を撃つから止めておきな。まずそれを使いこなしてからだ。だが、サイズを変えるか。やってみるよ。この小さな手に合うものは欲しいからな」
神から与えられた能力は雑なようで融通が利いたりするから痛し痒しなんだよな。
もらえないのなら今あるもので我慢と、マガジンに弾を込め続けた。
「しかし、神はなにを考えているんだろうな? 銃をこの世界に広めてよいのだろうか?」
まあ、まともなヤツなら必ず考えることだな。
「神の考えは神しかわからない。けど、リンは大丈夫だと考える」
「なぜ? そう思うんだい」
弾込めを中断し、すっかり冷めたココアを一口飲んだ。
「神はなにかを確かめてる。それがなにかは知らないけど、神に与えられた能力は雑すぎる。まるで楽しむように、なにが起こるかを見ている。五十人近く見て、そう思った」
世界を揺るがしかねない能力を与えるなど危険極まりない。まあ、魔力次第となるからそうメチャクチャな能力は得られないと思うけどよ。
「神相手によくそこまで冷静になれるな」
「無神論者は絶対不可侵の神などいないと知っている」
罰当たりな人間でごめんなさいよチェケラッチョ!
「……変な国よね。リンがいた世界は……」
「おいおい、リリー。ボスと一緒にしないでくれ。わたしは神を信じ、敬って来たぜ」
「信じた結果がこれ。神は慈悲深い」
オレなら熨斗つけて返すぜ。ノーサンキュー! ってな。
「それに、神は能力に応じた
「枷?」
「危険な土地だったり環境だったりと、選んでる節があった」
失敗してもいいのだ。いや、試しなのだから失敗例はたくさんあったほうがいいと考えているかもしれないな。
「……それで、わたしはあんなクソったれなところに生まれたのか……」
「それもあると思うけど、一番は女として生まれさせたこと」
「女として生まれさせた?」
「神は能力と言った。なら、それは子に受け継がれるかもしれない。イビスは子を生みたい?」
「よしてくれ。考えるだけで虫唾が走る!」
「男としての心がある限り、リンやイビスの能力は受け継がれない。それでも神の慈悲を感じる?」
オレは憎悪しか感じんわ。
「……今なら悪魔に魂を売れる気がするよ……」
オレは神も悪魔も信じないので魂を売ることはしないけどな。だってオレは人だもの。
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